【MRの声を聞く 2】COVID-19の流行から1年で営業活動はどう変わったか?MR座談会(前編)

2020年1月以降、日本国内ではCOVID-19の感染が拡大しました。それに伴い、日本国内の製薬業界のマーケティングやプロモーション、MR活動は、大きく変わらざるを得ない状況に陥りました。それから約1年が経過した現在、MRは日々の活動の中でどのようなことに困り、課題を感じ、悩んでいるのでしょうか?そして、どのようなサポートを本社に期待しているのでしょうか?
今回、現場で活躍している現役MRにインタビューし、MR活動の実態を伺いました。

■前回(2020年5月)のMR座談会はこちらの記事をご覧ください。

【MRの声を聞く】MRは、COVID-19でどんな影響を受けているのか?3名のMRにインタビュー実施。

参加者

<Aさん>
内資系製薬企業勤務。MR歴は約15年。首都圏の病院を中心に担当。新卒で入社以来、この製薬企業で活躍中。多くの疾患領域および治療薬を担当し、MRとしての経験が豊富。チームのまとめ役を任されている。

<Bさん>
外資系製薬会社勤務。MR歴は約20年。異業種からMRに転職。急性期の治療薬や生活習慣病治療薬など多数の医薬品のMR活動を経験し、現在はオンコロジーMRとして、地方の病院を中心に担当。勉強熱心で情報収集に余念がなく、得た情報をMR活動に活用している。

司会:2020年1月に日本国内での新型コロナウイルスの感染が確認されて以来、製薬業界全体が大きく様変わりしたように見受けられます。マーケティングやプロモーションから、毎日のMR活動に至るまで、「2020年まで」と「2020年以降」では、どのような印象を持っていますか?

Aさん:そうですね。医師とのコミュニケーションから働き方まで、大きく変わりました。

Bさん:私もさまざまなことが大きく変化しました。MR活動や医師とのかかわり方、自分の働き方など、2020年の変化は著しいですね。

司会:現在は、どのような働き方でしょうか?

Aさん:私の場合は現在、午前中は在宅勤務で、午後は外勤という働き方です。

Bさん:私は週5日のうち3日が在宅、2日が外勤という感じですね。

司会:医師とのコミュニケーションは、現在どのように取っていますか?

Aさん:基本的には、医師のタイプに応じて対応の仕方を変えています。面談を好む医師には対面で、メールを好む医師にはメールで、という使い分けをしています。また、病院によっては訪問規制がさほど厳しくない施設もあり、そのような病院では従来同様の活動をしています。

Bさん:私はメール、電話、手紙、訪問が主なコミュニケーションですね。Web面談は少ないです。訪問可能な病院にはできる限り訪問しています。ただ、訪問頻度そのものは2020年に比べると大幅に減っていると思います。2020年の中でも、コミュニケーションの方法や数には、波がありました。

司会:その点を、もう少し詳しくお聞かせいただけますか?

Bさん:2020年の3月から5月頃は緊急事態宣言がありましたので、医師へのコミュニケーションは手紙がほとんどでした。でも緊急事態宣言の解除後、外勤ができるようになると、8月から11月くらいまでは毎日病院に訪問していました。その後COVID-19の患者さんの増加があり、2021年に入ってからはほとんど外勤できていません。最近は、COVID-19の流行している状況に応じて訪問できる病院がある、という感じです。

医師とMRのコミュニケーションは、ジャーニーで考えるべき

司会:医師とコミュニケーションを取る際、対面やメール、電話、Web面談など、それぞれどれくらいの割合でしょうか?

Bさん:現在だとメールが4割、電話は一部、手紙も少ないですね。訪問しての面談は2割くらいでしょうか。訪問については、自社医薬品の状況等もあり、訪問している診療科は限定的ですね。

司会:メールや手紙、電話は、どのような内容や目的で使っていますか?

