【MRの声を聞く 2】COVID-19の流行から1年で営業活動はどう変わったか?MR座談会(後編)

前編では、COVID-19が流行中の現在、MRはどのように医師とコミュニケーションを図っているのか、その際に困っていることや、工夫していることなどを伺いました。インタビューを通してCOVID-19の流行前では見えてこなかった「MRと医師の関係」や「両者のコミュニケーションの質」などが、現在では浮き彫りになっていることが分かってきました。今回はそれらをさらに深堀りして、製薬企業のマーケティングや情報提供のあり方について詳細に議論していきます。

【MRの声を聞く 2】COVID-19の流行から1年で営業活動はどう変わったか?MR座談会(前編)

参加者

<Aさん>
内資系製薬企業勤務。MR歴は約15年。首都圏の病院を中心に担当。新卒で入社以来、この製薬企業で活躍中。多くの疾患領域および治療薬を担当し、MRとしての経験が豊富。チームのまとめ役を任されている。

<Bさん>
外資系製薬会社勤務。MR歴は約20年。異業種からMRに転職。急性期の治療薬や生活習慣病治療薬など多数の医薬品のMR活動を経験し、現在はオンコロジーMRとして、地方の病院を中心に担当。勉強熱心で情報収集に余念がなく、得た情報をMR活動に活用している。


司会:前回に引き続き、COVID-19流行中のMR活動につきまして、現場のMRの皆様からお話を伺います。まずは、現在のMR活動から得た気づきを教えてください。

Aさん:MRは医師に対して、きちんと面会の用件を伝え、確実に情報提供することが非常に重要だと再確認することがありました。先日、医師と会話で「追加適応や新薬の発売などについて、ただ資料を送りつけてきて、それで伝わっただろうと考えているメーカーがいる。資料を読んでも理解しきれないものもあるので、私たちにとって大事な情報なのであれば、きちんと伝えに来てほしい」という話がありました。これはMRとして非常にまずいですね。

Bさん:課題だらけの中で、どの課題なら自分で解決できるのかを明らかにすることが工夫だなと、最近痛感しています。今、医師とMRは双方向のやり取りが、COVID-19の流行前ほどできていません。医師は現在、新薬の場合、その医薬品を詳しく知らないまま添付文書の情報のみで処方せざるを得ない状況の場合もあります。このような時、医師は自分の処方について同僚の医師やMRから情報がほしい、後押ししてほしいと考えているのではないでしょうか。だからこそ、コンタクト可能な医師との双方向のコミュニケーションでは、その医師に丁寧に対応しています。医師からの質問には、ガイドライン等を踏まえながら、答えられるだけ情報を提供します。必ずしも答えがある質問ばかりではありませんが、そのような時でも分かるところまでは情報提供しますし、それが次回の面談のネタになることもあります。

COVID-19後のマーケティングには変化も。さらに今後必要な施策は?

司会:では次に、MRの皆様と本社のマーケティング部門とのコミュニケーションについて伺います。 この一年で本社のマーケティング部門の施策に、変化はありましたか?

Bさん:変化はありますね。MRが医師に簡単に会えなくなっているので、本社のマーケティング部門が医師との面談用のネタとなる資材をたくさん作りました。それらの資材は、Webやデジタルツールに応じて使えるようになっています。

Aさん:弊社はWebシンポジウムが圧倒的に増えました。他には、e-Detailingなどデジタルを用いたツールは増えましたが、あくまでHow Toのバリエーションが拡大したというイメージで、根本的なマーケティングは変わったという印象はまだないですね。

司会:本社のマーケティング部門からの指示は、現状に即した的確な指示だと感じますか?

Bさん:弊社のマーケティングは、現状では有効だと思っています。全ての医師にフィットするかは別問題ですが。医師がそもそも知っている情報の量や、こちらから提供した情報が医師を満足させたかどうかなど、さまざまな要因でマーケティングの評価は変わると考えますし、Web講演会やマテリアルに関しても、実施都度アンケートを取っているようです。

Aさん:個人的には、本社マーケティングはまだプロダクト中心であり、こちら側が何をするか?どれだけできたのか?という文脈になっていると感じます。現場はそういった文脈では物事は進んでおらず、反応や心情変化など、顧客の状態を踏まえてアプローチや内容を変えていますよね。
ですから本来は、月2回医師に会ったら何がどう変わるのか?どの医師に2回会うのが良いのか?会うべきシーズンはいつか? その時のネタは?といったことをマーケティング施策と連動させる必要があると思うんです。
従来はこういったことは営業現場が考える仕事だと言われていましたが、個別化マーケティングが重要になりつつある中では現場対応だけでは限界がありますから、変えていく点だと思っています。

司会:医師に会うべきシーズンというのは、具体的にはどのようなことを指しますか?

