これからの医薬品マーケティングに欠かせない「チャットボット」とは?導入意義や製薬業界の活用方法を解説

これからの医薬品マーケティングに欠かせない「チャットボット」とは?導入意義や製薬業界の活用方法を解説

医療分野での活用も進んでいるチャットボットは、昨今、製薬企業の医師向け・患者向けWebサイトにも導入されはじめています。本記事では、幅広い業種・業界でAIチャットボットの導入を支援してきたネオス株式会社 ソリューションカンパニー企画営業部の宇佐見裕之氏に、チャットボットが医薬品マーケティングの領域においてどんな可能性を秘めているのか、教えていただきました。

チャットボットとは?

あらゆるWebサービスのユーザーインターフェイスとして注目されているチャットボットが世に広まったのは、LINEやFacebookなどのコンシューマー向けSNSが普及したからです。そして、チャットボット元年と呼ばれた2015年から2016年、IBMワトソンやAzure、等の汎用AIを活用したコンシューマー向けのチャットボットが各社からリリースされました。そこからフリーの開発キットやモジュールが公表され、誰でもチャットボットを簡単に作れるようになりました。

現在では、これらの汎用AIの他に、独自開発のAIをベースとした対話型のチャットボットが数多く出てきています。ネオス株式会社は、ビジネスチャットをリリースした際に、その付帯サービスとしてチャットボットの開発を開始しました。そして、現在では、独自開発したAIを搭載したAIチャットボットサービス「Office Bot」の提供を通じて、企業の業務効率化やDXを支援しています。

「シナリオ型」と「機械学習(AI)型」のほか「検索型」や「辞書型」も

チャットボットのひとつとして、昔からよく使われているのは、QAを樹形図やフローチャートに整理してチャットボットにインポートした「シナリオ型」というタイプです。「シナリオ型」は、あらかじめ設定したシナリオから回答に帰結させるもので、自然文が入力された場合に回答できないケースが出てくるため、ユーザーによっては満足度が低くなることもあります。

一方、「機械学習(AI)型」は、AIに機械学習させるタイプのチャットボットです。基本的には、ある程度違う言い回しの自然文のQに対して、そのゆらぎを吸収して、同じ答えを返してあげる、というような仕組みにすることができます。その代わり、ある程度の学習データの準備と学習期間が必要になります。

最近では、この「AI型」に全文検索や品詞検索をかけて、「これですか?」と可能性のある回答の選択肢を返して、そこからユーザーが選択する「検索型」や、「費用を教えて」「料金を教えて」「価格を教えて」という質問は、単語レベルでは全て同じ意味であると辞書の紐付け機能を活用して判断する「辞書型」なども出てきました。

あらゆる産業分野で活用されているチャットボット

当社の「Office Bot」を納品しているお客様をみると、産業分野に大きな偏りはなく、さまざまな産業でチャットボットが活用されているといえます。
使われ方としては、カスタマーサポートやヘルプデスクなどで行っている、自社製品やサービスに対する問い合わせ窓口への導入が大半です。サポート人員に代わるリソースとして、チャットボットに自動回答させることで業務の効率化が期待できます。

一方で、社内の働き方改革やDXという動きの中で、チャットボットを活用しようという動きも活発化してきています。一般的な管理部門への社員からの問合せ対応という用途だけではなく、例えばお客様からの問い合わせなどがあった時に、チャットボットが直接回答するのではなく、営業の方が回答する場合、チャットボットに1回聞いて、そこで得た回答をお客様に返すといった、回答のための「あんちょこ」として活用します。

こうした営業支援の側面から、産業問わず自社内でチャットボットを導入して、回答の精度をある程度高めます。そして、社内利用のQAで鍛えられた後、カスタマーサポートやヘルプデスクなどの問い合わせサポート用のチャットボットへ移行されるケースも増えています。

製薬業界におけるチャットボットの導入意義とは

大規模なサイトリニューアルを行うことなく、コミュニケーションの劇的な改善が可能

製薬企業が患者さんやそのご家族、医療従事者向けWebサイトの制作で、最も腐心するのはUI/UXです。その理由は、ターゲットが簡単に欲しい情報にタッチできるか、設計から考えて構築する必要があるからです。

しかし、 チャットボットは、既に会話UIが確立されているので、そのままコミュニケーションのポータルとして導入できます 。しかも、そこに入力された自然文に対する回答を、既存のWebサイトへリンクすることで、 大規模なサイトリニューアルを行うことなく、既存の情報資産を有効活用しつつ、コミュニケーションの劇的な改善が可能 になります。

