クリニック・病院に置かれている疾患啓発のリーフレット類、これらはターゲットとなる患者さんにダイレクトに届けることができ、手に取る患者さんは、その疾患に関して悩んでいる可能性が高く、効果的に患者さんに訴求できる可能性が高いです。ここでは、経験から学んだ「患者向けリーフレットを作る時の大事なポイント」を書いてみたいと思います。
患者さんがリーフレットを手に取るカギとなるのは
クリニック・病院に置かれるリーフレットの役目は疾患・治療の啓発、未病への気づき、予防意識を高める、などがあります。ただ、どんな目的でも手に取ってもらえなければ意味がありません。ではどうすれば手に取ってもらえるでしょうか。
待合室に置かれたリーフをパッと見た時、患者さんは何を見ているでしょう。
① タイトル
② デザイン
③ 大きさ・形
まず目に入るのはタイトルなどの文字情報より②のデザインです。たくさん置かれたリーフをパッとながめた時、まず“目立つ”物に目が止まり、その絵の意味を考え、興味を持てば記載されているタイトル・情報に意識が移り「読んでみよう」と思えば手に取ります。この“目立つ”ための役割を担っているのがデザインです。
「目立つには大きい方が良いのでは?」「ド派手にすれば良いのでは?」と思うかも知れませんが、そもそも大きいと置いてもらえませんし、ド派手だと逆に不快感を与える可能性があります。
ではどんなデザインがよいか、それは後半で記述します。
ターゲットと目的を明確にする
リーフレット制作にあたっては、デザインより先に内容が決まらないと何もできません。何よりも「ターゲット」と「目的」を明確にしておく必要があります。ターゲット・目的によってデザインや内容が大きく異なり、これを間違うと効果は半減してしまいます。
例えば2型糖尿病の疾患啓発サイトを紹介するリーフレットを作成するとします。
単純に考えるとターゲットは「2型糖尿病の患者さん」、目的は「webサイトへの誘導」です。しかし、これだけではイメージがぼやけて、何を作っていいかわかりません。患者さんの絵や糖尿病のイメージを配置して、「2型糖尿病の患者さんのためのサイト」というテキストを大きくレイアウトして…と、出来ないことはないですがインパクトはあまりないでしょう。
テーマをもっと明確にするためには、ここはコミュニケーションの基本でもある5W1Hで考えてみるとより具体的に制作内容が見えてきます。
・Who(だれが)
・When(いつ)
・Where(どこで)
・What(なにを)
・Why(なぜ)
・How(どのように)
ターゲットを、家庭を持つ40代男性として考えてみると、
・Who(健康診断でHbA1cが高いと指摘された40代男性)
・When(再検査に訪れた)
・Where(クリニックで)
・What(糖尿病のセルフメディケーションを)
・Why(今後の人生のために、または家族のために)
・How(調べる)
このような具体性が見えてきます。この場合、自身の健康のみならず家族の生活も(Why)考慮する重要な要素になるかも知れません。
ターゲット像が絞られると、アピールするべき訴求ポイントが見えてきませんか?たとえば「今からでも間に合うセルフメディケーション、変えるべき生活習慣」とか。
構成・原稿を考える
ターゲット・訴求ポイントが決まったとしても、いきなりデザインとはいきません。「デザインが重要」なのはもちろんですが、それは患者さんの目を止めるためで、医療系の制作物において最重要なのは掲載される情報です。これが間違っていると世に出すことさえできません。医療に携わる者として、意味のある、そして正しい情報を準備してください。
情報が準備できたらまずは構成要素を書き出し、原稿を作成します。
上で示したターゲットを意識したタイトル・キャッチコピー。さらに本文、図表、説明・解説文。全ての構成要素を洗い出し全体構成を考えます。構成要素をどのような順番で配置するか、ページ内情報量は適切か。このページ構成が重要で後のデザインにも大きく影響してきます。
情報量にも注意してください。患者さん向けのリーフレットでは、情報量が多すぎると読みづらくなり、読んでもらえない可能性があります。webサイトへの誘導目的のリーフレットなら、紙面の情報量は抑え「つづきはwebで」も有効な手段でしょう。
リーフレットのサイズは?ページ数は?
