【事例あり】医療分野でも注目のクラウドファンディングが、臨床研究や情報発信を成功に導く!

近年、資金調達の新しい選択肢となっているクラウドファンディング。医療分野でも、新規プロジェクトの立ち上げや運用の際にクラウドファンディングを活用する流れが広がっています。そこで本記事では、クラウドファンディングの基本的な仕組みや成功事例などを医療分野の事例も交えながらご紹介します。

新しい資金調達方法、クラウドファンディングの仕組み

クラウドファンディングとは、クラウド(Crowd:群衆)とファンディング(Funding:資金調達)の造語で、インターネット上で公開した資金募集案件に対して投資者や寄付金を募る仕組みです。プロジェクト起案者は、クラウドファンディングの運営サイト(Makuake、CAMPFIRE、Readyforなど)に自身のプロジェクトを掲載し、それに共感した方(支援者)から資金(支援金)を集めます。

クラウドファンディングには、支援者にお礼を送るリターンという仕組みがあります。支援額に応じてリターンの内容を設定し、プロジェクト実行後に商品やサービスを提供するのが一般的です。寄付型というリターンの設定がないタイプのクラウドファンディングもあります。

クラウドファンディングでの支援金の受け取り方には、「All or Nothing方式(成功時報酬型)」と「All in方式(実施確約報酬型)」があり、それぞれ下記のような特徴があります。

  • All or Nothing方式
    設定した期間内に目標金額を達成した場合のみ、支援金を受け取れる。その際は、プロジェクトを実施しなければならない。
  • All in方式
    設定した期間内に目標金額が未達の場合でも、支援金を受け取れる。得られた支援額によらずプロジェクトを実施しなければならない。

新しい資金調達方法として活用されているクラウドファンディングですが、矢野経済研究所によると、2020年度の国内クラウドファンディング市場規模は前年度比17.6%増の1,841億円(新規プロジェクト支援額ベース)となっており今後も注目の市場です。

クラウドファンディングの成功事例

クラウドファンディングで資金調達をするのに、特別な資格やスキルは必要ありません。「このアイデアを実現したい」という強い気持ちがあればチャンレジ可能です。そのため、クラウドファンディングではこれまでに数多くのユニークなアイデアが資金調達を実現しています。一例として、異業種コラボレーションと1億円以上の資金調達に成功した事例をご紹介します。

・大手電子機器メーカーと老舗日本酒メーカーの異色コラボ

【プロジェクト名】-2℃で味わう新しい日本酒体験。雪がとけるように味わいが変わる「雪どけ酒」冬単衣
【起案者】シャープ株式会社、石井酒造株式会社
【概要】シャープの液晶技術を活かして開発した蓄冷材料を使った保冷バッグと、-2℃で味わうことを想定して味づくりを行った純米吟醸酒「雪どけ酒」冬単衣(ふゆひとえ)をセットにした、新しい日本酒体験を提供するプロジェクト。温度管理が非常に重要な日本酒で、これまでになかった氷点下での飲み方を提案。新技術を世に問う方法を模索している中で、消費者の声をダイレクトに聞くことができ、また、販路作りもできるなど多くのメリットが見込めることからクラウドファンディングを実施した。
【リターン内容】<5,600円コース>日本酒・保冷バッグ1セット(1,000円割引)<11,000円コース>日本酒・保冷バッグ2セット(2,200円割引)<39,600円コース>日本酒・保冷バッグ6セット(追加コース)など
【結果】実施初日で目標金額100万円を突破。最終的には支援者2,249人から合計1,869万5,400円を集めた。
【URL】https://www.makuake.com/project/fuyuhitoe

・1億2,800万円を集めた折り畳み式電動ハイブリットバイク

【プロジェクト名】自転車+バイク=glafitバイク スマートな折り畳み式電動ハイブリッドバイク
【起案者】glafit
【概要】『日本を代表する次世代乗り物メーカーになる!』ことを目指し、15年以上自動車・バイク関連用品の企画・製造に取り組んできたglafit。同社は、普通の自転車のように使うのはもちろん、バイクのようにハンドルのスロットルでも進むことができ、その2つを掛け合わせたアシスト走行もできる、1台3役のglafitバイクを開発。100%電動エネルギーを動力としているため静音性や環境にも配慮しており、法律上は原付扱いだが重量は原付の3分の1(約18キロ)で折り畳めるため携帯性も抜群。これらの特徴を持つ次世代モビリティの最初の乗り手となるお客さまと出逢い、意見を集め、さらに良い乗り物づくりに取り組んでいきたいという想いからクラウドファンディングを実施した。
【リターン内容】<5,350円コース>glafitフレームバック<112,500円コース>【限定早割20セット】glafitバイク(スーパーブラック)<525,000円コース>【限定5セット】glafitバイク5台(お好きなカラー)など
【結果】実施初日で目標金額300万円を突破。最終的な支援額はクラウドファンディングの調達額国内1位(当時)となる1億2,800万4,810円を記録した。
【URL】https://www.makuake.com/project/glafit

医療分野でのクラウドファンディング

クラウドファンディングは医療分野でも活用されています。クラウドファンディングの特集を組んだ月刊医療経営士2021年5月号によると、2020年にREADYFORで実施された医療系クラウドファンディングの支援総額は、前年よりも約7.5倍も増えたそうです。クラウドファンディングが広く世間に浸透しつつあることに加え、新型コロナウイルス感染症による影響もあったと同誌では伝えています。

