【医師の本音をきく】医師はオウンドメディアをどうみているのか?直接聞いてみた。誌上座談会(前編)

新型コロナウイルスの流行に伴い、製薬企業のMRが医療機関に訪問できなくなる事態に陥りました。その状況を打開すべく、多くの製薬企業はMR活動を補完するデジタル活動の強化に取り組んでいます。
製薬企業が様々なデジタルチャネルを駆使しながら情報提供を行う中、オムニチャネルの中枢を担うのは製薬企業のオウンドメディアです。しかしながら、製薬企業のデジタル担当者やオウンドメディア担当者に話を聞くと、「会員医師数が増えない」、「医師のアクセス数が伸びない」などの悩みが尽きません。
そもそも、医師は製薬企業のオウンドメディアをどのように見ているのでしょうか?
今回、製薬企業との仕事の経験も豊富で、日々の情報収集に余念がない医師にインタビューし、医師の情報収集の実態を伺いました。

参加者

<A医師>
地方の国立大学病院 泌尿器科 准教授(40代)。臨床を手掛けながら、後進の育成も担当している。大学の研究では、他の複数の大学や関連施設等と共同でデータベースを構築し、データ解析の結果から多数の論文を投稿・発表している。製薬企業からの依頼で、多数の講演も行っている。
<B医師>
関西圏の病院 院長(50代)。悪性腫瘍の専門医として、地域のがん患者さんの診療にあたっている。がんの関連学会の評議員を長く務めている。人脈が全国に及んでおり、SNS等での医師同士の情報交換も活発に行っている。

司会:本日は先生方より、製薬企業のオウンドメディアに関する様々なご意見をいただきたいと思います。新型コロナウイルスの新規感染者数や死亡者数が増え続けている中、この影響によってMRが医療機関に訪問できないことも多くあります。その対策として、製薬企業はMR活動を補完するために、デジタルチャネルを通じた情報提供にも力を入れています。そこでまずは、製薬企業のオウンドメディアへの印象等をうかがう前に、製薬業界全体のデジタル活用について先生方のご意見をお聞かせください。

A医師:製薬業界全体のデジタル化は、あまり感じませんね。確かに、動画のコンテンツなどのメールは増えたかもしれませんが、それは製薬企業によるような気がします。以前から動画のコンテンツをメールで配信する製薬企業もあれば、最近配信し始めた製薬企業もあるようですし。

B医師:私も製薬企業やMRからの仕事の依頼は大抵メールで済んでいるので、特に新しい変化は感じません。うちの病院も5~6年前から完全アポイント制にしたので、メールが主なデジタルツールです。一方、私の病院の近隣の開業医の先生方は、様々な動画のコンテンツを見たりしているようです。

司会:製薬企業のデジタル化の取り組みとして、思い当たることは何でしょうか?

A医師:製薬企業のデジタル化の取り組みについてはウェブ講演会が増えたということはありますね。でも、それ以外にあまり変化がないようにも思います。もともと大学病院も、うち以外の大学でもアポイント制が多いようですし、そのような環境下ではMRからの情報もメールでもらうことが多いですから。私の場合は何年も前から、すでにデジタル化している環境と言えるかもしれません。

B医師:ウェブ講演会が増えたということは、私もウェブ講演会の座長や演者を務めることが多いため、実感がありますね。ですが、以前から製薬企業のMRとはメールでやり取りしていますし、特に新しい印象はありませんね。

情報収集の頻度は高く、情報のソースはメールやSNSが中心。

司会:業務上必要な情報は、どのようにして収集していらっしゃいますか?

A医師:ネットから情報を得ています。これもメールが多いですね。あとはSNSを活用しています。製薬企業のウェブサイトから情報を得ることはほとんどありません。

B医師:私もネットで情報を集めますが、自分にとって必要な情報が常に自分に届くようにしています。また、友人の医師に尋ねることもよくあります。製薬企業のウェブサイトに自分からアクセスすることはほとんどないですね。

司会:毎日の中で、情報収集するタイミングについてお聞かせください。

B医師:私は大体1日3回くらいメールをチェックします。朝の勤務前、昼、夜ですね。自分の専門領域に関連する情報は、製薬企業のMRがメールで送ってくれるので、それを見ます。

A医師:私は常に情報収集をしています。大学病院に勤務しているので毎日スケジュールが違いますが、大まかにいえば起床後朝8時までにメールチェックを終わらせ、19時に帰宅した後、続きのメールチェックをしています。あとはSNSで学会情報等を見ています。

B医師:製薬企業やMRからのメール以外ということでは、私は医療関連のポータルサイトを見ることが多いですね。

司会:まずA医師にSNSの活用について伺います。具体的には、どのようなソースで、どのような情報を、どのようなタイミングで集めていますか?

A医師:私はTwitterを使って、海外の学会情報を、学会の開催時期によく見ています。学会情報のTwitterでの投稿は必読です。ゲームチェンジャーと言える、今後の診療を大きく変える可能性があるデータが発表されたりしますから。

Twitterの即時性やKOLのツイートは、学術研究のトレンドを反映している。

司会:Twitterによる学会情報の特徴は、何でしょうか?

