グラフィックレコーディングとは?医療で活用する「グラレコ」手法

グラフィックレコーディングとは?医療で活用する「グラレコ」手法

「グラレコ」という言葉をご存知でしょうか。
グラレコは「グラフィックレコーディング」の略称で、アメリカで誕生した「グラフィックファシリテーション」を起源とする、視覚を利用した記録の方法です。
本記事では、グラフィックレコーディング、グラレコとは何か、グラレコのメリット・デメリットの紹介や医療現場での活用の可能性を探っていきます。

グラフィックレコーディングとグラレコ

グラフィックレコーディングとは

https://meta.wikimedia.org/wiki/Wikimedia_Summit_2019/Documentation

グラフィックレコーディングとは、会議の場での会話を聞きながら、即興で、絵と文字を使って一枚の絵にまとめる記録の方法を指します。
会議の議事録をとるように、大きなホワイトボードや模造紙に絵を用いながらレコーディングして(描いて)いきます。

グラフィックレコーディングの様子

参考:ほぼ日
グラフィックレコーディングをやってみました!

グラフィックレコーディングのルーツは、1970年代のアメリカで、システム開発時のチームビルディングのツールとして生まれたグラフィックファシリテーションです。

創始者であるグローブ・コンサルタンツ・インターナショナル社のデビッド・シベットと、ダニエル・アイスフィーノのふたりは、グラフィックファシリテーションについて、以下のように述べています。

グラフィックファシリテーションとは、ファシリテーターが大きな紙などに絵と文字を使ってイメージを描き視覚化することで、組織を導いていくための手法です。
デザイナーや建築家が、プロジェクトの共同作業や問題解決をする方法に影響を受け、コンサルタントの手法にビジュアル化を取り入れたことがきっかけになって生まれました。

引用:A Graphic Facilitation Retrospective, by David Sibbet
https://davidsibbet.com/wp-content/uploads/2016/11/GF-RetrospectiveUpdated.pdf

プロジェクト進行のためのコンサルティング手法であるグラフィックファシリテーションから、会議などで議事録を視覚的にまとめる一般的な手法へと分離・派生したのがグラフィックレコーディングです。

グラレコとは

グラフィックレコーディングは、世界中で取り入れられており、日本でも2010年代から少しずつ認知を広げています。

現在はグラレコと略され、グラフィックレコーディングからリアルタイム性を除いた、まとめ表現へと変化しています。

例えば、読んだ本や見た動画、概念などの内容を、手書きの絵と文字でまとめることもグラレコと呼ばれ、単純にコンテンツ名としても使われます。

グラレコは、長時間の対話や会議の動画を一枚絵で表現できることから、SNSなどでも共有しやすく、感覚的に情報を伝える手法として優れています。そのため、最近では、堀江貴文さんや、岡田斗司夫さん、メンタリストDaiGoさんなどのインフルエンサーが、自身のYouTubeチャンネルでグラレコを活用しています。

参考 グラフィックレコーディング 活動記録(3)2019.11-2019.12 木村あゆみ@オンライングラフィッカー✍️北海道札幌🐄

グラレコの実用性について

では、私たちの仕事の中でグラフィックレコーディングやグラレコの手法を取り入れるメリットはあるのでしょうか?メリットとデメリットを整理します。

グラレコのメリット

1.時間や関係性のまとめに有用

グラレコは、時間や空間をひとまとめに描くため、瞬間的に全体を捉えられます。関係性や構造を俯瞰できるため、複雑な展開もわかりやすくなります。要約されることで情報摂取の時間短縮にもなります。

2.新たな発見を得られる

グラレコは、厳密性の高い文字起こしとは異なり、記録者による情報の編集が行われます。
実体とは違う記録になるデメリットもありますが、編集による新たな視点を得られ、新たな発見、アイデアにつながる可能性があります。

3.共有による参加者・チームの一体感が出る

会議では、場を支配できる立場の人や、声の大きさに注目が集まりやすくなります。グラレコは立場に関係なく、発言に意味があれば描かれていきます。
一枚の絵に記すため情報の価値が対等になりやすく、結果として、参加者の意欲向上につながります。
リモートワークにより同じ空間を共有できない状況では、グラレコの共有により、一体感が生み出されるでしょう。

グラレコのデメリット

1.人により認知の優位性が異なる

人間の認知にはそれぞれ優位性があります。
ビジュアル化されたグラレコは認識しやすい人もいれば、文字だけの情報や音声の方が認識しやすいという人もいます。

2.表現に技術力が必要

絵と文字を使ってグラレコをうまく表現するためには、高度な技術が必要です。加えて、リアルタイムで情報をまとめる場合は、前提知識や瞬間的な判断なども含めて、多岐にわたる能力が求められます。
記録者の主観が多かれ少なかれ記録に介在するため、公の記録では一定のスキルが認められた人物が必要でしょう。

医療の領域でのグラレコの活用方法は?

最後に、医療の領域や場で、グラフィックレコーディングから広義のグラレコまでを含めて、どのような活用可能性があるかを見ていきましょう。

医療従事者に向けて

会議や講演会などの場で、グラフィックレコーディングを取り入れると、リアルタイムでの思わぬ発見があり、議論の深まりや促進の作用があるでしょう。会議などの場に集まりにくい昨今では、アーカイブ機能としてグラレコで情報を共有してみてもいいかもしれません。

患者やご家族に向けて

患者やご家族に向けて医療情報を伝える場において、絵と文字でビジュアル化する表現は特に効果が期待できます。
医師は職業柄、普段から文献に読み慣れて知識も多いですが、患者側にはさまざまな立場の方がいて、文字だけでなく絵を用いた視覚情報を好む場合も多いでしょう。専門的な医療情報もグラレコによって親しみやすさが生まれ、医師側と患者側の橋渡しになれるかもしれません。

まとめ

日本においてグラレコは、変化し発展している表現方法です。
メリットとデメリットを把握し、目的に合わせて取り入れてみてはいかがでしょうか。


参考
A Graphic Facilitation Retrospective, by David Sibbet
https://davidsibbet.com/wp-content/uploads/2016/11/GF-RetrospectiveUpdated.pdf

『ビジュアル・ミーティング 予想外のアイデアと成果を生む「チーム会議」術』
著 デビッド・シベット
監訳 堀公俊
訳者 株式会社トライローグ
朝日新聞出版 2013