【医師の本音をきく】医師はオウンドメディアをどうみているのか?直接聞いてみた。誌上座談会(後編)

前回、医師が情報収集をする場合、MRからのメールやポータルサイト、SNSなどを、医師が最も便利に、効率よく、分かりやすく情報を得られるように工夫しながら情報収集していることが明らかになりました。また、MRからの情報提供のメールも医師に有益であることが分かりました。
一方、MRが精力的に医師に情報提供のメールを送っていることから、医師が自ら製薬企業のオウンドメディアにアクセスすることはほとんどないようです。
後編では、医師が求める製薬企業からの情報提供について掘り下げていきます。

参加者

<A医師>
地方の国立大学病院 泌尿器科 准教授(40代)。臨床を手掛けながら、後進の育成も担当している。大学の研究では、他の複数の大学や関連施設等と共同でデータベースを構築し、データ解析の結果から多数の論文を投稿・発表している。製薬企業からの依頼で、多数の講演も行っている。

<B医師>
関西圏の病院 院長(50代)。悪性腫瘍の専門医として、地域のがん患者さんの診療にあたっている。がんの関連学会の評議員を長く務めている。人脈が全国に及んでおり、SNS等での医師同士の情報交換も活発に行っている。

司会:前回に引き続いて、製薬企業のオウンドメディアについてご意見をお聞きします。製薬企業のオウンドメディアにあまりアクセスしない理由は何でしょうか。

A医師:見たいコンテンツがない、というのが一番の理由でしょうね。薬の話はMRやリエゾンから聞いていますから、オウンドメディアは薬の話ではなく疾患を解説してくれて、簡単に見られて、分かりやすいサイトならアクセスするかもしれないですね。

B医師:そもそも、製薬企業各社がバラバラにオウンドメディアを作って、医師にそこにアクセスさせようというのは、考え方が古いのではないかと思います。医師から見て、情報を集めに行く利便性を考えたら、ポータルサイトで十分ですし、その方が医師はやりやすいです。

A医師:製薬企業各社のオウンドメディアがたくさんあると、それに伴ってIDとパスワードも増えます。医師はそれらをいちいち覚えていません。オウンドメディアにアクセスしても、医師かどうかを確認され、その後オウンドメディア個別のIDとパスワードを入力しなければならないですよね。これでは医師は面倒に感じてしまい、製薬企業のオウンドメディアにアクセスしようと思わないです。

B医師:全く同感ですね。製薬企業のオウンドメディアへのアクセスやログインは、ぜひもっと簡単にしてほしいです。医師の囲い込みがオウンドメディアの目的の一つかもしれませんが、医師の仕事柄、1社の製薬企業のオウンドメディアでは情報収集や仕事が片付きませんから。これなら、医療のポータルサイトに製薬企業の情報を出した方が、医師は見るかもしれません。

医師が製薬企業のオウンドメディアに期待すること

司会:では、こういう情報があったら製薬企業のオウンドメディアにアクセスする、というものはありますか?

B医師:私の場合は新薬の情報と副作用の情報が必要です。抗がん剤だけでなく、他の薬でも同様です。これらは患者さんの治療にとっても重要ですが、うちの病院での新薬の採用状況によっては周辺の開業医の先生や薬局での薬剤の採用と削除にも関わります。そのため、新薬にどのようなエビデンスがあるのか、どのような副作用があるのか、副作用が出たときにはどのように対処する必要があるのか、などの情報が必要です。

A医師:私の場合、学会発表や講演の機会が多いので、発表用のスライドに役立つデータや写真、イラストなどを無料で提供してもらえるオウンドメディアならアクセスしますね。以前は、ある製薬企業のオウンドメディアからJCOのウェブサイトにアクセスできたのですが、それができなくなってからはその製薬企業のオウンドメディアにアクセスしなくなりました。薬に関しても医師は知っていることが多いので、薬の情報を収集するために製薬企業のオウンドメディアにアクセスすることは、少ないです。むしろ疾患を分かりやすく解説してくれて、簡単に見ることができるオウンドメディアならアクセスするでしょう。

司会:製薬企業のオウンドメディアに、他にご要望はありますか?