クリニック・病院などに置く患者向けリーフレットは、持ち帰りも想定して、鞄に入る小さめのサイズが主流です。一般のチラシでよくあるA4サイズで作ると大きすぎて、クリニックなどには置いてもらえない可能性もあります。ここはオーソドックスにA5サイズなどを選んでおくのがBetterです。または、省スペースと目立つのを狙ってA4三つ折りをスタンドに入れて立てるという手段もあります。そして冊子タイプだと「有益感」「お得感」を演出できます。
リーフレットのサイズを決めたら実際の大きさで構成ラフ作り、情報量やバランスを確認すると、ページ数も把握しやすく作成がスムーズです。
構成・原稿ができたら次はデザインです。
患者向けリーフレットはどんなデザインが有効か
広告のデザインではインパクトや目新しさが求められます。目立つことが最優先なのですが、クリニック・病院に置かれる患者向けリーフレットでは少し変わってきます。
①患者さんが「自分に関係がある」と一目で分かる
待合室にはさまざまな情報が並んでいます。その中から「自分に有用な情報」だと、分かりやすくシンプルなデザインでメッセージを伝えた方が良いでしょう。冊子が何種類か置いてある場合、表紙の情報量が多すぎたりデザインが複雑だったりすると、とっつきやすい次の冊子に目が移ってしまい、見てもらえない可能性が高くなります。まず「デザインで患者さんの目を止める」これがリーフ表紙の役割です。このため、表紙は情報を絞った方が良いです。
②患者さんが安心できる、でもちょっと気になるデザイン
恐怖訴求は基本的にNG、「病気かも知れない」「病気を治したい」と不安な気持ちで受診しているのに、そこで不安をあおるデザインを見せられると、見なかったことにされるかも知れません。よく患者さん向けリーフレットの表紙にはイラストが使われますが、それは写真を使うよりリアル感がなく、和み感・安心感が生まれるからです。写真を使う場合は構成、表現、予算も含めて慎重に考える必要があります。
③先生が待合室に置きたいと思わせるデザイン
情報の正確性、わかりやすさも重要ですが、さらに先生が見て「お、なるほど」「カッコいいな」と思わせるデザインだと、置いてもらえる可能性が高くなります。「当院のステイタスが上がる」そんなことを言われるデザインだったら最高、ただしカッコいいだけではダメ、患者さんに安心感を与えることが重要です。
よくある失敗例
最後に必ずしも失敗とは言えませんが、避けた方が良い例を挙げます。
●「あれもこれも入れたい」で情報過多になり、読むのを敬遠させてしまう。
メイン情報、関連情報、お役立ち情報、Tips情報、Other情報。「情報は多い方が良い」と考えて盛り込んだが、読み手は何を読めば良いのか分からなくなり、結局読んで貰えない。情報の取捨選択はしっかり行い、ページ内にある程度の余白を作ることが、読みやすさにつながります。
●情報が整理されておらず、読み手は内容が理解ができない。
同じ情報が何度も出てきたり、表現が違っていたり、思考ルーチンに反した情報順序だと、理解しにくくなります。情報順序、視点順序も意識して構成しましょう。
●デザイン要素・色数が多すぎて、アピールポイントが分からない。
「あれも、これも目立たせたい」で派手な色とデザイン要素が多くなり、全体がごちゃごちゃになって、結局どれも目立たなくなる。読みにくくなる。ポイントを押さえて、色数は抑えめにすると良いでしょう。
最後に
患者さん向けリーフレットを作る時のポイントを書いてきました。これが全てでは無いですが、これから何かを作る時、思考の参考になればと思います。
患者さんのために読みやすく伝わりやすいリーフを作りましょう。