Bさん:メールの場合は、Web講演会や自社医薬品に関するコンテンツのバナーリンクなどを送る際に使います。電話は、医師に面会したい用件を伝えたり、事前に送ってある手紙の中の内容や用件を電話でも説明したりと、次の面談につなげる入り口の役割ですね。手紙はWeb講演会の案内や、演者がどのような内容を話すのかなどを書いて送ります。手紙だけでなく、電話やメールと組み合わせて活用しています。

Aさん:医師の解釈や考えを変化させて、自社医薬品の処方を促すためには、Face to Faceが最も効果があると考えています。しかし、Face to Faceに至ることが難しいというのが、現在のMRの現場です。その医師とのFace to Faceにつなげるためには、手紙が良いのか、メールが良いのか、電話が良いのかなど、医師ごとのコミュニケーション手段の好みや特性を考慮しながら活動しています。

Bさん:MR活動の基本は、医師に応じて対応を変えていくことですね。

Aさん:はい。医師に応じて面談やツールなどを組み合わせて使っていますね。医師とのコミュニケーションは、ツールのどれか一つを使って完結するものではないと考えています。「医師とのコミュニケーションのジャーニー」といえば良いでしょうか。医師の興味や認知を作り出すことから、その話題に興味を持ち、話を聞いてみたいと思ってもらうまでの一連の流れをきちんと理解して、最後は医師と面談できるように自分の活動を設計しています。

医師の変化や心境、立場を、MRは一層敏感になる必要がある

司会:では、今の医療機関や医師の状況をお聞かせください。2020年と2021年で、どのようなところが違いますか?

Bさん:私の担当地域では、COVID-19が流行して1年経ち、医師も余裕が出てきているようです。 MRの訪問もできています。 新薬も採用できています。この点では、以前に近い状況になっていると思います。ただ、MRを医師が受け入れてくれるかどうかは別問題ですね。病院は普通に動いていますが、MRと医師の関係は、以前には戻っていません。

Aさん:私の担当先の場合、2020年は医師もコロナ禍でどのようにすればよいのかが分からず、多くの医師が慎重に対応されていたように思います。それが2021年に入り、コロナ禍であっても、医師の「MRと面会することへ慎重さ」は薄れ、面会のハードルは下がっていると感じます。一方で、病院によっては、MR活動に対して守りに徹しているところもあります。そのような病院では、社会的な立場や、院内の管理体制における責任を持つ教授や部長などの管理職クラスの医師ほど、MRへの対応を気にしているようです。

司会:周囲のMRは、その点に配慮しているのでしょうか?

Aさん:それを理解できているMRもいますが、理解できていないMRもいます。MRは自分の立場だけでなく、医師の院内での立場を尊重すべきですよね。

MRは、医師への情報提供がいまだに不十分と考えている

司会:現在MRの皆様は、医師に十分な情報提供ができていると感じますか?

Bさん:医師への十分な情報提供は、できていないですね。

Aさん:一言で情報提供といっても、切り口によって答えが変わりますね。単純に情報提供というならば、毎月全ターゲット医師に月1回、自社製品の資料を郵送したり、メールを送ることでも「実施した」と言えます。ですが、医師は本当にそれを見ているかわかりませんし、どこまでご理解いただいたか、興味を持っていただいたかという「深さ」はバラバラです。そういう意味では、「情報提供の深さ」に関わる面談の回数は確実に減っていますので、不十分と言えるかもしれません。

司会:2020年4月の緊急事態宣言時と現在を比べた時、MR活動の量や質に変化はありましたか?

Aさん:2020年4月の時は、MR活動は何もできませんでした。それに比べれば、確実に活動量が増えていますし、直接面会が増えていることでMR活動の質も、今の方が良いだろうと思います。

Bさん:私も、その頃と比較するとMR活動の量は戻ってきているように感じます。

Aさん:MR活動の質という観点ですと、例えば説明会やWebシンポジウムを施設で開催する際に、医師とディスカッションできないことが痛手です。これまではそういった機会に、医師の本音を聞き出したり、診療上の困りごとを教えてもらえました。それらのお話は、次回訪問時のネタになりました。ですが、今はそれがありませんね。

Web面談は、ディテーリングの代替手段にはなりえない

司会:医師との面会頻度は、COVID-19の流行前と比べてどれくらい変わりましたか?

Bさん:COVID-19以前は対面がほとんどでした。今では、対面はCOVID-19以前の9割減ですね。10%くらいまで減りました。ただ、今はWebや電話、メールなど、いろんなコンタクトツールがあります。これらをどう使うか、その中で何ができるか、がMRに問われているのだろうと思います。

司会:単純に面会頻度を追うのは、実際のMRと医師のコンタクトを評価する際に見誤りますね。

Aさん:私も、面会数の総量として、たぶん7割減くらいだと思います。COVID-19以前はほぼ対面で医師と面会できていました。今は、医師と対面もしくはWeb面談でお互いに顔を見ながら話す機会が相当減りましたね。その面会の内訳ですが、対面が9に対してWeb面談が1くらいの割合で、私の場合は圧倒的に対面の方が多いです。

司会:Web面談がかなり少ないのはなぜですか?

