ペイシェントジャーニーに添った疾患啓発(DTC)におけるデジタルマーケティングの活用-基礎編

オーファンドラッグ(希少疾病用医薬品)のウエイトが高まりつつある製薬業界の中で、ペイシェントジャーニーに添った疾患啓発(DTC)活動が注目されています。その一翼を担う、疾患啓発サイトの構築とデジタルマーケティングを駆使した運用で多くの実績をもつ株式会社メディウィルの代表取締役社長城間氏に、疾患啓発サイトに求められる役割とデジタルマーケティングの活用をお聞きしました。

デジタルソリューションをワンストップで提供するメディウィル

―メディウィルについて教えてください。

メディウィルは、2006年の創業以来、デジタルソリューションの分野で、「すべてのパートナーの心身の健康と幸せを追求し、大切な人の健康を守るお手伝いをする」ことを経営理念に掲げ、医療・ヘルスケア事業者が抱える課題を解決してきました。直近では、製薬企業、医療機器メーカーの患者向けデジタルマーケティングにも進出。ペイシェントジャーニーに添った疾患啓発(DTC)におけるデジタルマーケティングの活用として、モバイルファーストのWebサイトの企画・制作・運営、検索エンジン最適化(SEO)、デジタル広告運用、病院検索サービス、患者向け医療情報提供を組み合わせたソリューションを提供しています。

高まるオーファンドラッグ比率の中で注目を集める疾患啓発

―疾患啓発活動が注目される背景についてお教えください。

新薬開発の難易度が高まる製薬業界では、オーファンドラッグ(希少疾病用医薬品)の重要性が年々増してきています。Evaluate PharmaによるOrphan Drug 2020 Reportの調査結果によると、世界のオーファンドラッグ市場規模は、2019年13.4兆円だったのが2024年の予測では22.8兆円、年平均成長率(CAGR)は11.1%。医薬品全体の売上比率では、2019年19%が2024年予測では24%に上昇しています。

世界のオーファンドラッグ市場規模(予測)2016-2024
図1)世界のオーファンドラッグ市場規模(予測)2016-2024
出典:メディウィルHPブログ「オーファンドラッグ(希少疾病用医薬品)の価値最大化を目指した希少疾患のデジタルマーケティング活用法
医薬品全体売上の中でオーファンドラッグが占める比率
図2)医薬品全体売上の中でオーファンドラッグが占める比率
出典:メディウィルHPブログ「オーファンドラッグ(希少疾病用医薬品)の価値最大化を目指した希少疾患のデジタルマーケティング活用法
希少疾病医薬品に指定された品目一覧
図3)希少疾病医薬品に指定された品目一覧
出典:メディウィルHPブログ「オーファンドラッグ(希少疾病用医薬品)の価値最大化を目指した希少疾患のデジタルマーケティング活用法

このように、世界的に医薬品市場でオーファンドラッグのウエイトが高まり、日本でも希少疾病医薬品の指定件数が積み上がる中で、製薬企業、医療機器メーカー各社は、希少疾患分野のペイシェントジャーニー(患者が発病してから、適切な医療機関で正しい診断を受け、各方面からの支援を受けながら治療を進めていくプロセス)をサポートするという新たな課題に直面しました。このペイシェントジャーニーには、疾患に伴う苦痛だけではない、様々な苦悩があります。

武田薬品工業株式会社が2020年1月に発表した「日本における希少疾患の課題」*1というレポートでは、希少疾患患者のペイシャントジャーニーの4つのプロセスと8つの苦悩について解説されています。

プロセスの1つ目、「検査と発病」では、多くの希少疾患は、疾患そのものの認知度が低いために「希少疾患に関する知識がなく受診が遅れる」ことや「健康診断などで疾患が検出されない」という苦悩があります。
「診断」のプロセスでも、多くの希少疾患が正確な診断を得るまでに、複数の診療科を経由することになり、「専門医にたどり着くまでに長期間を要する」「正確な診断を得るまでに時間がかかる」という苦悩に遭遇します。
「治療」プロセスでは、治療薬が存在していても、日本では未承認であるために「治療の選択肢が不足している」ことや、高い専門性の要求される分野でより適切な治療を提供できる中核拠点病院の数が不足しているために「専門治療に対応した医療機関が少ない」という苦悩に直面します。
「支援」プロセスでは、疾患について社会的理解がないために、「疾患について周囲の理解が得られない」ことや、医療費助成制度の「指定難病」である疾患が一部にとどまっていることで「医療費や通院などの負担が大きい」という苦悩を乗り越えていかなくてはなりません。

「ペイシェントジャーニー」における希少疾患の患者の苦悩
図4)「ペイシェントジャーニー」における希少疾患の患者の苦悩
出典:メディウィルHPブログ「オーファンドラッグ(希少疾病用医薬品)の価値最大化を目指した希少疾患のデジタルマーケティング活用法

疾患啓発サイトに求められる役割

―疾患啓発サイトに必要な要素を教えてください。

日本製薬工業協会が公表している「メディカルアフェアーズの活動に関する基本的考え方」*2の中で、新薬の開発から流通後までコーディネートするメディカルアフェアーズの役割と責任は、「アンメットメディカルニーズ把握」「メディカルプラン作成」「エビデンスの創出」「医学・科学的情報の発信、提供」とされています。これらは、疾患啓発活動にも通じる概念といえるでしょう。

