【コラム】第3回 医療に貢献するMRを育成するために、テクノロジーをどう活用するか?

これまで2回にわたり、医療に貢献するMRの育成にはどんな課題があり、そして解決のポイントは何なのか紹介してきました。最終回の今回は、解決のポイントの中でも特に不可欠な要素であるテクノロジーについて、詳しく考察します。
(ユームテクノロジージャパン株式会社 宮下雄介)

テクノロジーの活用は効果、効率、コスト削減の3つのメリットを同時に享受

今のようにテクノロジーがまだ発展していなかった時代、トレーニングにおいて、効果、効率、コスト、の3つの要素は、それぞれがトレードオフの関係になっており、全てを成立させることは難しいものでした。

例えば、学習の効果を高めるには各学習者にあわせて個別に学習コンテンツを提供することが望ましいですが、個別学習を促進すると講師の効率が大きく下がってしまいます。一方、講師にとっては全ての学習者に同一の学習コンテンツを提供した方が効率的ですが、それでは学習の効果が向上しません。
ほかの組み合わせも同様で、どちらか一方を改善しようとすると他方が改善できない、という状況に陥ってしまいます。このジレンマを解消できるのがテクノロジーです。

効果、効率、コストを同時に成立させる具体例 

前述の例の場合、テクノロジーを用いれば以下のように同時に成立させることができます。

  • 学習の効果|各学習者が、自身の状況に適した学習コンテンツ(動画など)を選択して学習できる
  • 講師の効率|複数の学習コンテンツを作成しておけば毎回自分で登壇しなくても良い

さらに、移動や宿泊コストも削減できます。これで「効果」「効率」「コスト削減」の3つのメリットを同時に享受できる状況を実現できるわけです。
例えば、MRトレーニング、特にどの製薬企業でも実施している「ロールプレイング(ロープレ)」にテクノロジーを活用すると、以下のようなメリットがあります。

  • 効果|MRは自分の好きな時に好きなだけ練習でき、パフォーマンスを上げられる 
  • 効率|マネージャーとMRが時間を合わせなくてもロープレができる
  • コスト|マネージャーの時間、移動時間、を削減できる

これからは個別学習の重要性が増していく

3つのメリットをお伝えする中で、「個別学習」というキーワードが出てまいりました。

個別学習は「アダプティブラーニング」とも言われており、これからの学習やトレーニングについて考察する際、非常に重要な考え方です。MRトレーニングにおいて特に重要である、と私は考えています。 その理由は、今、スペシャリティがより強く求められる時代に入っているためです。

スペシャリティ領域の医薬品は、より個別の患者さんの状態を理解していないと処方提案できません。個別の提案をするには、それぞれ必要な知識、必要なタイミングが異なります。そのため、MRの「個別学習」が非常に重要です。全員が同じ時に、画一的なトレーニングだけをしていては、個別の状況に応じて動けるMRを育成することは難しいのではないでしょうか。

標準学習と個別学習、同期型と非同期型で戦略を考える

標準学習と個別学習の2パターンに、同期型と非同期型の観点も加えた4つの学習シーンを想定し、さらに考察を深めます。4つの学習シーンとは、以下の通りです。

  1. 同期型×標準学習|オンラインでもオフラインでも、全員が同じ時間に同じ内容を一緒に学習する
  2. 非同期型×標準学習|同じ内容の学習を、各学習者のペースで進められる
  3. 同期型×個別学習|全員が同じ時間に学習するが、個別の状況に応じた学習をする
  4. 非同期型×個別学習|時間も内容も各学習者によって異なる、完全な個別学習

これらを全て実現するには、AIなどのテクノロジーが必要です。
例えば「③同期型×個別学習」では、全員をフォローできるトレーナーがいればテクノロジーがなくても実現できるかもしれませんが、とても非効率ですし、実質不可能といえます。ですが、個別にフォロー、フィードバックをしてくれるAIがあれば、非常に効果的な学習ができるようになります。