B医師:診療や検査の合間に調べ物をしたりする場合、病棟や外来であれば患者さんやスタッフに配慮して音を出せないこともあるので、情報提供は文字だけでも良い場合がありますね。

A医師:文字だけでも分かりやすい情報だと、医師は助かりますね。

B医師:医学雑誌によっては、メールの件名に論文の結論が書いてあって、メールの本文に論文のリンクが張ってあり、見たい時にすぐ見られるようになっています。これは便利ですね。また、2分くらいの短い動画になっていて、分かりやすい英語で論文を解説しているコンテンツもあります。音が出せないときは聞けませんが、これも分かりやすく情報提供するという意味で、非常に良いですね。

A医師:オウンドメディアへのアクセスを増やしたいなら、全部の製薬企業が一緒になってこのメディアだけを見ればよいというものを作ったらどうでしょうか。各社の治療薬が関連する全ての疾患の診療情報、学会情報、ガイドラインの改訂など、全ての情報を一元集中させるのです。そこはIDもパスワードも不要とし、閲覧したらポイントが付くなどとする。最大手の医療ポータルサイトに似てきますが。

B医師:薬もたくさんの種類がありますし、同種同効薬もたくさんあります。それを分かりやすく整理して情報提供するということも重要ですね。

A医師:同種同効薬の場合、ランダム化比較試験でコントロールとの比較をした場合の効果や安全性は分かりますが、結局何が一番良い薬なのかは同種同効薬どうしを直接比較をする臨床試験をしないと分かりません。これを検証するメディアは、医師がアクセスしたくなりますね。レトロスペクティブでも良いので、それぞれの薬が処方された患者さんの全てのデータを収集し、効果や安全性をレビューし、その結果を公開したら、そのメディアへの医師のアクセス数は増えるでしょう。製薬企業各社のビジネスの都合はあるでしょうけれども、臨床からの要望ですということでうらみっこなしで検証してみることは患者さんのためにもなりますから。

B医師:特に新薬の場合は、リアルワールドデータ、リアルワールドエビデンス、処方経験がある医師のコメントなどが、他の医師にとって役立つことも少なくありません。日常診療の薬剤選択の場面において、やはりエビデンスは重要です。処方においても、新薬の採用にもエビデンスは重要なポイントです。その情報が常にアップデートされていて、分かりやすく情報提供できるメディアが望まれるでしょうね。

魅力的なウェブ講演会とは?

司会:前回のインタビューで、ウェブ講演会の数が増えたとお聞きしました。コンテンツとしてのウェブ講演会は、医師にとって魅力的でしょうか?

A医師:ウェブ講演会などの動画は分かりやすいですね。MRの話よりも分かりやすい動画は、多いと思います。あまりダラダラと長く続く動画は、途中で見るのをやめますが。

B医師:ウェブ講演会の良い所は、アーカイブされていれば自分が都合の良い時に後で見ることができることですね。こういうコンテンツが製薬企業のオウンドメディアにあるなら、医師はオウンドメディアにアクセスするかもしれません。

A医師:ウェブ講演会をライブ配信で開催する製薬企業がありますが、あれは評判が良くないですね。

B医師:そうですね。ライブ配信のウェブ講演会だと、どうしてもその時間にパソコンの前に座っていなければなりません。ですが、医師は忙しいので、そのようなことは現実には難しいです。だから、ウェブ講演会はライブ配信で開催しても良いですが、製薬企業はせっかくのウェブ講演会をアーカイブにして、いつでも見られるようにしておいた方が良いでしょうね。

A医師:その方が、情報収集に余念がない産前産後の女性医師にも喜ばれますね。

B医師:これからのウェブ講演会は、ライブ配信1回あたりの参加医師数ではなく、最終的に何人の医師がアクセスして動画を見たのかが大事になっていくでしょうね。その代わりにライブ配信でウェブ講演会に参加する医師は、その時間都合が良い医師だけになるので、人数は減っていくでしょう。でも、医師が最も見たいように情報を提供していくということは、情報を届ける側にとって必須の配慮でしょう。他の業界でよく言われるユーザー・エクスペリエンスやデジタルトランスフォーメーションが、製薬業界にも必要なのだろうと思います。

A医師:私もウェブ講演会の演者を務めることがありますが、配信会場には座長の先生と私、あとは企画した製薬企業が数人と、極めて少ない人数しかいません。でもそれでウェブ講演会は成り立ちます。最初はウェブ講演会の配信会場に人がいないことに違和感がありましたが、すぐに慣れました。演者の立場からは、少人数のウェブ講演会でも全く問題ないです。

製薬企業のオウンドメディアとMR、それぞれができることは?