Aさん:特に病院の医師の場合、Web面談を行う場所がありません。院長や部長クラスだと個室を持っていますが、若い医師は医局のような集合部屋の中に自分の机があります。そのような環境では、自分の話が他の医師に聞こえますし、他の医師への配慮が必要となり話しづらいので、Web面談は好まれないことが多いです。

Bさん:医師のネットの通信環境、Webの視聴環境の確認は重要ですね。私も医師の回線や視聴場所については、必ず確認します。個室がない医師へのWeb面談は非常に難しいです。

司会:Web面談を申し込んだ際の医師の反応は、いかがでしょうか?

Aさん:医師の反応は良くないですね。営業目的の一方的な案件だとNGです。医師に「これは面談をしないといけないな」と思っていただける大義名分が必要です。

Bさん:私は、アポイントがすぐ取れることはあります。ただMRによっては、私も含めて、Web面談ができる先生がまだごく一部ではないでしょうか。これは、医療者側がMRとの対面営業のスタイルに慣れていないせいかもしれませんが、そのうちこれが普通になります。ですから、MRもこれを乗り越えないといけません。医師の状況に応じてWeb面談を申し込んだり、他のツールにするなどの対応が必要になるので、医師にオンラインでの情報提供を受けていただけるように、MRが医師に最適なツールを見極められるようになる必要があります。そのためのサポートを、営業所で取り組む必要もあるでしょうね。

司会:Web面談はどのような内容の時に打診していますか?

Aさん:Web面談に限定したアポイントの打診は、私はやっていません。私の担当病院は、完全アポイント制ですので、基本的には電話やメールでアポイントをもらって、医師自身に「最も好ましい手段」を指定してもらいます。

Bさん:私の場合は、新薬を担当している都合上、新薬や適応拡大の情報提供など、Web面談を打診しやすい環境かもしれません。

Web面談でも対面でも、医師と長く話すことはできる

司会:対面もしくはWeb面談では、どれ位の時間、話ができますか?

Aさん:私の場合は対面で1時間くらい話すことが多いです。医師もCOVID-19下で自粛することも多く、人としゃべりたいという欲求があると感じます。そのためか、面談が10分程度で終わることはありません。

Bさん:私も、対面でもWeb面談でも、結構長く話せますね。

司会:COVID-19が流行してからのMR活動で課題になっていることや、工夫していることはありますか?

Bさん:通常の面談でも、Web面談でも同様ですが、常に医師のクリニカルクエスチョンを確認して、それに基づくディスカッションをするように心掛けています。そうすることで、医師の情報整理の時間になると考えています。医師は情報を入手するだけでなく、その情報をどのような場面でどのように活用するかを考えたり、ディスカッションをしながら疑問点が出てきて他の医師の診療の仕方やコツを知りたいと思うこともあるようです。そこを踏まえて、医師と面談するようにしています。

Aさん:私の場合、関係が構築できていない医師へのアプローチが課題ですね。今活動ができている医師は、リレーションができている方々です。新規で面会する先生や、なかなか会えない医師には、前任MRや昔懇意にしていた社員、もしくは私とリレーションのある医師から紹介してもらうなど、さまざまな手段を用いて面会につなげていますが、うまくいかないことも多く悩ましいところです。

医師からアポイントを取得するために必ずやるべきことは

司会:MRが医師からアポイントをいただく際、必ず留意しておくべきポイントはありますか?

Bさん:私は、医師に「見たい」「知りたい」「会いたい」と思ってもらえる電話のかけ方やメールの文章の書き方を工夫しています。意図が明確でなければ、医師はMRに会ってくれません。医師は忙しいですから。

Aさん:MRが医師に訪問の意図を明確に伝えることは、私も非常に重要だと思います。しかし、意図を伝えたからといって受け入れてもらえるわけではありません。情報ニーズの高い新薬と、ARBやスタチンのような古い薬剤では、医師からアポイントがもらえる確率も異なると思います。


COVID-19が流行している中、今回インタビューした2人のMRは、医師のインサイトを詳細に吟味しながら、現場で打てる手をしっかり検討して、的確に打っていることが分かりました。
では、現在のMRは本社のマーケティング部門に対して、どのような支援をして欲しいと思っているのでしょうか?続きは後編で。

■【後編】はこちら

【MRの声を聞く 2】COVID-19の流行から1年で営業活動はどう変わったか?MR座談会(後編)