CRMデータ活用で進めるMR営業支援。医師とのコミュニケーション活性化への提案とは/MDMD2024Autumnレポート

CRMデータ活用で進めるMR営業支援。医師とのコミュニケーション活性化への提案とは/MDMD2024Autumnレポート

2024年4月に施行された「医師の働き方改革」の新制度を受けて、MRの活動には更なるデジタル活用、データ利活用が求められています。「Medinew Digital Marketing Day(MDMD)2024 Autumn」では、CRM(顧客関係管理)ツールのコンテンツ制作に取り組んできた株式会社ビッグエムズワイの芦野沙門氏が、MR向けコンテンツのUI/UXを高める画面設計により、医師とのコミュニケーションの活性化、面談クオリティの向上を支援するソリューションを紹介しました。

製薬企業を取り巻く環境変化への対応が求められる

「医師の働き方改革」施行後、製薬企業を取り巻く環境の変化があらわになってきています。芦野氏は、主な変化として以下の2点を挙げました。
 
①MRと医師との面談時間が減少しており、デジタル活用のさらなる推進による医師とのエンゲージメント向上が必要とされている
②オムニチャネルを意識した新たなアプローチ手法を確立するにあたり、MRが営業フェーズごとに必要情報をストレスフリーに受け取れる必要が高まっている
 
医師とのエンゲージメント向上がこれまで以上に求められる中、オムニチャネルを意識した新たなアプローチ手法を確立するにあたり、デジタルツール、データの利活用は欠かせません。芦野氏は「医師との限られた面談を最大効率化するために、データ活用がさらに推進されていくものと見られる」と考察します。
 
面談を最大効率化するためには、MR自身のシナリオ構築力を向上させることが必要です。そのためには、営業フェーズごとに必要な情報をストレスなくMRが受け取れる必要があります。

4つの営業フェーズと3つの想定される課題

MRの営業プロセスを分解してみると、4つのフェーズに分けることができます。
フェーズ①情報収集・整理
フェーズ②アポイント
フェーズ③面談準備
フェーズ④面談
 
その中で、製薬企業各社に共通して想定される課題は、以下の3つが挙げられます。
課題①データが膨大でさばききれず、推奨される行動に落とし込めない
課題②複数のシステムが乱立しており、必要情報が一元管理できず、絞り込めない
課題③必要な情報が集約・整理されておらず、ディテーリングの際に活用できない

1 まとめ
2024.9.10 (株)ビッグエムズワイ『CRMのデータ活用でMRの面談力を向上 医師とのコミュニケーションを活性化させる方法とは』資料より抜粋

上記3つの課題について、芦野氏からは、ビッグエムズワイにおけるCRMのUI改善やコンテンツ制作の事例が紹介されました。

フェーズ①情報収集・整理では集約・整理された情報でターゲティングを効率化

フェーズ①の情報収集・整理では、MRは自身の予実情報を確認しつつ、アプローチすべき医療機関や医師をターゲティングしなければなりません。しかし、MRが日々受け取る情報量は多く、ターゲティングに時間がかかり、アクションに遅れが出るのが悩みです。
 
この悩みを解決するには、ターゲットとなる医療機関や医師を最短距離で決定するために、有効な情報をひと目で分かるようにする工夫が必要です。
 
ビッグエムズワイは、CRMに情報を集約し、ストレスなく情報収集できるコンテンツを作成しています。予実情報、医師情報、ニュースなどの参考情報、製品ごとの目標金額や実績なども集約し、重点的にアクションしなければならない医師をMRが判別できるようにしています。

2 MRのデータ活用事例①情報収集・整理フェーズ(To be)
2024.9.10 (株)ビッグエムズワイ『CRMのデータ活用でMRの面談力を向上 医師とのコミュニケーションを活性化させる方法とは』資料より抜粋

フェーズ②アポイントでは最適なアプローチタイミングを選定

フェーズ②のアポイントでは、多くのMRが、ターゲット医師からより高い確度で反応を得るにはどうしたら良いのか悩んでいます。これに対しては対象医師のメール閲覧傾向を把握することが解決策となり得ます。
 
ビッグエムズワイでは、医師へ過去送信したメールの履歴などをCRMに取り込み、開封状況、内容、開封日時、クリックされたバナー情報などを集約し、アプローチに最適なタイミングや内容を予測できるようにしています。

