今後ヘルスケア分野で盛り上がるサービスとして、アメリカで10年間ずっと名前が挙がり続けているのは遠隔医療です。
実際、Doctor On DemandからAmerican Wellに至るまで、遠隔医療を提供するアプリやオンラインサービスには、数十億ドルの資金が投資されています。
しかし、遠隔医療はまだ主流からは遠い位置にあります。
2017年後半の調査でも、アメリカの消費者の82%が遠隔医療を使用していないことが明らかになっています。
普及しない最大の問題はなにか?
最大の、そして最も重要な問題は、多くのアメリカの消費者に、電話やウェブで医師とチャットができる、といった利用しやすい遠隔医療のオプションサービスが知られていないことです。
つまり、「遠隔医療」という単語で提供されるサービスは、自分自身が利用できる範囲のサービスであると認識されていないことにあります。
医師であり、Doctor On DemandのチーフメディカルオフィサーであるIan Tong氏は、患者と医師がウェブを通じてビデオチャットで問診を行うサービスのことを、「ビデオ訪問(video visits)」という言葉を使用し、「遠隔医療」という単語を利用しないことを推奨しています。
その他の問題点
もちろん他にも問題点はあります。その1つが料金です。
アメリカの場合は、医療サービスの料金については医療保険の適応かどうかが一番の問題で、その適応が不明である場合、料金に対して過敏になることがよくあります。
そして、多くの遠隔医療サービス、ビデオ訪問サービスは、アメリカの消費者の利用を喚起するような料金を設定することができていません(Doctor On Demandは75ドルかかかります)。
次に問題なのが、医師が遠隔医療サービスに対応できていないことです。
多くの医師は、対面で診察することこそ最上の行為であるというスタンスを崩していません。
そして、遠隔医療サービスで利用している機器、システムの利用に慣れていないのです。
2016年に、皮膚の診断を行う遠隔医療サービスにより、梅毒などと誤診し、不必要な医薬品が処方されてしまう問題が起こりました。
この問題は、システムを利用する医師が訓練などを受けていなかったにもかかわらず、直接患者へのサービスを開始してしまったことにあります。
このようなことを今後起こさないよう対策が必要です。
今後どのようにするべきか
American WellのCEOであるRoy Schoenberg氏は、医師や保険会社は消費者の多くが遠隔医療の利用を躊躇している状況を認識し、その利用方法や安全性などを伝えるべきであると考えています。
そして、消費者の誰もが知っているような大手企業を巻き込んでのマーケティング活動が必要だとも認識しています。
実際に、American WellはAppleと提携し、遠隔医療のマーケティングを開始しています。
スマートフォンの普及などで遠隔医療を受診できる環境は整いつつありますが、まだ実際の利用には壁があることを、提供する企業や医師、保険会社はしっかりと認識し、それを一つ一つクリアし、今後のサービス拡充に努めていく必要があります。
遠隔医療の普及は、まだこれからです。
ニュース元:CNBC
https://www.cnbc.com/2018/06/29/why-telemedicine-is-a-bust.html