製薬企業はソーシャルメディアをどう活用していくべき?各SNSの特徴をチェック

あらゆる業界の各企業がマーケティングのチャネルとしてソーシャルメディアを活用する中、製薬業界でも近年、SNSマーケティングの動きが見られるようになってきました。製薬企業がSNSマーケティングを成功させるためには、どのシーン、どのタイミングでどのSNSを活用すべきなのでしょうか。
本記事では、各SNSの特徴を比較しながら、製薬業界が活用していくべきSNSについて解説します。

製薬業界によるSNSマーケティング

2020年より猛威をふるっている新型コロナウイルスによって、またIoTなどをはじめとしたテクノロジーの推進によって、製薬企業のマーケティング手法は大きく変わってきています。
医師向け、患者向けオウンドメディアを持つ製薬企業も多くありますが、現在は他社との差別化、医師の会員獲得、患者やその家族による閲覧数の向上など、オウンドメディアの認知を広げ発展させていくために各企業がしのぎを削っています。
そんな中、新たな情報発信チャネルとして期待を寄せられているのが、ソーシャルメディアの活用です。

製薬企業はSNSで何を発信する?

製薬企業による情報発信は、規制の多い厳正な社内の審査を経て、オウンドメディア上に公開されます。そのため、オウンドメディア以外のSNSなどを用いて情報を発信することは、製薬企業にとってハードルが高いことではないでしょうか。

しかし、現在SNSアプリはTwitter、Facebook、YouTubeなどさまざまあり、発信する内容によって使い分けることができます。
たとえば中外製薬株式会社では、TwitterではニュースリリースだけでなくCM制作の舞台裏などのエンタメ情報を交えて情報発信をしながら、LINE WORKSは医師とMRのコミュニケーションツールとして活用するなど、SNSアプリによって発信する情報内容もターゲットも変えています。
また、武田薬品工業株式会社では、SNSのほかAIやWebなど幅広いツールやチャネルを活用しデジタル戦略を立案・実施する「タケダデジタルアクセラレーター」を進めています。公式SNSにはTwitterとYouTubeを用い、ニュースリリースなどの情報を公開しています。

各SNSの特徴と比較

製薬企業はどのSNSを活用していくべきなのでしょうか。各SNSの特徴と共に、製薬企業における活用方法を解説していきます。
今回取り上げるSNSは、ターゲットでもある医師も多く利用しているTwitter、Facebook、LINE、YouTube、noteの5つです。

1. Twitter

匿名性の高いSNSとして知られるTwitterは、2017年10月時点での日本国内における月間アクティブユーザー数4,500万人を誇っています。
新型コロナウイルスが世界的に感染拡大する中、Twitterが持つリアルタイム性がメリットとなり、変化の激しい社会の様子がいち早く分かるSNSとして多くのユーザーに積極的に利用されました。2020年第二四半期には日別アクティブユーザー数が全世界で1.86億人に上り、前年同期に比べてmDAU(収益化可能な1日あたりのアクティブユーザー)は34%増加しています。

多くのアクティブユーザーを持つTwitterの特徴は、匿名性の高さと拡散力と考えられます。匿名性が高いことから、企業に対するユーザーの本音を引き出すことができます。さらに、RT機能を使った拡散力の高さから、アカウントのフォロワー数以上のユーザーに情報を届けることも可能です。

Twitterは上記の特徴から、患者をはじめとした一般消費者に向けた情報発信に適していると考えられます。該当領域・疾患に関するニュースリリースやコラム、著名人をイメージキャラクターとして起用しているのであればその裏話など、医師をターゲットとした医薬品に関する情報よりも、一般消費者に対してのエンタメ寄りな情報の方が拡散されやすく、閲覧されやすいでしょう。Twitterを通じて患者向けオウンドメディア上のコンテンツを紹介し導線を引くなどの方法で、一般消費者に自社のオウンドメディア認知拡大を目指すことも可能です。

2. Facebook

実名登録を基本とするFacebookは、2,600万人の国内月間アクティブユーザーを持ちます(2017年10月時点)。リアルな友人・知人と繋がる実名制のSNSであることからか、若年層よりも30代・40代以上のユーザーの利用が目立ちます。

製薬企業がFacebookを利用する場合は、複数の個人アカウントで管理・運用できるFacebookページ(ビジネスアカウント)を作り情報を発信していく必要があります。Facebookページに掲載した情報は、年齢・地域・興味関心など細かくターゲットを設定し、広告としてターゲットのタイムラインに配信できます。

例えば日本イーライリリーでは、企業が実施している一般消費者向けの「俳句コンテスト」開催のお知らせや、季節や「今日は何の日」といったシーズナリティのある話題と領域・疾患を絡めて一般消費者に向けて情報を発信しています。

1投稿が140字までと制限のあるTwitterに対して、Facebookは短い読み物のように文章と写真/動画を組み合わせた投稿が可能です。その特徴を生かした投稿内容で、ターゲットに対して領域や疾患について知ってもらう、企業名を周知させる効果が期待できます

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3. LINE

コミュニケーションツールとして今では多くのユーザーが日常的に利用しているLINEは、国内の月間利用者8,300万人を誇ります(2017年10月時点)。世代を問わず利用率が高いという特徴を持ち、近年はポイントサービス「LINEポイント」やキャッシュレス決済「LINE Pay」、飲食店やコンビニなどで利用できるクーポンの配布など、LINEアプリを通して利用できるさまざまなサービス展開に力を注いでいます。

製薬企業がLINEを活用する方法は、大きく2つ考えられます。1つは一般消費者に向けたToCの公式アカウントの開設、もう一つは医師とのコミュニケーションツールとして活用できるLINE WORKSの利用です。