医療分野のクラウドファンディングならではの特徴としては、支援者の多くが「リターンが得られる」ではなく「医療や病院を応援したい」という気持ちで支援を行っている点が挙げられます。支援者の中には、パソコンやスマートフォンを持っておらずクラウドファンディングの仕組みをよく分かっていなくても自分が通院している病院の力になりたい、という思いで支援する高齢の方もいるそうです。

それでは、医療分野のクラウドファンディングの成功事例を見てみましょう。

・「手足のしびれ」の副作用に苦しむ方々を減らしていく第一歩

【プロジェクト名】乳がんの抗がん剤治療における、手足のしびれ予防を目指す臨床研究を
【起案者】京都乳癌研究ネットワーク
【概要】乳がんの抗がん剤治療では、およそ7割の患者さんに、手足のしびれの副作用が出るそう。悪化すると今までどおりの日常が過ごせなくなるケースもあるため、京都乳癌研究ネットワークでは状況改善に向けた研究に取り組み、抗がん剤投与時に手足を圧迫するための弾性圧迫グローブ・ストッキング(ECGS:Elastic Compression Gloves and Stockings)を開発。同製品が、手足のしびれ予防に有効かを検討する臨床研究にかかる費用を募るため、クラウドファンディングを実施した。
【リターン内容】<5,000円コース>感謝のメール+活動報告書<10,000円コース>感謝のメール+活動報告書+京都乳癌研究ネットワークのHPにお名前を掲載(希望者のみ)<300,000円コース>感謝のメール+活動報告書+詳細な報告書+京都乳癌研究ネットワークのHPにお名前を掲載(希望者のみ)+活動報告書にお名前を掲載(希望者のみ)など
【結果】最終的には、目標金額2,000万円に対して支援者911人から2,721万円を調達。目標金額をクリアし、本研究の実施が決定した。
【URL】https://readyfor.jp/projects/KBCRN-A004

・専門家でなくても理解できる正確なコロナ関連情報を発信する

【プロジェクト名】#こびナビ:コロナワクチンの正確な情報で元の世界を取り戻したい
【起案者】一般社団法人 保健医療リテラシー推進社中
【概要】新型コロナウイルスワクチンをはじめとする、新型コロナウイルスに関するさまざまな情報を、正確にわかりやすく、より多くの方へ届けるために医師・専門家が集まり結成されたプロジェクト「こびナビ」。同プロジェクトでは、オンラインコンテンツ(ウェブサイト、SNS、動画など)の充実や、認知拡大(広告展開)の費用を募るため、クラウドファンディングを実施した。
【リターン内容】<5,000円コース>お礼のメール<10,000円コース>お礼のメール+特別リーフレットデータ配布(個人向け)<100,000円コース>お礼のメール+特別リーフレット配布+HPにお名前記載(個人向け)など
【結果】目標金額500万円でスタートしたが、新型コロナウイルスという関心の高いテーマとも相まって、最終的には3,032万5,000円の支援金を集めることに成功した。
【URL】https://readyfor.jp/projects/cov-navi

・コロナ禍、医療提供に奮闘する職員に臨時手当を支給したい

【プロジェクト名】withコロナの冬。これからも地域の医療を守るために:守谷慶友病院
【起案者】医療法人 慶友会
【概要】県からの要請を受けて2020年4月に新型コロナウイルス感染患者さんの入院受け入れを開始した守谷慶友病院。しかし、病棟看護師が新型コロナウイルスに感染すると多くの風評被害が発生。加えて、入院受け入れを開始してから患者数が激減し、職員の定期昇給が見送られる事態に。こうした状況の中、懸命に働く職員たちに臨時手当を支給するためクラウドファンディングを実施した。
【リターン内容】リターン内容:<3,000円コース>お礼のメッセージ+活動報告書<10,000円コース>お礼のメッセージ+活動報告書+HPにお名前掲載(ご希望者のみ)<1,000,000円コース>お礼のメッセージ+活動報告書+HPにお名前掲載(ご希望者のみ)など
【結果】記者会見を開いて本取り組みを知らせるなどPRを積極的に行った結果、目標の1,000万円をわずか1日で達成。最終的な支援額は4,785万930円。当初、病院内には社会全体が大変な時期に資金をもらうことに抵抗感を示す声があったそうだが、結果的に全国から多数の応援メッセージも集まった。
【URL】https://readyfor.jp/projects/moriya-keiyu

社会を巻き込むクラウドファンディングは医療分野とマッチ

クラウドファンディングで成功するのは、画期的な技術や先進的なアイデアのプロジェクトだけではありません。なぜこれを行うのか。その必要性や熱意が相手に伝われば、どのようなプロジェクトであっても多額の支援金を集めることは可能であり、プロジェクト自体の認知向上も期待できます。「必要性」や「社会を巻き込む」という観点からも、医療分野との相性が良いことが分かります。今後はますます、クラウドファンディングを活用した疾患啓発や医療系コンテンツが生まれてくるのではないでしょうか。


<参考>※URL最終閲覧2021年9月6日
・『月刊 医療経営士』日本医療企画、2021年5月号([特集]プロジェクトを成功に導け!クラウドファンディングで病院の夢を叶えよう)
・『クラウドファンディングで資金調達に成功する』クラウドファンディング研究会、技術評論社、2019
・クラウドファンディング(購入型)の 動向整理 – 消費者庁
https://www.caa.go.jp/policies/policy/consumer_policy/caution/internet/assets/caution_internet_201013_0001.pdf
・国内クラウドファンディング市場の調査を実施(2021年)-矢野経済研究所
https://www.yano.co.jp/press-release/show/press_id/2727