3 MRのデータ活用②アポイントフェーズ(To be)
2024.9.10 (株)ビッグエムズワイ『CRMのデータ活用でMRの面談力を向上 医師とのコミュニケーションを活性化させる方法とは』資料より抜粋

医師のメール閲覧情報、過去メール内容を同一画面で確認できるほか、医師の情報と自身のスケジュールを連携し、スムーズなアポイント取得も可能になっています。MRの動線とアクションに合わせたUIで営業活動の効率化を支援しています。

フェーズ③面談準備ではスムーズな情報収集でより活発な面談ができるシナリオを作成

フェーズ③の面談準備の際に起こりがちなのは、対象医師に関する学会や論文情報が不足していて、面談シナリオの事前想定や会話を弾ませるための情報把握が万全にできないという問題です。アポイントを取れた医師に対しては、より深い情報収集と準備が必要であり、ビッグエムズワイでは、医師との会話をより深めるためのコンテンツを2つ提供しています。
 
1つ目が、医師同士のつながりや関係性を可視化しマッピングしたもので、2つ目が、医師や施設の情報、製品に関する学会論文情報です。どちらもMRが面談シナリオを練る上で、コミュニケーション活性化に役立つ情報です。
 
医師・施設情報では、医師名、施設名、診療科名のほか、専門領域や専門資格の閲覧、同一画面でその医師の専門領域に関する医療機関の貢献の詳細もチェック可能です。

4 MRのデータ活用③面談準備フェーズ(To be)
2024.9.10 (株)ビッグエムズワイ『CRMのデータ活用でMRの面談力を向上 医師とのコミュニケーションを活性化させる方法とは』資料より抜粋

学会論文情報では、医師本人の学会発表のデータ、所属学会のデータといった切り口で情報を確認でき、さらにミーカンパニーや医薬情報ネットといった外部企業の提供するサービスと連携してCRM上に追加情報を取り込むことも可能です。

フェーズ④面談ではグラフィカルかつパーソナライズされたスライドで面談活性化

フェーズ④の面談におけるMRの悩みは、情報提供が一方的になりがちで、医師との会話が弾まず、結果的に面談時間が短くなってしまうというものです。この悩みに、ビッグエムズワイは3つのソリューションを提案できます。
 
1つ目が、ポジショニングマップ。MRの手元のタブレットで医師へのアンケート結果をマッピングすることで、医師の考え方を直感的に把握します。これにより、医師の回答結果に基づき会話をスムーズに進めることができます。画面の行き来を抑えた、ムダの少ない操作も特徴です。

5 MRのデータ活用④面談フェーズ
2024.9.10 (株)ビッグエムズワイ『CRMのデータ活用でMRの面談力を向上 医師とのコミュニケーションを活性化させる方法とは』資料より抜粋

2つ目が、症例フォローコンテンツ。アバターの切り替え、症状や発症部位の選択などをポップアップで表示し、ユニークな画面と高い操作性で医師の興味を引き出します。MRが積極的に患者属性等のヒアリングに取り組むことも期待できます。

6 MRのデータ活用④面談フェーズ DEMO1
2024.9.10 (株)ビッグエムズワイ『CRMのデータ活用でMRの面談力を向上 医師とのコミュニケーションを活性化させる方法とは』資料より抜粋

3つ目が、医師へのアンケートコンテンツの充実。スライドを医師に見せる流れで治療方針のアンケートを取り、その結果によってその後のスライドを分岐させることにより、対象医師にパーソナライズされたシナリオ展開が可能になっています。

7 MRのデータ活用④面談フェーズ DEMO2
2024.9.10 (株)ビッグエムズワイ『CRMのデータ活用でMRの面談力を向上 医師とのコミュニケーションを活性化させる方法とは』資料より抜粋

ストレスフリーな情報収集と活用で医師とのコミュニケーションを活性化

2024年4月に施行された「医師の働き方改革」を受けて、MR活動におけるデジタルツールやデータの活用の重要性が一層高まっています。本講演では、営業フェーズごとにデータ連携とグラフィカルなUIを用いたソリューションが紹介されました。
 
MRの活動に寄り添ったストレスフリーな情報と機能の提供、生きた情報の活用は、医師との活発なコミュニケーションを生み出す鍵となる要素です。今後は、デジタルを活用したさらなる個別化と最適化が進み、MRと医師の双方にとって価値ある交流が促進されていくことになるでしょう。