A医師:海外のKOLがTwitterに頻繁に投稿をするんです。彼らは学会の開催時期はもちろん、最新論文でユニークな内容やデータも投稿します。また、海外のKOLはフォロワーも多いですから、KOLによる最新情報や有益なデータなどのツイートは、他の先生方よりもどんどんリツイートされているんですね。

司会:Twitterの使われ方が、日本と海外では少し異なるようですね。

A医師:日本の先生方よりも欧米の先生方の方が、最新の学会情報などをTwitterで話題にするようです。このように、みんなが話題にしているデータや論文などのネタは、医師も見ます。ですから、海外のKOLをフォローしておくと最新の情報が最速で届くんです。しかも140文字だから内容がコンパクトにまとめられていて分かりやすい。分かりやすいというのも重要ですね。医師は時間がない中で情報収集をしていますから。

司会:Twitterですと、なりすましのアカウントとかは気になりますか?

A医師:海外の学会情報をつぶやいている人でなりすましのアカウントは、あまり見ないですね。ツイートしている内容をみれば、日米を問わずKOLかどうか分かりますし。

司会:SNSにはFacebookやインスタグラムなど他のSNSもありますが、これらは情報収集源としてお使いですか?

A医師:Facebookやインスタグラムや他のSNSだと、医師の投稿であっても趣味の内容が多いですし、情報の鮮度としては少し落ちる場合もありますね。ですから私は、仕事で使う情報はTwitterを見ています。自分が必要とする情報が随時上手く届くように網を張っておくことと、SNSを使い分けることが、医師の情報収集では重要ですね。

司会:B医師は、SNSから医療関連の情報を収集することはありますか?

B医師:はい、あります。特に新型コロナウイルスが流行しているので、信頼できる医師本人が投稿していると確認できるFacebookで、実績がある感染症治療の第一人者の投稿は見ます。私の病院では新型コロナウイルスに感染した患者さんは診ていませんが、関連病院が新型コロナウイルスに感染した患者さんを受け入れており、専用のベッドがほぼ満床に近い状況なので、私も専門外である感染症対策の情報を収集する必要があるだろうと考えています。

医療関連情報のポータルサイトも、医師にとって重要な情報源。

司会:ではB医師、医療関連のポータルサイトはどのように利用していますか?

B医師:医療関連のポータルサイトの良さは、自分の専門以外の疾患に関して、情報が上手く網羅されていることですね。自分が分からない専門外の疾患の診療を勉強する場合、ポータルサイトがすごく役立つんです。そこだけ見ておけば十分という情報が整理されているという印象です。

司会:A医師もポータルサイトを見ますか?

A医師:はい、メールやTwitterほどではありませんが、ポータルサイトもたまに面白い論文を紹介してくれますね。ポータルサイトからのメールでタイトルを見て、面白そうならポータルサイトで内容を見る、という使い方をしますね。

司会:A医師も、B医師も、好きなポータルサイトはありますか?

B医師:はい、あります。医師の会員数が最も多いポータルサイトを見ることが多いかもしれません。もちろん他のポータルサイトも内容によっては見ます。どのポータルサイトでも、友人の医師が講演しているウェブ講演会のアーカイブは見ますね。

A医師:私も医師の会員数が最も多いポータルサイトが一番見ているかもしれません。コンテンツがまとまっていると思います。いろんな製薬企業の情報も見られますし、学会情報も見ることができますね。他のポータルサイトですと、オンコロジーの学会情報が分かりやすくまとまっているサイトをよく見ますね。このサイトだと、アクセスが簡単でパスワードが不要です。

司会:これまでご紹介いただいた方法以外の情報収集のやり方はありますか?

B医師:私の場合は、幅広く最新情報を得たい場合はNEJMやLANCET、専門の疾患ならJCOのサイトに登録していて、常に最新情報がメールで届くようにしています。そのメールから論文のタイトルを見て、興味がある論文を読みますね。

A医師:私も専門の疾患領域だと、Journal of UrologyやEAUといった医学雑誌のウェブサイトを見ます。学会のウェブサイトは逆に見ないですね。学会は現地に行って参加した方がしっかり見ます。Twitterのツイートでは表現されていない細かいニュアンスも学会会場なら分かりますから。自分の職場から学会のウェブサイトにアクセスして発表を見ようとしても、私が日常業務に駆り出されることが多くて、結局見ませんね。また、学会サイトは見たい発表や論文を検索するのがすごく大変で、見たいものがすぐに見られず、不便です。

B医師:私も学会は現地に行って参加したいですね。いろんな発表を聞けますし、友人の医師たちと会えますから。

司会:製薬企業の自社のウェブサイトを見ることありますか?

A医師:私は全く見ないですね。必要な情報は、たいていそこの製薬企業のMRが最新情報をメールで送ってくれますし、自分が必要とする情報もネットから入手していますからね。

B医師:私も製薬企業のウェブサイトはほとんど見ないですね。新薬であれば製薬企業のウェブサイトにアクセスするかもしれませんが、そもそもMRがメールで教えてくれるので、製薬企業のウェブサイトにアクセスする理由が乏しいですね。


製薬企業のウェブサイトを両医師が「見ない」と断言する理由は何でしょうか?
また、製薬企業は、医師への情報提供やコミュニケーションを今後どのように考えていけばよいのでしょうか?続きは後編で。

【後編】につづく