キャッチコピーで学ぶ、「数字」を使って説得力を高める文章術

キャッチコピーで学ぶ、「数字」を使って説得力を高める文章術

文章に数字を入れると、具体性が増してイメージしやすくなり、説得力が高まります。よく知られた文章術ですが、本記事ではさらに一歩踏み込み、数字のより効果的な使い方や印象に残る数字の置き換え方などを、実際に使用されたキャッチコピーを例に紹介します。企画書・提案書・報告書・メール・資材の作成などに使える文章術です 。

<例1>英語を話せると、10億人と話せる。

英会話のジオスのキャッチコピーです。英語圏の人口が世界には約10億人いるというデータ (1999年当時) に着目したコピーですが、「英語を話せる人は、世界で10億人います」ではなく「10億人と話せるようになる」と、英語を学ぶことで得られる価値に変換して伝えていることがポイントです。同じ「10億人」という数字でも、価値とセットで伝えることでより強い言葉になっています。
→ 【ポイント】「数字」を価値とセットで伝える。

<例2>牛一頭食べたとしても、999円。/1億使っても、まだ2億。

焼肉店(食べ放題)と、宝くじのキャッチコピーです。両者とも「焼き肉食べ放題999円」「宝くじ1等3億円」とストレートに伝えるよりも、「この金額で牛一頭食べることもできる」「1億円使ってもまだ2億円も残っている」というユニークな視点で伝えることで、強く印象に残る言葉になっています。
→【ポイント】数字をユニークな視点で伝える。

<例3>がんは、万が一じゃなくて二分の一。

日本対がん協会による、がん検診受診率向上のためのキャッチコピーです。現代は「二人に一人が、がんになる」「がんは決して他人事ではない」という時代です。「二人に一人が、がんになる」でも十分にインパクトはありますが、「万が一」「二分の一」と言葉を並べて用いることで、より自分事と思える言葉になっています。
→【ポイント】数字が自分事になるように伝える。

<例4>ただいま、14年待ちです。

グリーンリボンキャンペーン で使用された臓器提供を呼びかけるキャッチコピーです。「腎臓移植の平均待機期間は、約14年6カ月。臓器提供は、命のシェアです。YESでもいい。NOでもいい。あなたの意思表示を。」と続きます。シンプルな表現ですが、「14年待ち」という事実の強さによって、見た人に考えさせる言葉になっています。
→【ポイント】強い数字はシンプルに使う。
* 移植医療を通して、臓器を提供してもいいという人と移植を受けたい人が結ばれ、よりたくさんのいのちが救われる社会の実現に向けた、『移植医療』の“理解促進”、“普及”、及び“啓発”につながる取り組みの総称。

<例5>日本中の山本さんが、一人一台もっていることになる。

セガ・エンタープライゼスから発売された家庭用ゲーム機「セガサターン」が累計販売台数100万台を突破したときのキャッチコピーです。100万台突破はすごいニュースですが、「おかげさまで100万台」ではありきたりです。100万という数字を「日本国内の山本という名字の人の数」に置き換えたことで、100万台突破の事実に加えて、ゲーム会社としてのユニークさも同時に伝える言葉になっています。
→【ポイント】数字を別の何かに置き換えて伝える。

<例6>自分にかまっていられない年代が、乳がん年齢です。

日本対がん協会による、乳がん検診受診を呼びかけるキャッチコピーです。女性の乳がんの発症率が最も高いのは40~50歳代です。* また、40~50歳代は、家でも会社でも多忙で自分自身のことを後回しにしてしまう年代でもあります(特に健康面)。「40~50歳代=乳がん年齢=自分にかまっていられない年代」とすることで、「忙しくても検診を受けるべき」「忙しいことを理由に検診を受けないなんてリスクが大きい」といった意味を含んだ、行動変容を促す言葉になっています 。 <例5>と同様に、数字を別の何かに置き換えて伝える方法ですが、医療関連の例であり、他疾患の啓発などにも応用できるため別立てて紹介しました。
→【ポイント】数字を別の何かに置き換えて伝える。
ACジャパン広告作品アーカイブ 乳がん年齢(家族篇・オフィス篇)  最終閲覧日2020年7月13日

数字は「効果的」かつ「正しく」使う

このように、数字を効果的に使うことで、文章の具体性や説得力を高めることができます。数字を単なるデータ・事実・情報として捉えるだけでなく、「この数字は素材として強いか」「どのように使えばより興味・関心が得られるか」と考えてみることをお勧めします。もちろん、誇大表現や誤解を与えるような表現にはならないよう十分に注意してください

※例として取り上げたキャッチコピー
・英語を話せると、10億人と話せる。(ジオス/1999年)
・牛一頭食べたとしても、999円。(フードマン/2005年)
・1億使っても、まだ2億。(全国都道府県及び12指定都市/2000年)
・がんは、万が一じゃなくて二分の一。(日本対がん協会/2018年)
・ただいま、14年待ちです。(アステラス製薬・日本臓器移植ネットワーク/2015年)
・日本中の山本さんが、一人一台もっていることになる。(セガ・エンタープライゼス/1996年)
・自分にかまっていられない年代が、乳がん年齢です。(日本対がん協会/2005年)