本記事では、医薬品の有効期間や保存条件を決める薬剤の安定性試験について紹介します。 医薬品副作用の原因ですぐに思いつくのは、有効成分の影響、他の成分との相互作用、患者さんの体調、服用方法の間違いなどですが、案外考えないのが医薬品の品質劣化について。そこでここでは、医薬品の有効期間や保存条件(貯法)がどのように決められているのかを簡単に解説します。
添付文書にある「有効期間:3年 貯法:室温保存」の意味
添付文書のイメージです。赤で囲んだ部分をじっくり考えてみたことはあるでしょうか。たとえば錠剤の多くは有効期間3年となっています。なぜ、3年なのでしょうか。厚生労働省の指示で、とりあえず3年と書く、わけでは当然ありません。医薬品の品質確保の点から精査された結果として、表記されています。
<有効期間:3年>
有効期間のスタートは製造したときです。有効期間3年ということは、医薬品を製造後3年間は本来の品質で使用できる、となります。ただし、医薬品の安定性試験に基づいた最も適当な貯法で、という点と、開封しないで、という点がポイントです。
<貯法:室温保存>
このケースでは、適当といえる保存条件が室温ということになります。ちなみに「室温」は、その温度範囲が規定されていて、日本薬局方
*
の定義では1~30℃。これ以外にも「常温」は15~25℃、「冷所」は1~15℃です。
*医薬品の性状及び品質の適正を図るため、厚生労働大臣が定めた医薬品の規格基準書
医薬品の有効期間を決める「安定性試験」
では、どのように有効期間や保存条件が決められるのかを紹介します。温度、湿度、光などの影響下で医薬品の経時的変化を評価する試験が、安定性試験です。以下に試験条件の概要を示しました。正確にはさらに細かく試験条件が規定されていて、冷蔵庫や冷凍庫で保存すべき医薬品では、保存条件が異なります。ここでは最も一般的な錠剤の試験条件について抜粋してみました。詳細を知りたい方は、最新の医薬品製造販売指針などをご参照ください。