-医薬品研究開発に新たな風を吹き込む-DXに欠かせない異業種コラボレーション

G4Aインタビューサムネイル

革新的なデジタルテクノロジーを有する企業とのコラボレーションの機会を支援・提供するバイエル薬品のオープンイノベーションプログラム「G4A Tokyo Dealmaker 2020」。異業種同士のコラボレーションがもたらす医薬品業界のデジタルトランスフォーメーションの新潮流を、バイエル薬品とプログラムの選考を経て採択されたベンチャー企業、piponの両社にお聞きしました。 

バイエル薬品のオープンイノベーションプログラム「G4A Tokyo」

バイエル薬品株式会社(以下:バイエル薬品)では、2013年にドイツ本社にてスタートしたオープンイノベーションプログラム「G4A」のローカルプログラム「G4A Tokyo」に、2016年から取り組んでいます。
第7回となった「G4A Tokyo Dealmaker 2020」では、同社の日本における研究開発(薬事)、循環器・腎領域およびオンコロジー領域に関する計4つのビジネス上の課題を提示し、革新的なデジタルテクノロジーを有するスタートアップ企業やベンチャー企業を中心に、解決策を募集しました。
そして、研究開発(薬事)の課題である「日米欧での医薬品試験方法の比較表作成自動化」「大容量パワポ資料の検索効率化」について、株式会社pipon(以下:pipon)の提案が採択されました。 

バイエル薬品:「G4A Tokyo Dealmaker 2020」は、革新的なデジタルテクノロジーを有する企業とバイエルのコラボレーションの機会を支援・提供することを目的としています。pipon社を含め応募いただいた企業からは、4つの課題に対して各々20を超えるソリューションの提案がありました。その中から、書類審査と複数回のマッチングミーティングを経て、pipon社の提案を採択することになりました。

pipon:弊社は、2019年9月に創業したベンチャー企業です。「テクノロジーで世の中を効率化する」をビジョンに掲げ、世の中の非効率を失くすため、企業のテクノロジー活用を後押ししています。「G4A Tokyo」への募集については、バイエル薬品から案内をいただきました。しかし、薬事業務については分からないことが多くありましたので、提案をするにあたって、弊社はまず薬事関連の業務内容を勉強することにしました。

バイエル薬品:募集説明会では、プログラムの概要や各チャレンジ課題の説明をしたあと、応募される各社からの個別の質問にも詳細に回答しています。大きなテーマを提示し、応募企業とのディスカッションをするようなオープンイノベーションプログラムが多い中で、「G4A Tokyo」では、弊社が実際に取り組みたい課題を具体的な形で提示するようにしてきました。他社との差別化を図り、応募される企業側にとっても取り組みやすいプログラムに進化してきたのです。今回の研究開発(薬事)では、薬事戦略の立案において、様々な情報の集約、解析などのプロセスの効率化のために、弊社が持つ従来のビジネスネットワークでは得られない、革新的なデジタルテクノロジーの導入をテーマとして、課題を提示しました。

pipon:個別の問い合わせ窓口を活用し、薬事関連の業務内容や状況の理解を深めました。医薬品の試験規格が日米欧で違うというのは、弊社にとっては新たな発見でした。

プロトタイプによってイメージを共有し、課題をクリアし協業できると確認

新たなデジタル技術の開発が成功するためには、着地点となるシステムのイメージを共有し、そこで出た課題をお互いに解決していく協業体制が組めるかどうかが鍵を握ります。「G4A Tokyo Dealmaker 2020」で、バイエル薬品では、piponのスピーディな対応を高く評価していました。

バイエル薬品:初回面談後に、簡単なプロトタイプをすぐに作成して提示されたので、こうやればできるなという確信を得ることができました。対応が早かったこと、また、ユーザーがイメージしやすい形でソリューションを説明いただけたことが pipon社をパートナーとして採択した大きな理由のひとつです。その他にも、現在の技術で可能なこと、不可能なことを明確に説明された上でこちらの要望に沿った提案であったことや、既存のツールを導入するソリューションではなくて、一緒に新しいデジタル技術を使って新たなツールを構築する姿勢が見られたことも、大きな魅力でした。

pipon:弊社は、業務委託を含めて10名程度という少数先鋭の組織です。こういうことをやりたいという課題に対して、要件定義をしてプログラムを書き、テスト・検証するというPDCAサイクルを、迅速に回せる体制ができています。