日々MR育成に携わっているご担当者と会話していますと、「個別学習」「アダプティブラーニング」をキーワードにして学習戦略を立てられる製薬企業が、非常に増加傾向にあります。私も「個別学習」の必要性は増していると思いますので、皆様のお考えは正しいと思っています。 ただ「個別学習」だけではなく、上記の4つの学習シーン全体を俯瞰しながら、今後の学習戦略を立てていただくと、より効果的で効率的な、医療に貢献するMRを育成できる学習環境が構築できます。

データの取得、分析、活用ができる

テクノロジーを活用する上で、もう一つの大きなメリットはデータ活用です。
学習のデータを取得すると、さまざまな分析が可能になり、分析結果から次に何をすべきか明快な回答を得ることができます。データ活用には、マクロとミクロ、2つの観点があります。

  • マクロな視点|データ全体から、組織全体の傾向やボトルネック、実績と相関のある指標などを読み取って、次の対策に活かす
  • ミクロな視点|特定の個人やチームの特性や実績に繋がっている因子を分析し、組織全体に浸透させる施策を検討する

1. マクロな視点 

どちらも必要な視点ですが、それぞれもう少し具体的に見ていきたいと思います。
まず「マクロな視点」に関しては、以下のような内容について全体の傾向やチーム(拠点や課)ごとの違いが読み取れます。

・どれくらいの時間、学習したか
・どのコンテンツを学習したか
・何回学習したか
・何回アウトプットしたか
・いつ学習したか

グローバル、日本、いずれにおいても、ロープレなどによる練習回数と実績には相関があったとの声も聞きますので、「◯回以上の練習」を学習完了条件にしている企業があります。また、学習時間が長いほどパフォーマンスが高いというわけでもありません。

これらは学習コンテンツや学習状況によっても結果が異なりますので、皆様の企業ではどの因子が実績に影響するのか、ぜひさまざまな角度からデータを分析して、結果を導き出していただきたいと思います。

2. ミクロな視点 

次に「ミクロな視点」です。まず分析する対象として、以下が例に挙げられます。

・特定のハイパフォーマー
・ハイパフォーマー群
・成績優秀なチーム

データからは、以下のような項目が読み取れます。

・何曜日に学習しているか
・何時に学習しているか
・何を学習しているか
・学習の仕方(継続的に毎日か、あるいは1日にまとめてか、など)
・(チームの場合)何か施策を打っているのか

例えば、もしあるハイパフォーマーに「毎朝9時から30分学習している」「担当領域以外のコンテンツも含め幅広く学習している」といった行動特性が見られた場合、他のMRにも同様の習慣を定着させるための施策の検討ができます。そして、もしこの学習習慣が身につき始めたMRの成績が上がってきたとしたら、さらに習慣づけの施策を強化したり、あるいはその習慣の中でもより具体的な特性を分析して、実行策を検討することも可能です。

余談ではありますが、実際にパフォーマンスの高いMRは担当領域以外のコンテンツを学習する傾向にある、と耳にしたことがあります。とすると、学習システムにアクセスした際に、幅広い領域のコンテンツを魅力的に表示させるなどの工夫も考えられるかもしれません。 このように、データ(=ファクト)からはさまざまな分析ができ、またその次に繋がる大小さまざまな施策を検討することが可能です。そして変化の激しい今の時代、正解が1つとは限りませんので、前回お伝えした「アジャイル」に試行錯誤を繰り返すことが、医療に貢献するMR育成の成功の鍵になると思います。

MRの学びが医療貢献につながる

これから求められるMR育成において今何が課題になっているのか、そして解決には何が必要か、についてこれまで3回にわたってご紹介してまいりました。

「医療」は人類のインフラとも言うべき、存続には欠かせないものであると筆者は心から思っています。そしてこの2年間で、医療への関心がますます高まり重要性は強まっていると感じています。医療について真剣に考え、そして行動できるMRの育成に、筆者も陰ながら貢献したいと強く思っております。

これまで記事を読んでくださった皆様、心より感謝申し上げます。

ユームテクノロジージャパン(株)提供の
学習プラットフォーム 「UMU」の導入事例はこちら