レジメン理解の基礎、用法略語を解説

海外臨床試験の論文。ただでさえ英語と学術のハードルがあるのに、試験デザインや治験薬の投与方法にまるで暗号のような見慣れない略語が記されていると、もはや読み進める気力が萎えてしまうってこと、ありませんか?
本記事では、読者を少なからず苦しめる、これらの暗号(用法略語)についていくつか解説します。

<Question>Arm Aの用法、わかりますか?

上の試験デザインを少々解説しますと、対象患者の詳細はさておき、再発・難治のX癌に対する薬剤Y+薬剤Zの併用療法群(Arm A)の有効性・安全性を、プラセボ+薬剤Zの併用療法群(Arm B)と比較している試験といった感じです。ちなみに「R」はランダム化(無作為化)のRです。

さて、このうち、薬剤Yの用法について、具体的なイメージが湧きますか? イメージできる方は、これ以降を読む必要はありません。イメージが湧かない方は、以下が参考になるのではないかと思います。

<Answer>Arm Aの用法はこうなります

Arm Aの用法(投与タイミング)を図で表現するならば、下のようになります。

薬剤Y:800mg/m2, bid, d1-14 
1回800mg/m2の薬剤Yを1日2回(bid)、投与サイクル21日間のうち第1日目から第14日目まで(d1-14)投与するということです。残りの7日間は休薬期間となります。

薬剤Z:100mg/kg, i.v., d1, q3w
1回100mg/kgの薬剤Zを投与サイクル21日間のうち第1日目に(d1)静脈投与する(i.v.)ということです。q3Wというのは、3週間に1回投与という意味で、ここから投与サイクル21日間ということがわかります。

※mg/m2は投与量を体表面積あたりで表す単位で、抗がん剤など一部の医薬品で用いられます。ちなみに、体表面積を簡単に求めることができるサイトもあるようですので参照してみてください。同じようにmg/kgは投与量を体重当たりで表す単位で、成人用の投与量を小児用に換算するときなどに用いられます。

暗号を解読しよう

臨床試験の論文に限らず、このような暗号ともいえる用法略語は他にもあります。いくつかに分類して、下表にまとめてみました。
※必ずご自身でもご確認ください

<いつ服薬する?①>

意味略語解説
朝 M  グーテンモルゲン(ドイツ語で「おはよう」)のモルゲン(Morgen)の頭文字
T グーテンターク(ドイツ語で「こんにちは」)のターク(Tag)の頭文字
夕 A グーテンアーベント(ドイツ語で「こんばんは」)のアーベント(Abend)の頭文字
N Nacht(ドイツ語)の頭文字
※朝夕はMAと示す

<いつ服薬する?②>

意味略語解説
食前ACanti cibos(ラテン語)の頭文字
食後PCpost cibos(ラテン語)の頭文字
食間ICinter cibos(ラテン語)の頭文字
食直後stat.PCstatim post cibos(ラテン語)の頭文字
就寝前HShora somni(ラテン語)の頭文字

<何回服薬する?>

意味略語解説
1日1回SIDsemel in die(ラテン語)の頭文字(QDとも)
1日2回BIDbis in die(ラテン語)の頭文字
1日3回TIDter in die(ラテン語)の頭文字
1日4回QIDquater in die(ラテン語)の頭文字
毎日DDde die(ラテン語)の頭文字
~ごとQquaque(ラテン語)の頭文字、Q3Wは3週間ごと
※1日2、3回ならBTID、1日3、4回ならTQIDとも示す

おそらくこの類いの略語は、探せばもっとたくさん出てくると思いますが、この辺にとどめておきましょう。

最近の、特に抗がん剤のような薬剤では、その適用範囲がどんどん細分化されているので、当該薬剤がどのような患者さんにどんなタイミングでどのように投与するのか、が重要なファクターです。
ひと昔前は、論文の「アブストラクト」と「結果」と「結論」を頭に入れて、有効性や安全性の図表さえ理解していればよかったかもしれません。でも今は、おそらく不十分でしょう。「試験デザイン」や「試験方法」、「解析手法」に至るまで精査が必要になってきたと思います。

したがって、いかに効率よく文献を読めるかが、業務の能率アップとディテーリングにおける信頼度アップにおいてとても重要だと思います。この記事が論文精査の効率アップの一助になれば幸いです。