司会:製薬企業のオウンドメディアとMRに、情報提供の違いはありますか?

B医師:それぞれに得意なことと、やるべきことが違うと思います。MRは自社製品の最新情報を医師に届けることが目的です。オウンドメディアの場合は動画コンテンツが得意という点や、MRでは説明しきれない情報が整理されているというのが強みでしょう。

A医師:以前、私がウェブ講演会で講演する時に、欲しいデータが見つからず困っていたことがありました。その時、リエゾンからそのデータが掲出されているサイトを教わって、大変助かったことがあります。MRでもリエゾンでも、自分の会社のオウンドメディアにどのようなコンテンツがあるのかをよく知らないと、医師からの問い合わせに対応できず、医師もそのオウンドメディアにアクセスしなくなるかもしれませんね。そういう意味では、オウンドメディアやMRがそれぞれバラバラに活動していては、効果的な情報提供にならないでしょう。

司会:MRだから得られる情報はありますか?

A医師:ないですね。以前は話していても気持ち良い人もいましたが、MRの必要性がどんどん減って、人数も減ってきたようですね。私はMRとの面会頻度は、今くらいがちょうど良いと思っています。

B医師:必要とする情報が見つからず、困っているときには、信頼できるMRに情報提供を依頼し、対応してもらうことはあります。でも、そのような依頼ごとができる、信頼できるMRはかなり限定的ですね。お互いに気心が知れないと信頼関係も作れませんし、信頼関係がなければ何かを依頼することもありませんね。リエゾンはかなり勉強しているので、いろんな質問をしてもきちんと教えてくれますね。リエゾンには助けてもらっています。

司会:最近は、様々なウェブ会議システムを使ったMRとの面談も増えてきています。このような面談形式は、経験されましたか?

A医師:MRからアポイントの依頼が来ることがあります。用件が新薬の紹介ということであれば、1回は受けます。でもそれ以上は話を聞く必要がないですね。むしろ、講演会の打ち合わせでウェブ会議をすることはあります。

B医師:私もウェブ会議の経験ならあります。でも、ウェブ会議で薬の説明を受けることはありません。

製薬企業からの情報提供に期待すること

司会:最後に、製薬企業からの情報提供に対して期待することや求めるものをお聞かせください。

A医師:多忙な医師にとって、情報収集する際に必要なことは、医師が必要な情報を、医師にとって最も利便性高く、すぐに入手できることです。その情報が正しい情報であるということは、言うまでもない大前提です。オウンドメディアにしてもMR活動にしても、自社の薬の話だけでは意味がありません。医師にとっては疾患を解説してくれるメディアの方が有益です。ですから、一言で情報提供といっても、医師にとって最も心地よく、分かりやすく、簡単に知ることができ、便利な手法であることが求められると思います。

B医師:2020年は、withコロナの時代に急激に変わりました。今はMRが医師からアポイントを取る時代ではなくなりました。今、私はMRや製薬企業との連絡はメールで、会議はウェブで行っています。これで全く問題はありません。これはすなわち、withコロナで製薬企業のプロモーションが大きく変わったということです。従来は医師とMRが対面で、お互いに時間を取って話をしていましたが、withコロナになってからは対面でなくてもデジタルで十分代替できるし、お互いに使える時間が増えたのではないでしょうか。医師は今後もデジタルツールを使っていくでしょうから、製薬企業もデジタルやオンラインにもっと切り替えていく必要があるでしょう。

司会:今回のインタビューで、医師が様々なデジタルツールを駆使して、様々な情報を収集し、業務に活かしておられることが非常によく分かりました。一方で、情報を提供する側にとっては、情報を正確かつ分かりやすく、いち早く、見たい医師にとって最も便利な方法で届けることが、医師の顧客満足を高めるということを再認識できました。

ここから考えられる製薬企業が取り組むべきこととは、デジタルツールの優劣に一喜一憂するのではなく、情報をどのように提供していくのかというデザインをしっかり描くということです。このことは製薬企業も以前から検討を重ねてきていますが、今一度、「最高の顧客体験とは何か?」「それを実現するデジタルトランスフォーメーションや医師とのコミュニケーションとは何か?」を見直す必要がありそうです。

本日は貴重なお話をお聞かせくださり、ありがとうございました。