また、チャットボットでの会話ログを蓄積し、マーケティングに有効なローデータとして活用できます。Yahoo! JAPANやGoogle上では、ユーザーは単発ワードとスペース区切りで打って検索をかけることが多いですが、チャットボットの場合は、自然文で質問してくるケースも多く、ターゲットの情報ニーズを生の声の状態でログとして蓄積できます。

チャットボットの導入は、AIや機械学習の知識がなくても、1カ月程度くらいから気軽に導入ができるものが多数出ています。開発会社のサポートも充実してきていますので、自社の目的に合うチャットボットを探すことから始めてみてもよいと思います。

医薬品マーケティング分野での導入事例

現在では、大手製薬会社トップ19社の中で、14社がチャットボットを導入しています。基本的には、WebサイトのFAQや製品情報の確認、添付文書への誘導をチャットボットで展開しています。つまり、いろいろな情報に対するハブのようにチャットボットを活用しています。その中で、 どういう製剤がどういう理由でよく閲覧されているかといった、チャットボットの会話ログも有効活用されている と推察しています。

一方で、社内的な利用をされるケースも増えてきています。特に製薬業界は、他と比べて何段階ものチェックを経て情報を発信するので、製品に対する知識を深める以外にも、厚生労働省の指針や製薬協のコメント、各種ガイドラインなどの確認に、チャットボットが活用されています。こうした確認作業には、コンプライアンス規定を資料化して配布したり、イントラネットでチェックできる仕組みを、各社で取り組まれているとお聞きしています。

しかし、こうした施策を講じているにも関わらず、 コンプライアンス部門に細かい質問を投げかけるMRも多いことから、ある製薬企業様では、社内確認用のチャットボットを導入 しました。また、こうした社内利用で鍛えられたチャットボットが、社内から社外へと、活用の範囲が拡大するケースも出てきました。

チャットボットが解決する悩み・課題

製薬業界に限らずあらゆる産業界共通の課題ですが、カスタマーサポートやヘルプデスクのサポート人員は、さまざまな質問に対応するために、特別なスキルやメンタルが必要となることから、なかなか採用できないという課題を抱えています。そこで、基本的なQAに関してチャットボットに回答させ、そこから漏れたQAのみをサポート要員に回答させるようにすることで、人員の削減と効率化を図っています。

また、既存のWebサイトや情報資産に対するハブ、ポータルとして活用し、その会話ログをマーケティングのローデータとして解析することで、的確なWebサイトの構築や各種情報の出し方の改訂やターゲットとのコミュニケーションの改善を図ることも可能になります。

さらに、医師をはじめとした医療従事者とMRとのタッチポイントとしても期待できます。チャットボットには、最初にチャットボットで質問を受けた後、人に受け継ぐという有人対応機能があります。引き継ぐ先をMRにしておけば、医師が何か困ってチャットボットに質問した後、「チャットボットに代わって私が対応します」と、担当MRに引き継ぐことができるので、医師とMRとのタッチポイントを創出できます。

医薬品マーケティングでのチャットボット活用の幅にも期待

ドクターと人間同士の会話ができるマイページチャットボット

今後は、CRMやプロジェクト管理ツールといった各種システムと連携して、そのフロントを担うチャットボットが開発されていくと考えています。

また、会話の対話エンジンの進化から、QとAを自動生成する、自動学習型のチャットボットも研究が進んでいます。 こうしたチャットボットの進化の先にあるのは、ドクター別のマイページチャットボットです 。○○医師が、チャットボットにアクセスすると、「○○先生、こんにちは。前回、この情報をお届けしましたけれども、お役に立ちましたでしょうか?」から始まる、まさに、人間同士のような会話ができるチャットボットが、近い将来登場するかもしれません。

徐々にFAQを増やしていくスモールスタート方式

製薬企業の中には、費用対効果が見えないなどの理由からチャットボットの導入に足踏みをされている会社も多いと思います。そこで、おすすめしているのが、 スモールスタートで始めて、少しずつ進化させていくというやり方 です。一定のFAQと、チャットボットを表示するWebサイトさえあればスタートできます。

あとは、蓄積された会話ログを見ながら、ターゲットの情報ニーズを分析し、FAQを拡張し応答を変えていけば、チャットボット自体も目的に応じて専用に進化していき、既存のWebサイトや情報資産のハブ、ポータルとして活用できるようになるでしょう。

▼製薬・医療機器メーカー向けチャットボット「PharmaBot」登場