LINE公式アカウントは企業が開設できるLINEのアカウントです。アカウントの開設自体は無料ででき、友だち追加をしてくれたユーザーに対する一斉メッセージ配信など利用内容に応じて料金が発生する仕組みです。ユーザーからのメッセージに対して自動で応答できるAIチャット機能が搭載されているため、たとえばオウンドメディア上の情報をユーザーの質問に応じて引き出し、サイト内を探さずともユーザーが求める情報をLINEのトーク画面で届けることができます。
よって、患者向けのオウンドメディア名で公式アカウントを作り、ユーザーに情報提供する一つのチャネルとして活用できます。

LINE WORKSはLINEによる初の法人向けチャットアプリで、チャットツールとして社内はもちろん、社外のユーザーとも密なコミュニケーションを可能にします。この機能を活用しているのが中外製薬株式会社で、新型コロナウイルスにより思うように医師との面会ができなくなったMRの新たな対医師のコミュニケーションツールとして導入しています。メールよりも素早く、電話よりも気軽に医師とコミュニケーションが取れるツールとして有効活用されています。

4. YouTube

日本における月間利用者数が2020年9月時点で6,500万人にのぼったYouTubeは、外出自粛を機にユーザーの利用が定着したプラットフォームでもあります。YouTuberだけでなく、今では多くの芸能人たちもYouTubeでチャンネルを開設しさまざまな情報を発信しており、企業が公式チャンネルを開設する例も多く見られるようになりました。

製薬業界においても、新型コロナウイルスの影響もあってか動画を中心としたコンテンツ制作やWeb講演会の配信など、動画コンテンツの重要性が高まりつつあります。YouTubeには動画の一般公開以外にも、閲覧できるユーザーを制限できる限定公開(URLを知っているユーザーのみ視聴可能)の機能があり、これが製薬企業にとってのYouTube活用のメリットとなるでしょう。

例えば一般視聴者向けの領域・疾患解説コンテンツは一般公開しながら、Web講演会のアーカイブ配信は限定公開とし、閲覧を希望する医師の会員情報を獲得しながらアーカイブ配信URLを提供する、というようにターゲットに応じて公開範囲を定められます。ほか、限定公開で社内のMRなどに向けたe-learningコンテンツを配信するといった使い方もできます。
アカウントのアナリティクスから動画ごとの視聴状況は確認できるため、コンテンツの分析や改善などにも役立てられます。

5. note

まだまだ知名度は低いものの、昨今利用登録企業が急増しているプラットフォームが「note」です。国内の月間利用者は、2020年6月時点で6,300万を突破しています。

noteは長文テキストが投稿できるブログのような機能がメインですが、その他にもTwitterのような短文の「つぶやき」や「動画投稿」「音声投稿」「画像投稿」などの機能が用意されています。SNSのようにお気に入りユーザーをフォローすることで、自身のタイムライン上にフォローしたユーザーの投稿が表示されるようになり、気になる投稿には「スキ」のマーク(TwitterやFacebookの「いいね」のようなもの)をつける機能のほか、投稿を拡散できる「シェア」アクションも備わっています。

製薬業界ではまだnoteの活用を積極的に行っている企業は見られないものの、noteは一部の医療業界をリードする医師たちも使用するプラットフォームであるという点は知っておくべき特徴でしょう。
ブログのように長文で見解を投稿でき、お気に入りユーザー機能などで医師からの情報発信を逃さずチェックできるという点から、医師たちの間でも情報収集のためにnoteを活用する例が見られるようになっています
特に2020年以降は、新型コロナウイルス感染症に関連する情報を医師がnoteで発信する様子も散見され、医師からの情報発信の場として注目しておくべきプラットフォームと考えられます。

製薬企業であれば、情報収集などで利用する若手医師をターゲットとし、業界をリードする医師へのインタビュー記事といった、学びにつながるコンテンツを発信する場として活用するのもいいかもしれません。

ターゲット・発信内容に応じて最適なSNSを見つける

SNSを活用したマーケティングは、これからのDX時代において検討すべき手法のひとつといえるでしょう。製薬企業の持つ正確な情報を、的確に医師や患者といったターゲットに届けるためには、各SNSの特徴を知り、適切に使い分けることが重要です。 どんな情報を発信していきたいか、他社とどのような差別化を図りたいか、誰をターゲットにするのかなど、目的を定めた上で最もシーンに合うSNSを活用していきましょう。


【参考】(2021年2月5日最終閲覧)
・中外製薬、MRを中心とする約2,400名にワークスモバイルジャパンの「LINE WORKS」を導入/中外製薬
https://www.chugai-pharm.co.jp/news/detail/20200901150000_1020.html
・製薬業界におけるデジタル技術を活用したオムニチャネル型情報提供/NRI
https://www.nri.com/jp/knowledge/publication/cc/chitekishisan/lst/2017/10/04
・【2020年9月更新!】データからみるTwitterユーザー実態まとめ/echoes
https://service.aainc.co.jp/product/echoes/voices/0014
・【2020年12月最新版】SNS利用者数と各媒体の特徴まとめ/Grouth Seed
https://growthseed.jp/experts/sns/number-of-users/
・月間 6,500 万ユーザーを超えた YouTube、2020 年の国内利用実態──テレビでの利用も 2 倍に/Think with Google
https://www.thinkwithgoogle.com/intl/ja-jp/marketing-strategies/video/youtube-recap2020-2/
・「note」急成長 MAU、3カ月で3割拡大 コロナ禍で医師などの発信に注目/ITmedia NEWS
https://www.itmedia.co.jp/news/articles/2006/23/news126.html

・日本イーライリリー/Facebook
https://www.facebook.com/elilillyjapan
・中外製薬/Twitter
https://twitter.com/chugai_cc