また、今回の課題である「日米欧での医薬品試験方法の比較表作成自動化」「大容量パワポ資料の検索効率化」の提案で基本となったのは「自然言語解析」という文章を解析して検索や抽出などが行える技術です。弊社では、 EC会社のデータ解析ツールの開発支援や、弁護士事務所の契約書の文章リスク判定などで、すでに自然言語解析の技術知見と開発経験があったことから、これらをベースとしてプロトタイプを作成し、課題の明確化に努めていきました。

しかし、パワーポイントの検索システムを構築する際には苦労しました。各マイクロソフト製品の特徴に合わせて、キャッチアップしながらシステム開発をする必要がありました。

バイエル薬品:複数回の面談で議論を重ねる中で、私たちが抱える課題や問題点を顕在化することができ、さらにお互いのコミュニケーションも深まり、今では信頼できるパートナーです。今後、最終的な導入に向けたセキュリティを中心とした評価検証についても、IT部門と協力して実施していく予定です。pipon:新たなシステムを開発する際に、クライアントが懸念されるのはバグや不具合の問題です。最初から完璧なシステムというのは存在しないので、入念なテストを繰り返して、ようやくリリースを迎えることになります。そこは、弊社の頑張りどころですね。

部分最適化の積み重ねが、製薬業界のDX成功の鍵

DX(デジタルトランスフォーメーション)というと、大規模なシステム構築を行い、ビジネスモデルの抜本的な改善をすることで業務の効率化やコスト削減を図るという、全体最適化のイメージがあります。しかしながら、多くの規制があり業務の機密性が高い製薬業界では、現在の業務改善による部分最適化の積み重ねがDX成功の鍵である、とバイエル薬品は考えています。

バイエル薬品:今後、どういう形のものを事業化に向けて構築していくのか、pipon社と相談しながら進めていきます。そして、今回完成したシステムや技術を、国内の薬事関連以外の業務やプロセスにも広く応用することも検討しています。また、「G4A」は、グローバルから始まったプログラムですので、海外転用可能なものは、積極的にグローバルチームにも紹介したいと思います。

pipon:今回の提案は、弊社のビジョンである「テクノロジーで世の中を効率化する」を体現したものになりました。医薬品試験方法の比較表作成の時間やパワーポイントの検索に要する時間の短縮化は、全体の規模からすると、小さな改善にとどまるのかもしれません。しかし、グローバル企業であるバイエル薬品の社員の皆さんの、一人ひとりの業務時間短縮が積み重なることで、大きな成果を生み出すと考えています。

バイエル薬品:製薬企業では、薬事規制の中で医薬品を開発して、いかに早く承認を得て患者さんに届けるかという薬事戦略の策定が重要です。その中では、弊社に限らず多くの薬事関連資料を作成する必要があります。一つ一つの業務の改善、効率化を図ることで開発のスピードを上げ、1日でも早く患者さんに新薬をお届けすることができる体制をつくるためには、DXによる業務効率化が必須になります。DXを成功させるには、pipon社のように最先端の技術を取り扱っているIT企業とのコラボレーションが欠かせません。「G4A Tokyo」をはじめとした、医薬品業界とIT企業とのコラボレーションが進めば、医薬品業界全体のDXもおのずと進むのではないかと考えています。

pipon:製薬業界には、まだまだデジタル技術で効率化できる業務があると思います。さまざまな業界で培ってきた、弊社のナレッジが応用できる分野は多いと感じています。これからも弊社は、「テクノロジーで世の中を効率化する」ことに邁進していきたいと思います。

バイエル薬品:pipon社とのコラボレーションは始まったばかりです。今後のプロジェクトの進捗については、適宜弊社のコーポレートサイト等を通じてご案内していきます。

異業種コラボレーションが開く、課題解決の扉

あらゆる産業の課題を解決するために、多くのデジタルテクノロジー企業が切磋琢磨しています。そうした中で育まれたソリューションの中には、製薬企業が抱える課題に応用できるものが多数あると思われます。オープンイノベーションプログラムで出会い、プロトタイプによるコミュニケーションで信頼関係を醸成し、課題解決に向けたプロジェクトをスタートさせたバイエル薬品とpipon。自社のリソースだけでは解決できない課題に遭遇した時に、異業種コラボレーションという選択肢を検討してみることで、新たな創造につながるかもしれません。

G4A Tokyo Dealmaker 2020:https://www.g4atokyo.jp/


<取材協力>

バイエル薬品株式会社
オープンイノベーションセンター 
デジタルイノベーションマネジャー 
遅 天華 氏

バイエル薬品株式会社
研究開発本部 薬事業務推進リード 
中島 ほづみ 氏

バイエル薬品株式会社
研究開発本部 プロセスコーディネーションマネジャー
大野 真希子 氏

株式会社pipon
代表取締役
北爪 聖也 氏