プロモーション・コンテンツの注意点とは?2020年の炎上事例から学ぶ

商品やサービスのアピールのためにプロモーションを行ったところ、批判の声が集まり、その結果、企業が謝罪し施策が中止に追い込まれるというケースが今年も多数見られました。知名度抜群の大企業も例外ではありません。なぜ、予期せぬ炎上が起きてしまうのでしょうか。
本記事では、2020年の炎上事例の中から、特に多かった「女性軽視・蔑視」に関するものを取り上げ、原因や対策に迫ります。

 <事例1>ラブタイツキャンペーン

タイツメーカーのアツギは、2020年11月2日の「タイツの日」に合わせてツイッターを活用した「ラブタイツキャンペーン」を実施。人気イラストレーターや漫画家など25人以上とコラボし、公式ツイッターで「#ラブタイツ」とともに、オリジナルイラストを発信しました。しかし、ツイートされたイラストは同社の商品を着用した高校生、会社員、CAなどがスカートを捲りあげるなど性を彷彿させるようなものが多く、「男性目線」「女性をバカにしている」「男性に性的な目でみられるためにタイツを履いているのではない」といった不快感を示す声が多数寄せられる事態に発展しました。

同社はこの件について自社サイトで謝罪し、キャンペーンの中止を発表。関連するツイートも削除し、公式ツイッターでの新規の投稿も当面中止するとしました。謝罪文の中で「タイツのある生活シーンを想起していただきタイツとファッションを楽しんでいただきたいという企画趣旨であった」とコメントしています。しかし、女性がメインターゲットの商品であるにも関わらず、偏った視点でのシーンに照準をあてたことが炎上の原因と考えられます。

<事例2>小学5年生の個人情報を暴露します

玩具メーカーのタカラトミーは、2020年10月21日に「とある筋から入手した、某小学5年生の女の子の個人情報を暴露しちゃいますね……!誕生日:5月3日、星座:おうし座、身長:142cm、体重:34kg」といったツイートを同社公式アカウントから発信。これは、「小学5年生の女の子の個人情報を暴露する」という過激な内容を最初に投げかけて、その後に、実はリカちゃん人形のことでした、とネタばらしをする話題作りのためのツイートでした。しかし、「子供向けおもちゃメーカーが子供に対する犯罪をネタにしている」「女児への性犯罪を連想させる」「気持ち悪い」といった批判が相次ぎ、ツイートから3日後に同社は謝罪し、投稿文を削除。公式ツイッターでの新規の投稿も当面中止すると発表しました。

当時ツイッター上では、「#個人情報を勝手に暴露します」というハッシュタグがトレンド入りしており、今回の件はこれに便乗した形で行われたようです。プロモーションにおいて「世の中の話題に乗る」という手法は間違っていませんが、トレンドワードだけに目を向けて、リカちゃん人形の購入層(小さな子を持つ親世代)がメッセージをどう受け止めるか、という当然の配慮がなかったことが炎上の原因と考えられます。

<事例3>生きるために、化粧をする。

化粧品メーカーのカネボウは、2020年7月に新CMを公開。「化粧なんて何のためにするのだろう、と言う人がいる。化粧で喉は潤せないし、お腹だって満たせない。それでも、私たちは化粧をする。美しさのため?誰かのため?あなたは何のために化粧をする?」とナレーションが入り、最後に「生きるために、化粧をする。」というキャッチコピーが大きく表示されます。

同社はCMについて『人種や年齢を超えた世界中の人々が、化粧をする。その行為の中に、生きる意味を見出し、化粧と人生の関係を問い直してほしい。化粧をする理由は一人ひとりの数だけあります。また化粧をしない人もいるでしょう。「美しさ」や「誰かのため」はもちろん、それを超えた先にある、あなたにとって「化粧をする」意味とは何なのか。そんな思いを込めた新CMをオンエアします』とコメント。しかしこのCMを見た女性からは「女性たちが社会から化粧を強制されていることを知らないのか」「したい人がすればいい、生きるために必要というのはおかしい」といった否定的な意見が多数寄せられ、ツイッターでは「#kaneboの新CMに抗議します」というハッシュタグまで作られました。

世の中には「化粧をしないと面接で不利になるから」といった理由で仕方なく化粧をしている女性もいると聞きます。化粧品会社がこうした現実に目を向けずに、「生きるために、化粧をする。」と断定的で強いメッセージを発信したことが炎上の原因と考えられます。

<事例4>生理を個性ととらえる

日用品メーカーの花王は、2020年8月から生理用品ロリエのプロジェクト「kosei-ful」を実施。「生理を“個性”ととらえれば、私たちはもっと生きやすくなる」というメッセージのもと、スペシャルサイトをオープン。女性同士がお互いの生理の違いを理解し合うことで、心身ともに生きやすい社会をサポートすることを狙い、女性タレントを起用した動画広告や、花王の女性社員に対して行われた生理に関するアンケートの結果などを公開しました。しかし、同プロジェクトには「生理の苦痛は個性ではない」「個人の努力では解決しない」といった批判の声が多く集まり、炎上騒動に発展。同社は、SNSなどを通じてプロジェクトを終了したことを発表しました。

プロジェクトの趣旨である「女性同士がお互いの生理の違いを理解し合えば、もっと生きやすくなる」という考え方は決して間違ってはいないと思います。しかし、生理の症状は「個人差」であって、毎回、つらい思いをしながら生理期間を過ごしている女性もいるのが現実です。それにもかかわらず、生理をポジティブな印象を持つ「個性」ととらえようと言われたら、反発を覚えるのも無理はありません。考え方はよくても、伝え方、さらに言えば、ひとつの単語のチョイスが炎上の原因になりえます。

現代の価値観に合わせて多角的な視点でPRを制作する

上記の炎上事例の原因として、メインターゲットへの配慮が足りていない点が挙げられますが、“今の価値観に適合していない”という点も見逃せません。
現在は、ひとつの価値観を共有する時代ではなく、性別、働き方、生活様式などのあらゆる面において、個人の価値観や多様性を重視する時代になっています。企業が発信するメッセージの受け手は、多様な価値観を持った個々の人間です。それを理解せずに、「面白そう」「話題になる」「個人的に好き」「みんなもそう思うはず」「普通のことを言っているだけ」「以前も同様のことを言って問題がなかった」といった独断と偏見に基づく価値観・判断で発信してしまうのは非常にリスクが高いことです。

例えば、乳がんや子宮頸がんなどの検診受診を促すプロジェクトや記事などで「子育て世代の女性」といった表現を使用すると、「女性=結婚して子供を産む・育てる」といった古い価値観を押し付けている、と受け取られる可能性も十分に考えられます(インターネット上には「子育て世代の女性に多い子宮頸がん(乳がん)」といった記載が多数見られます)。

多くの炎上は意図せず起きています。プロモーションやコンテンツを企画・実施する際は、価値観は多様であり、多様な価値観が尊重される時代であることを忘れずに、今の価値観で多角的に検証することが大切です。

■参考
<事例1>
https://www.atsugi.co.jp/news/pdf/201103.pdf
https://vpoint.jp/column/181394.html
<事例2>
https://news.livedoor.com/article/detail/19177264/
<事例3>
https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000296.000016220.html
https://news.nifty.com/article/item/neta/12277-739281/
<事例4>
https://www.businessinsider.jp/post-218983