Aさん:医師によっては学会前のタイミングは忙しかったり、感染症が流行する時期に忙しくなるなど、医師の忙しさには季節変動があります。 そのような忙しくなる前に医師に会っておく、もしくはそのタイミングに合わせた情報提供を行うなど、相手の状況に合わせてこちらの動きを変えていくというのが重要だと考えています。

司会:今後の施策として、御社のマーケティング部門に望むことはありますか?

Bさん:学会で話題になったトピックスを会社から早く出して欲しいですね。現在では、学会情報が早く流布されるようになり、医師もMRより早くその内容を知っていることもあります。製薬企業から情報を発信する場合は、社内のレビューが必要ですが、それによって医師との面談時にMRはそのトピックを知らず、医師は知っているという状況が起こりえます。MRとしては立場がなくなってしまいますから、そういうことは何とかして避けたいですね。

Aさん:私はカスタマーマーケティングをやってほしいです。今の分析のやり方は、誰が自社医薬品を使っていないのか?その顧客は何を使っているのか?MRは何をやったのか?どれだけやっているのか?それは足りているのか?など活動量などのリソースを追及していくやり方です。
しかし、医師にはさまざまなタイプがいます。例えば、ある疾患においては医師の世代によってよく使われるお薬や知っている情報に違いがあります。ベテラン医師は古い薬剤に詳しい、若い医師は最近の薬剤に詳しい、などです。また、先ほど申したように、医師の一年間の忙しさに応じて、活動のプランニングを変えていくことも重要です。 このような顧客分析は必須だと考えています。

ツールよりも伝える情報の内容の方が重要

司会:Web面談以外では、デジタルテクノロジーの活用はありますか?

Aさん:リモートディテーリングサービスや医療ポータルサイトの活用があるかもしれません。それら以外では、PCのWeb会議の画面越しに後任のMRを紹介する、座談会や講演会などで遠方の医師でもWebで会えるというのは有効かと思います。

Bさん:弊社は、リモートディテーリングサービスや医療ポータルサイトも当然活用していますが、それはスポット広告としての位置付けであって、MRが利活用しているのは、ごく一部のリモートディテーリングサービスくらいでしょうか。それ以外は使っていないですね。SNSも会社が使用を認めていません。

司会:MRから見て、医師はどのようなデジタルチャネルから情報収集することが多いでしょうか?

Aさん:会員数の多い医療関連のポータルサイトからの情報収集が多いような気がします。あと、医師の中にはFacebookを活用している人もいるようですね。

Bさん:私が担当している医師も、9割以上が医療関連のポータルサイトから情報を得ているように思います。

司会:製薬会社の情報提供として、今後どのような方法が医師に喜ばれると思いますか?

Aさん:方法よりも、まずはその中身の方が問題だと思います。何を伝えるのか?が重要ですし、その情報が医師に診療や治療を改めて考えてもらう機会になったりします。医師にとって、MRから情報を得るときは、情報を整理する機会でもあります。その時、資料を渡して読んでもらうだけでは、医師は情報を整理できません。
今後はWeb面談ではない、もう少し異なる情報提供のやり方があっても良いかもしれないですね。 例えば、YouTubeのようにMR自身が自社医薬品を説明する動画を自社サイト内に格納し、QRコードからのリンクで、医師が見たいときに自由に見ることができるという方法もあるかもしれません。医師は忙しいので、時間に縛られず利便性が高い情報を好みます。そのようなツールを使うことで、医師に情報が伝わりやすくなるのではないかと考えています。

Bさん:自分のペースで情報を入手でき、自分に合った情報をいつでも入手できるというのが、医師に喜ばれますね。Web講演会でも、ライブでの配信ではなく、オンデマンドやアーカイブで視聴可能という方が望ましいでしょう。見たい人の側に立たないと視聴者は増えませんよね。医師でも同じだと思います。

どのようなコンテンツが医師に必要とされているか?

