共感を集めるオンラインミーティングとは?心理セラピーから学ぶコミュニケーションのポイントを解説

長引くコロナ禍により、テレワークやオンラインコミュニケーションが一気に加速しました。製薬企業のマーケティング担当者にとっては、WEBディテーリングやオンラインセミナーなど、発信するメッセージに共感してもらう必要のあるオンラインコミュニケーションの機会が生じています。
今回は、コロナ前からいち早くオンライン化が検討されてきた心理セラピー分野から、共感を集めるオンラインコミュニケーションのコツをご紹介します。

オンラインでは対面に比べて共感が阻害される

対面と比較した非対面コミュニケーションの問題として「共感」が阻害されることが心理学の研究で指摘されています。遠隔ミーティングやテレワークにおいて従来と同レベルの共感を維持するためには、画面越しの相手とのコミュニケーションに工夫が必要です。

オンラインセラピーの知見

心理セラピーの分野では、比較的早くから非対面コミュニケーションツールの活用が検討されてきました。

対面のコミュニケーションが極めて重要と思われる分野ですが、クライアントに合ったセラピストは代替が効くものではないことや、定期的にセラピーを行うためには時間的、空間的制約を乗り越えることが重要であり、オンラインセラピーの可能性が期待されていたためです。

心理セラピーでは信頼関係を土台とし、セラピストからクライアントへ共感を伝える「共感コミュニケーション」を行います。オンラインセラピーでも共感を上手く醸成し、上手くコミュニケーションする方法について検討され、知見が積み上げられました。

共感コミュニケーションの概念枠組み

Grondinらは関連文献をまとめてオンライン・セラピーにおける共感コミュニケーションの概念枠組みを提案しました。この概念枠組みでは、クライアントとセラピストの間での共感の醸成プロセスを「オンライン共感の相互作用サイクル」として説明しています。

「オンライン共感の相互作用サイクル」では、共感は以下の1~4を繰り返すことで醸成されます。

  1. 相手が発言やアクションを行う
  2. こちらが共感する
  3. 言葉や行為で共感を伝える
  4. 3の言葉や行為が共感を示すものとして相手が認識する

この共感のコミュニケーション方法に関する知見は一般的な社内外のマーケティング・コミュニケーション場面に応用可能です。

共感を生み出すオンラインミーティングやセミナー

オンラインのやりとりでは対面のコミュニケーションに比べ、相手の距離感や姿勢などの非言語情報が少なく、情報が限られます。共感の伝達や認識をスムーズに行い、「オンライン共感の相互作用サイクル」を回すためには具体的にどのような工夫が考えられるのでしょうか。
マーケティング調査などを行うUCI Lab.が2020年4月から6月に行った調査報告書では、以下で取り上げる方法が紹介されています。

協働作業で一体感を生み出す

共感を生み出すポイントは「一体感を醸成する」ことです。
UCI Lab.ではマーケティング調査の対面インタビューを行う際、被験者との間に用紙を置いて、被験者の発言をインタビュアーが書き込み可視化するワークを行うそうです。

今回のワークでは被験者の方に入力していただくのではなく、インタビュアーが入力するという方法を取りました。本来は被験者に入力してもらう方が手っ取り早いのですが、あえて協働作業という方法をとることにより、インタビュアーとして「きちんとあなた(被験者)の発言を聞いています」ということを伝えることができました。

引用:オンラインインタビュー調査の可能性(第2回)/UCI Lab.
https://note.com/ucilab/n/n2c86a151952b

これは先に紹介した「オンライン共感の相互作用サイクル」の1~4を回している状態です。あえて聞き手が書き込んでいるところを見せることで、聞き手が受け取っていることを話し手に受け取ってもらい、共感を生み出しています。
オンラインミーティングやセミナーにおいても、白紙のシートを画面共有し、参加者のアクションや発言を発表者が書き込むワークを行うなど、協働作業をすることで一体感と共感を生み出せるでしょう。

事前にものを送って共有する

もうひとつの方法として、「同じ物や状況を共有する」ことも強い共感を生み出します。
オンラインでは場所を共有できませんが、事前に何かしらのツールを送って同じものについて見せあったり、話し合ったりすることで一体感と共感が生まれます。

使い勝手や改善点のヒアリングをする時、被験者の方が「ここの部分が使いにくい」とおっしゃる度に、私も手元にある商品の該当箇所を指差しながら「この部分ですね?」と確認するようにしました。
すると、ただ発言を聞いているだけよりも同じものを持っていると言うことで、画面越しではありますが状況を共有している空気が作れたように感じました。

引用:オンラインインタビュー調査の可能性(第2回)/UCI Lab.
https://note.com/ucilab/n/n2c86a151952b

ただ相手の発言を聞くよりも、実際に同じものを持ち、共通の対象に関して話すことで共有する情報が増え、共感を生み出しやすくなります。
オンラインミーティングやセミナーを行う際には、事前に参加者へツールを送ると効果的です。同じ物を見せ合うなど、できる限り同じ状況を作ることで共感しやすい土壌が作れます。

オンライン共感の相互作用サイクルで、対面コミュニケーションのような空間を作る

このように、オンライン共感の相互作用サイクルを回す工夫をすることで、オンライン上であっても対面コミュニケーションに劣らない共感を得ることができます。今回ご紹介したポイントをWEBディテーリングやオンラインミーティングで活用してみてはいかがでしょうか。

<参考>
・阿久津 聡, 勝村 史昭, 徳永 麻子, 後藤 恵美, 木村 誠「コロナ禍で加速したテレワーク時代の共感マネジメント― コミュニケーションモデルの提案と実践手法の検討 ―」『マーケティングジャーナル』2021 年 41 巻 1 号 p. 54-67
・Grondin, F., Lomanowska, A. M., & Jackson, P. L. (2019). Empathy in computer-mediated interactions: A conceptual framework for research and clinical practice. Clinical Psychology: Science and Practice, 26(4), 17. doi: 10.1111/cpsp.12298
・オンラインインタビュー調査の可能性(第2回)/UCI Lab.
https://note.com/ucilab/n/n2c86a151952b(最終閲覧 2021年8月16日)