こうした疾患啓発活動の要となるのが、適切なコンテンツによる情報提供と専門医へのアクセスを確保した疾患啓発サイトです。メディウィルは、武田薬品工業の「日本における希少疾患の課題」で提起された8つの苦悩には、「疾患啓発活動」の中で、デジタルマーケティングの手法を駆使して最適解を提供することが大事だと考えています。そして、以下のような対応ができると考えます。

「希少疾患に関する知識がなく受診が遅れる」「治療の選択肢が不足している」に対しては、希少疾患に関する疾患の説明、症状に関する情報、治療方法の解説を発信します。
「健康診断などで疾患が検出されない」という課題には、疾患啓発サイト上のチェックシートの中で、疾患に関連する検査数値の参考値を提示することによって、患者の気づきを与えるきっかけを作り出します。
「専門医にたどり着くまでに長期間を要する」「専門治療に対応した医療機関が少ない」問題に対しては、専門医(相談できる医療機関)とつなげる病院検索サイトを提供し、適切な医療機関へのナビゲーションをサポートします。
「疾患について周囲の理解が得られない」には、疾患啓発サイトの内容をできるだけわかりやすいものにして、周囲の人に簡単にシェアできる機能を付加するようにします。
「医療費や通院などの負担が大きい」に対しては、医療費助成制度についてわかりやすく解説する記事や、患者自身の通院負担を和らげる体験談、医療従事者からのアドバイス記事などが効果的です。

病院検索のイメージ
図5)病院検索のイメージ
出典:メディウィルHP「事例
希少疾患の患者の苦悩に対する、デジタルマーケティング施策を活用した解決策
図6)希少疾患の患者の苦悩に対する、デジタルマーケティング施策を活用した解決策
出典:メディウィルHPブログ「オーファンドラッグ(希少疾病用医薬品)の価値最大化を目指した希少疾患のデジタルマーケティング活用法

疾患啓発サイトは「デジタル時代のペイシェントジャーニーに添った」つくりに

―疾患啓発サイトを構築する上でのポイントを教えてください。

インターネット時代において、健康・医療情報の窓口としてのインターネット検索(検索エンジン)の役割は重要です。ある調査では、健康・医療情報を探す人の75%が検索エンジンを利用すると回答しています。その中でも日本では、実質検索エンジンシェアの9割以上を、Googleが占めており、Google検索エンジンが患者さんの健康・医療情報の窓口になっているといっても過言ではありません。

こうした環境の中、医療にかかわるきっかけは「咳が止まらない」「お腹が痛い」「足の甲が痛い」などの「症状」を中心としていることが、キーワード検索データから傾向が分かっています。

さらにメディケア生命が2014年と2019年を比較した調査によると、病院・医者選びにおいて参考する情報として、「家族や知人の評判」「かかりつけ医の紹介」の比率が下がった一方、「病院のホームページ」「病院検索サイト」の比率が上昇し、インターネットで自ら情報を収集する人はますます増加している状況です。

患者が病院を選ぶ際に参考にしている情報 2014年と2019年の調査比較
図7)患者が病院を選ぶ際に参考にしている情報 2014年と2019年の調査比較

こうしたインターネット時代の患者さんの情報収集の流れ、すなわち「デジタル時代のペイシェントジャーニー」に添って、疾患啓発サイトを運営することが重要となります。

「ペイシェント・セントリシティ」につながる患者向けデジタルマーケティング

―患者向けデジタルマーケティング成功のポイントをお聞かせください。

メディウィルでは2006年創業以来、医療機関に対してデジタルマーケティングソリューションを提供することを通じて、患者さんと医療機関をいかにマッチングさせるかを模索し、さまざまなかたちで実践してきました。近年、製薬企業や医療機器メーカーへの支援が増える中で、ペイシェント・セントリシティの考え方が徐々に普及していることを感じています。業界全体が患者中心に事業活動を進めていく考え方は、メディウィルの経営理念の「大切な人の健康を守るお手伝いをする」ことに重なり、患者さんと医療機関をつなぐ価値を提供してきたことの延長にあるので、この潮流にはとても共感しています。

一方、製薬企業や医療機器メーカーの目の前の顧客は、医療従事者が中心となるため、患者さんへの施策はまだまだ十分とは言えない現状もあります。そもそもで患者向けにどのような施策を打てるのかに関して認知が進んでいないことや、紙資材が中心である業界慣習の中でデジタル施策の選択肢が提案されてこなかったことも一因だと考えられます。

患者向けデジタルマーケティング成功に向けては、まずは最新の知見を学ぶこと、適切なパートナーを見つけることが大切です。ペイシェント・セントリシティ活動をはじめ、新しい取り組みを進める場合、試行錯誤を通じて苦楽をともにするパートナーが必要です。成果を出せる「良いチーム」づくりを、パートナーも巻き込みながら行っていくことが理想だと考えています。

企業の担当者とパートナーである私たちとが一体となって同じ目的に向かい、相互の信頼関係のもと建設的に前向きに案件を進めていくことが最終局面では求められます。患者さんのために貢献できることが何なのかを追求し、常に大きな視野を持ってパートナーと中長期的に取り組んでいくことが、成功のカギを握ります。

<参考>
*1 2020年1月、武田薬品工業株式会社「日本における希少疾患の課題」(https://www.takeda.co.jp/patients/rd-support/wp/images/RD_WhitePaper.pdf
*2 2019年4月、日本製薬工業協会「メディカルアフェアーズの活動に関する基本的考え方」(http://www.jpma.or.jp/about/basis/mamsl/pdf/ma-jp_20190401.pdf

▶ペイシェントジャーニーに添った疾患啓発(DTC)におけるデジタルマーケティング活用方法を含む「実践編」は、8月23日(月)公開予定