【地域医療連携の今を取材】データ連携におけるアプリでの課題解決と未来(後編)

医療機関における情報共有の手段として、アプリの活用が注目を浴びています。今回は医療関係者間コミュニケーションアプリ「Join」を利用しているチームメディカルクリニックの特別顧問、石橋敏寛先生に、これまでの情報共有手段の課題とともにアプリ利用者としての使用感をお聞きしました。アプリの活用によって、医療情報の共有をどのように行っているか、また現在の課題点もお話しいただきました。

<基本情報>
今回、「Join」の利用者としてご回答いただいた脳神経外科の石橋先生と所属するチームメディカルクリニックの情報は以下の通りです。

病院名:チームメディカルクリニック
地域:東京都港区
ご回答いただいた先生:脳神経外科 特別顧問 石橋 敏寛 先生

デジタルアプリの活用状況、情報共有面で行っている工夫について

まずは病院全体、ご担当科でのデジタルやアプリの導入はどういった面でどのくらい進んでいるか、院内情報共有での工夫や取り組みについての情報をお聞きしました。

「 ICT・ITの活用を行ってスピーディーな診療を心掛けています。たとえば、タブレット端末による問診システムの導入なども院内では活用している状況です。
また健康診断結果等の健康情報を管理できるアプリ『MySOS』を外来・健診両方に導入することで、来院者は健康診断結果やPCR検査結果、服薬履歴をスマホで確認できます。
そして、『Join』も活用しており、脳神経外科では慈恵医大と連携することで、クリニックでありながら大学病院の専門医による高度な診断を受けることができます」

Joinの導入以前に起こっていた問題

医療の現場では、患者さんに対するデータを各病院が保管・管理しています。紙・電子データといった違いがあるものの、情報共有を行う場合には以下の問題を検討しなければなりません。

  • 個人データの取り扱いにルールがない(管理方法)
  • 紙や電子カルテの規格が統一されていない
  • 患者さん自身がプライバシーを守りにくい

Joinを導入する前のチームメディカルクリニックにおいても、医師間のコミュニケーションやデータのやり取りについての課題を抱えていました。石橋先生は次のように話します。
「患者情報を含めた、医師間のコミュニケーションにおいて、最も気を使うのは患者さんの個人情報です。通常のSNSなどでは、画像情報などに個人情報が入っているものが送信される懸念がありました。院内・院外における患者情報の匿名化問題と大量の画像情報の共有が現場では困難でした」

Joinの導入を決めた理由

チームメディカルクリニックでは、このような情報共有の課題を解消するため、Joinを導入しました。石橋敏寛先生に導入を決定した具体的な理由を伺いました。

「同僚がJoinの開発に携わっていたため、どのような経緯で開発されたか、どのようなメリットがあるかは知っていました。さらに、所属する大学病院でも使用していたため、そのシステムも理解していました。以上の理由からJoinの導入を決めました」

先生ご自身が開発理由への共感があり、以下のようなJoinのメリットにも理解があったために採用の障壁が低かったといえます。

  • CTやMRIなどの医用画像を手元のスマートフォン・タブレット端末で確認できる
  • 夜間・休日・地方の病院など専門医が院内にいない場合でも、チャットやビデオ通話、医用画像でのやりとりが可能となる
  • これまで気にしていたセキュリティ性を担保できる

Joinを導入した後の変化

Joinを使用した効果と解決できたことについて、石橋先生は次のように話します。

「Joinの利用によって、リアルタイムに近い状況で医用画像のやりとりが可能になりました。連携先との情報共有が迅速かつストレスがない状況でやりとりできています。時間と労力の合理化にもなり、その恩恵は最終的には患者さんのメリットにつながると思います。匿名化した形でのクラウドを通じての情報交換は今後の医療に欠かせないツールであると考えます」

スムーズなやり取りによって、医療従事者間の時間と労力のロスが減少し、患者さんの状態に応じた最適な治療方法を選択することが可能になるといえるでしょう。

「クリニックのスタッフとのやりとりも円滑になりました。また、他の非常勤医師に画像情報を用いながら相談することが容易なため、患者さんへのメリットも大変大きいと思います。
専門外の分野である場合にもリアルタイムに情報交換が可能であり、しかも画像の質が非常に良いため、現場にいるのと同様の感覚で診断が可能です」

リアルタイムでの画像を用いた情報共有、医師間のコミュニケーションがより円滑となった点がメリットといえます。

そして、アプリで解決できなかったことと、それに対しての対処方法についてもお聞きしました。
「現状では紹介状のやりとりはできません。また、リアルタイムで画像情報を共有できますが、実際に紹介する際はデータ媒体に移して患者さんに渡す必要があります。したがって、医療情報処理上では、病院間連携としてJoinのみのやりとりでは完了しないことが現状です。今後はこの辺りの解決も必要なると思います」

情報共有アプリの課題として、現状では1つのアプリのみで完結できるものではないという点があげられます。しかし、現場の声を技術開発に活かしていくことで、今後対応していくことができるでしょう。

また、こうしたアプリを用いた医療連携への今後の取り組みもお答えいただきました。
「今後も積極的に利用します。しかしながら、このような形式の医療連携が患者さんの存在をないがしろにして、先に進んでいく懸念がある点は注意しなければならなりません。
医療の原則はヒト対ヒトのいわばウェットな関係で成立すると考えています。この中に、無機質な情報共有を、いかに不快感なく組み込むかという点が今後の課題であると思います。情報の通信速度の高速化とともに、患者さんの存在と思いが置いていかれたら、意味がありません。医師の役割としては、この患者さんとシステムの間に挟まれるインターフェースの様な役割も出てくる様に感じています」

技術の進化により、石橋先生が懸念されている事態が起きる可能性も想定されます。医師に期待される役割も時代や環境に合わせて変わっていくといえるでしょう。

最後にアプリやサービスのベンダー、法制度に期待することを伺いました。
「過剰な情報管理保護のもとに、サービスが行き届かないことは、もったいないと考えています。個々の責任において、医療機関の間の情報共有が可能なっていくと良いと思います」

実際に、データ共有手段があったとしても様々な体制や法制度が追い付いていない部分もあり、アプリ活用が本格的に普及するには時間がかかるかもしれません。しかし、デジタル技術の進展とその活用を可能にする法制度の整備が進むことで、医療現場での負担が軽減され、最終的に患者さんの視点に立った医療サービスの提供が可能になることが期待されます。

まとめ

医療業界は、医療関係者間コミュニケーションアプリの活用によるデータ連携など、新しいデジタル技術を取り入れつつある状況です。従来の診察だけでなく、医師間でデータを共有した上での診察が可能になるなど、患者さんにとっても、よりスムーズで適切な治療を受けられる可能性が高まってきています。

今回はチームメディカルクリニックの石橋敏寛先生へのインタビューを通して、実際に現場で使用しているアプリに対するメリットや課題点、そして今後に期待している点をお聞きしました。新たなデジタル技術の活用は、医療制度の整備と同時に進められることによって、患者さんにとっての厚生の最大化につながっていくといえるでしょう。