新型コロナウイルスの感染拡大に伴い、厚生労働省の時限的・特例的な措置により、4月13日からオンライン診療が初診でも可能となりました。これを受けてオンライン診療を取り入れる医療機関も増え、患者さんからの問い合わせも急激に増えているそうです。通院を減らし感染リスクを低減するという大きなメリットがある一方、オンラインならではの課題も見えてきました。
新型コロナウイルスでオンライン診療のニーズが高まる
これまで厚生労働省はオンライン診療に対して、禁煙外来などを除いて初診は医師との対面で行うことを原則としていました。しかし、新型コロナウイルスの急速な広がりにより、政府の規制改革推進会議などから「初診もオンライン診療を可能にすべき」との要望が相次ぎました。
これを受けて厚生労働省は、基礎疾患など患者さんの情報がわかる場合に認める方針を検討しましたが、さらなる感染拡大と終息が見えない状況を踏まえ、時限的・特例的な措置として、オンライン診療を初診から、誰に対してもすべての基礎疾患で行えるようにしました。
ただし、個々のケースでは医師の責任でオンライン診療が可能かどうか判断することとし、期間は感染がおさまるまでとしています。電話での診療や服薬指導も対象となっています。
※診断や処方が医師の責任の下で医学的に可能であると判断した範囲であれば診断や処方が可能。ただし、麻薬や向精神薬、高悪性腫瘍薬や免疫疾患抑制薬などの処方はできない。
医療現場での活用事例
実際にオンライン診療を取り入れている医療機関や、オンライン診療をサポートする企業の現在の状況・取り組みについてご紹介します。
東京都葛飾区の金町駅前脳神経内科ではオンライン診療を開始しています。ビデオチャットを利用して診察を行うことで患者さんの情報を少しでも多く確認できる環境を整え、通常の診察のようなやりとりを実現。処方箋も発行し郵送してお届けするなど、新型コロナウイルスの院内感染を予防しています。
オンライン診療アプリ「 CLINICS(クリニクス) :株式会社メドレー提供」やオンライン診療サービス「 curon(クロン) :株式会社マイシン提供」を活用して環境を整備する医療機関も増えています(前述の金町駅前脳神経内科ではcuronを採用)。マイシンによると、3月時点で昨年12月の3倍の保険適用での診療があり、4月の医療機関の問い合わせも3月を大きく上回っているそうです(朝日新聞より)。初めてオンライン診療を取り入れる医療機関が急速に増えることで運用や判断に戸惑うケースも増えることを想定し、これまでオンライン診療を活用してきた医師監修のもとユーザーガイドも策定し公開しています。
また、茨城県守谷市の総合守谷第一病院では、株式会社AGREEと協定を結び「 LEBER(リーバー) 」と呼ばれる遠隔医療相談アプリを使った遠隔医療相談事業を開始し、新型コロナウイルス感染症拡大による住民不安に対応しています。チャットボットにより定型化された自動問診を行い、患者さんに必要な市販薬の紹介、症状にあった医療機関での受診を促すとともに、不要不急の受診回避の面でも地域医療に貢献しています。
対面よりも得られる情報が少なく、ハード面でも課題が残る
急速に浸透しつつあるオンライン診療ですが、実際に患者さんに接することで気づける病状までは察知できないケースもあります。直接検温ひとつできないため、患者さんの申告をベースとした判断しか下せないという大きな問題を抱えています。
オンライン診療の現状について、金町駅前脳神経内科の内野勝行医師は次のように話します。「やはりスマートフォンが必須になるなどハード面のハードルは高齢者には高いです。ただ、その点は家族や介助者によるサポートで補えると考えています。血圧測定や聴診などができないことも課題としてありますが、自宅にある血圧計を使ったり、今後は遠隔で確認できる心電図なども出てくると思われます。酸素飽和度を測定できる機器なども購入できるので最大限活用して、なるべく見落としがないようにしていく必要があります」。
直接的な患者さんとの接触がない分、感染予防には大きな効果が期待できるオンライン診療ですが、触診などによる診断ができないのがネックであると内野医師は語ります。医療機器についても、購入したりレンタルすることで賄う必要がありますが、メーカー側の対応についても課題が多く存在する模様です。
オンライン診療は、医療の選択肢を増やし医療をより身近な存在にする
一方、このような期待も語っていただきました。「今後は、オンライン診療が医療の選択肢の大きなひとつになると思います。今まで患者さんは、どこの医療機関にかかるのかを口コミを見たり、実際に行ってみて確認せざるを得ませんでした。それが、まずはオンラインで医師と話をして、対応・人柄を確認してから対面に移行するという選択もできるようになります。さらに、オンラインで医師以外の専門家(栄養士や看護師、薬剤師など)による医療相談も可能であり、さらに患者さんが専門家を選んで会話できるようにもなります。今までのように症状が悪くなってから病院に行くケースが減り、悪くなる前に相談するという、いわゆる未病への大切なツールになることは間違いないと思います」。
現在蔓延している新型コロナウイルス対策として、オンライン診療は非常に重要な手段にはなっています。現在のオンライン診療は時限的・特例的な措置となっていますが、この期間で得られる数多くの知見を集約・分析し、新たに法令やサービスなどに取り入れることで、日本のオンライン診療は一気に普及・浸透していくと思われます。
※本記事は2020年4月24日時点の情報をもとに作成しています。
金町駅前脳神経内科
https://www.knoc.jp/
https://www.youtube.com/watch?v=fBbV_GX0tug&feature=youtu.be
総合守谷第一病院
https://www.moriya.daiichi.or.jp/
https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000032.000033619.html
株式会社メドレー
https://www.medley.jp/
株式会社MICIN
https://micin.jp
株式会社AGREE
https://www.leber11.com/