司会:製薬会社の情報提供として、今後どのようなコンテンツが医師に喜ばれると思いますか?

Aさん:新薬であれば、メカニズム、有効性、安全性とどのような情報でも正確な情報を届けることが重要ですが、特に届けるタイミングが重要になると思います。 一方で、医師が使い慣れた薬だと、あまり喜ばれないと思います。 医師にとって意味のあるような新しい情報が少なくなると思いますので。ただこのような情報でも若い医師にとっては目新しく映ることもあるので、やはり顧客背景によって分類して、情報提供を考えることが重要だと思います。

Bさん:ターゲット医師の専門性に合致するコンテンツ、明日から使えるコンテンツが喜ばれますね。例えば、治療レジメンの種類が多い疾患の場合、医師の考えも患者さんの状況に応じてさまざまだったりします。その時の診療の状況に応じて、コンテンツを変えて提供することができたら、医師に喜ばれるのではないでしょうか。
実際の処方医が「うちの施設では、このような患者には、この医薬品をこのように使っている。このような結果が得られている」など、臨床の詳細な話ほど、医師は聞きたいようです。私自身、医師からそのような質問を受けることもあります。このような情報を活用すると、MRもフォローしやすくなりますね。

Withコロナの時代、MRとして医師に貢献できること

司会:MRの人数や活動の内容は、今後どのように変化すると感じていますか?

Aさん:MRの人数は減るでしょうね。デジタルツールやチャネルの活用は増えるでしょう。ただ、MRは医師の行動変容のフィニッシャーなので、必要だとは思います。

Bさん:こういう観点は、会社の経営判断ですよね。医薬品の宣伝は、デジタルで十分でしょう。新薬上市時はリソースの投下が必須なので、ここはMRも必要だと考えます。でもそのようなパイプラインがどれくらいあるのか、現在の製品のプロダクトライフサイクルはどうなのかなど、さまざまなポイントでの検討が必要ですね。とはいえ、MRの人数自体は減っていくでしょう。

司会:MRとして、今後どのように医師に貢献したいと考えていますか?

Aさん:医師に「ありがとう」と言ってもらえる仕事をどれだけできるか、ですね。ルールが変化しても、こういった仕事をどれだけできるのかがMRの価値につながると思います。顧客からの「ありがとう」の価値だけは、時代も世代も関係ないと思っています。

Bさん:私も、自分が届けた情報が医師の参考になって、治療がうまくいったら嬉しいです。MRは重要な情報を医師に届けます。一方、医師に対して届けられる情報が多すぎます。その多すぎる情報を要約して分かりやすく医師に提供できるMRは、医師から必要とされます。単純に情報を届けても、その情報の良し悪しは、医師にはすぐに分からないこともあります。疾患領域によっては、患者さんへのムンテラが難しいとか、薬代が高額で患者さんの理解が得られにくいなど、さまざまな悩みを抱える医師が多いです。このようなときに自分が提供した情報で、医師から「参考になった、役に立った」と言ってもらいたいですね。

司会:今日は現役MRのお二人から、COVID-19流行の中でのMR活動について、詳細にお話をお聞かせいただきました。医師に会えなくて困っているMRが多い中、今回お話を伺ったお二人は、日ごろのMR活動が医師からきちんと評価されているからこそ、コロナ禍においても医師からアポイントがもらえたり、Web面談ができているのだということを、お話全体を通じて感じました。

医師の性格やニーズには、多様な違いがあります。お二人のMR活動は、本社からのマーケティングの施策を、現場の医師一人一人の性格を踏まえ、ニーズにフィットするように調整し、提供しています。このような取り組みによって、マーケティング部門が作った製品メッセージが確実に医師に届き、マーケティングプランを成功に導いているのではないでしょうか。

COVID-19の流行に限らず、社会の変化の中でMR活動もマーケティングプランも変化していきます。これからのマーケティング部門はMRと密に連携をとりながらマーケティングプランを練っていくことで、本社と現場が一層一体となって、医師に受け入れられるプロモーションを進めることができるのではないかと思いました。本日は貴重なお話を多数お聞かせいただき、ありがとうございました。