データ活用による次世代のMR像とは?医師が求めるディテーリング活動の「スピード」と「質」/MDMD2024Autumnレポート
医療現場の変化に伴い、製薬企業のMRによる情報提供活動も転換期を迎えています。2024年9月に開催された「Medinew Digital Marketing Day(MDMD)2024 Autumn」では、株式会社医薬情報ネット アカウントマネジメントユニットデータセールス 芳賀 瑞枝が「今医師が求めるMRのディテーリング活動とは」と題し、医師が求める新たなMRのディテーリング活動と、それを実現するためのデータ活用戦略について解説しました。本記事では、その講演内容を紹介します。
コロナ禍と医師の働き方改革でMRとの面談回数は減少
医療現場では、新型コロナウイルスの影響や働き方改革の推進により、MRと医師の面談機会が大きく減少しています。Medinewが2024年5月に実施した医師へのアンケート調査では、29%の医師が「コロナ禍でMRとの面談回数が減少した」と回答し、そのうち約66%の医師は、アフターコロナといわれる現在も面談回数は回復していないと答えています。
また、2024年4月の「医師の働き方改革」にも、MRの面談回数は影響を受けています。
同調査では、各業務にかける時間の中でも、医師が「最も減ると思う」「やや減ると思う」と答えた割合が高いのが「MR等との面談」でした。今後は、MRが医師との接点を確保することがより一層難しくなるといえそうです。
医師に評価されるMRの条件は「スピード」と「質」
では、医師がMRとの面談に使う時間が減っていく中で、それでも評価されるMR像とはどのようなものなのでしょうか。同調査によると、以下のような条件を満たすMRが医師から高く評価される結果となりました。
<情報提供のスピードが迅速>
- 問い合わせに対する返答が的確かつ迅速
- 限られた面談時間で有用な情報を提供してくれる
<情報提供の質が高い>
- 自社・他社問わず、医薬品に関する情報に詳しい
今までよりいっそう、これからのMRには情報提供の「スピード」と「質」の両者が求められるといえます。
【関連ダウンロード資料】
【DL資料あり】医師の情報収集方法および製薬企業との関わりに関する調査レポート2024年版 -医師の働き方改革編-
選ばれるMRのディテーリング例
パフォーマンスの高いMRは、どんな情報を提供するときも「付加価値を付けること」を大切にしています。同じ情報でも、より付加価値の高い情報をタイムリーに提供できるMRが、これからの時代は選ばれるようになると考えられます。
例えば、Web講演会を案内する場合でも、パフォーマンスの高いMRと一般的なMRには下記のような違いが見られます。
<パフォーマンスの高いMRのディテーリング>
「先生、今度のWeb講演会は〇〇先生の講演です。〇〇先生は、先日の学会でこんな演題で発表されていらっしゃいました。先生がお悩みの患者さんのヒントになるかもしれません。ぜひ、Web講演会をご視聴ください」
<一般的なMRのディテーリング>
「先生、今度のWeb講演会、▽月〇日にあるんです!ぜひ、お時間ありましたらご視聴ください!!」
このように、パフォーマンスの高いMRの案内は医師に合わせて個別最適化されており、質が高い印象を与えます。
データを活用して情報提供のスピードと質を高める
従来のMR活動では、面談を通じて医師のニーズを把握し、それに基づいて情報提供を行ってきました。しかし、面談機会が限られる中では、この方法だけでは十分な効果を得ることが難しくなっています。
そこで注目されているのが、データを活用したアプローチです。医師に関するさまざまなデータを分析し、ニーズを推測することで、限られた面談機会を最大限に活用することができます。
具体的には、以下のようなデータが活用可能です。
<医師に関するデータ>
- 医師属性情報
- オウンド・3rdパーティデータ
- 学会や論文などの学術活動情報
- 研究開発・治験活動情報
<施設に紐づくデータ>
- 施設情報
- 市場データ・実消化データ
- RWD
しかし、MRが個人で正確な情報をタイムリーに収集するのはハードルが高く、なかなかディテーリング活動にデータを取り入れられていないのが現状です。
この課題を解決するのが、CRMツールの導入です。CRMツールに各種データを取り込み、必要なときに必要な情報へアクセスできる環境を整えることで、MRは情報収集にかかっていた時間を削減でき、医師一人ひとりのニーズに合わせた、より効果的な情報提供をするために時間を費やすことができるようになります。
先行事例として、アステラス製薬株式会社、ヤンセンファーマ株式会社、MSD株式会社、旭化成ファーマ株式会社でのデータ活用のケースが紹介されました。
各社は、CRMと連携したMR活動や、必要に応じた外部からのデータ収集、社内データ・外部データの分析などを行っており、ディテーリング活動の質向上や個別最適化にデータを活用しています。
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医師の学術情報をタイムリーにキャッチできる「学会・論文情報データベース」
医薬情報ネットでは、データ活用によってMR活動を支援するため、学会情報データベースと論文情報データベースを提供しています。
学会情報データベースは、国内で開催される約1,400の医学系学会の情報を網羅し、医師の学会発表情報をデータベース化したものです。一方、論文情報データベースは、MEDLINE®から日本人医師が執筆した英語論文の情報を抽出し、データベース化しています。
これらのデータベースをCRMと連携させることで、以下のような活用が可能になります。
1.担当医師の学会発表情報をタイムリーに把握し、関連情報を提供
担当医師の学会発表が抜け漏れなくタイムリーに通知されるため、医師とのコミュニケーションの質を向上させる効果が期待できます。
2.論文発表情報をもとに、研究テーマに沿った情報を提供
担当医師の論文発表も通知されるので、医師の専門分野に関する情報提供の助けになります。
3.医師間の共同研究や人間関係の可視化
CRMの機能であるネットワーク図を活用することで、担当医の人間関係も可視化できます。未処方医に対して、つながりのある医師を経由してアプローチするなど、人脈を活用した関係づくりもしやすくなるでしょう。
これからのMR活動にはデータの活用が不可欠に
面談回数が減っていくにもかかわらず、より質の高い、なおかつスピード感のあるディテーリングが求められるようになるのがこれからのMR活動です。しっかりと成果を上げるためには、医師のニーズをくみ取り、個別最適化した質の高い情報を提供する必要があります。
一方で、MRが個人で大量の情報を収集・分析するには、膨大な時間がかかってしまうのも事実です。うまく外部データやCRMツールを活用し、データ収集にかける時間を削減しながらも、質の高い情報提供を行っていく必要があるといえます。
これからの製薬企業にとっては、MR全体の情報提供の質を平準化するとともに、ディテーリング活動のレベルを底上げする手段として、CRMツールと連携してのデータベース活用が選択肢となるのではないでしょうか。