JMDC group Data Marketing Day 2021開催レポート/これからの製薬企業に求められるデータ活用について

JDMDレポート2

「医薬品業界におけるデータドリブン・マーケティング」をテーマに2021年5月に開催したオンラインカンファレンス「JMDC group Data Marketing Day 2021」。プログラム4では、MSD(株)古川清史氏、ヤンセンファーマ(株)岩岸徹氏を迎え、「これからの製薬企業に求められるデータ活用について」をテーマにパネルディスカッションを行いました。本記事では、古川氏の講演内容をまとめます。

COVID-19下におけるプロモーション活動

2020年以降は新型コロナウイルス感染症の拡大により、MSDのプロモーション活動は、急性期・慢性期領域ともに大きな変化が生じているようです。
MWPのデータによると、緊急事態宣言解除など情勢の変化に伴い訪問規制も緩和されつつありますが、2021年2月時点で医師全体の62.5%が完全面会禁止または完全アポイント制となっています。特に急性期病院では85.9%が訪問規制ありの状態であり、対面でのプロモーション活動は厳しい状況にあります。

MSDでもディテール数が激減していると、古川氏はデータを提示し紹介しました(下図)。2020年3月よりディテール数は顕著に減少し、ほぼ0の状態が続いています。緊急事態宣言解除により回復してきたように感じますが、従来のディテール数から比べると半分以下で推移しました。

プロモーション活動が停滞の危機にある中、MSDでは、減少しているディテールをメールアクションで補ってきました。メールを使って医師へコンテンツを紹介することで、オウンドメディアへの流入が増加したり、コミュニティサイトで交流したりと、医師のアクションにつながっています。

MSDにおけるプロモーショントレンド

現在ではプロモーション活動の半数以上がリモート活動へとスイッチ。「MSDのリモート活動がスムーズであった要因の一つは、メール許諾率の高さである」と古川氏。約70%のメール許諾率は、以前からのプロモーション活動の賜物といえそうです。

プロモーション活動のリモート化にはデータ整備が必須

急速なプロモーション活動のリモート化に伴い、迅速なデータ整備が求められています。
現状のプロモーション活動の課題として、以下の2点が挙げられます。

  • プロモーション活動(特に急性期)が回復していない
  • 活動きっかけや連続性はデータ活用・分析からのサポートが必須

全体としてリモート活動は増えているものの、一方で、アプローチできていない医師やデジタルを見ない医師は一定数存在します。そのような層の医師にどのようにプロモーションしていくか、今後工夫が必要です。

データを活用した新顧客エンゲージメントモデル

MSDでは、社内・社外データを組み合わせ分析・データベース化し、「コンテンツ」「タイミング」「チャネル」「医師ネットワーク」の4つの切り口でアプローチしています。適切なアプローチで、医師のエンゲージメントの向上を図ります。

医療従事者を対象とした新顧客エンゲージモデル

「顧客ベースのデータを構築することで、医師に合わせたアプローチができる」と古川氏は話します。

製薬会社が適切にデータを活用するためには

製薬会社がデータ活用していく上で重要なことは何か。古川氏は、「活動計画の向上」と「活動アクションの向上」の2つがポイントと指摘します。

いつ医師にプロモ―ション活動すべきかといった具体的なタイミングを示し、きっかけを与えることが活動計画の向上につながります。活動アクションの向上は、限られたプロモーション活動の中で質の高いディテールを目指します。一つのアクションが終了したときに次のアクションへとつながる「連続性」を重視することで、活動アクションの向上へとつながります。
例えば、医師のデータベースから関心事を把握した上で、データから見えた適切なタイミングで医師に関連コンテンツをメールで紹介。さらなる追加情報を提供するためにアポイントを取得する、といったように連続性を生み出しながら、データを用いてプロモーション活動を展開できます。

コンテンツをタグ化する「コンテンツタギング」

オウンドメディアの内容が充実すればするほど、たくさんのデジタルコンテンツの中からどれを紹介すればよいのか、医師が興味あるテーマのコンテンツはどれなのか、といったように医師に合わせた適切なコンテンツを見分けることが難しくなります。
そこで必要となる取り組みが、コンテンツタギングです。オウンドメディア上のコンテンツを含む全てのコンテンツをキーワード化し、タグ付けします。すると、コンテンツのタグデータが収集でき、「今後はクラスター化で分析し、医師のタイプ別にマーケティング戦略を組めるようにしていきたい」と古川氏は話します。

製薬会社はどのようにデータ活用していくべきか

製薬会社の今後のデータ活用に求められることは、大きく以下の3点です。

  1. MRを含むさまざまなチャネルデータの連携
  2. 顧客のデータを速やかに取得し、分析して活用する
  3. 少ないタッチポイントデータからさまざまなデータを取得する工夫

特にデータ活用のスピード感は、顧客エンゲージメントを高めるためにも取り組むべき課題です。リアクションが早いMRが高く評価されるように、データの展開も早い方がよい印象を与えます。すべてのデータでスピードアップを図るのではなく、「情報にもジャンルがある。1日以内に返した方がよいもの、3日後でよいもの、などさまざま。全てのものに対して、データをどうするかマネージメントすることが好ましい」と古川氏。
COVID-19による訪問規制により、MRも新しい医師との人間関係構築が難しくなっています。この状況が、経験の長いMRにも顧客データベース活用を促すチャンスと考えられます。その際には元データや分析過程を説明し、MRのデータに対する信頼度や理解度を向上させることが、スピーディーかつ適切なリモート活動へとつながります。