【プロマネTips.5】 製薬企業のプロマネが知りたいマーケティング成功事例の本質は?

製薬企業のプロダクトマネージャーの皆さんは、他社のマーケティングの成功事例を知りたいのではないでしょうか。しかし、様々な成功事例を参考にしてマーケティングプランを作っても、なぜか実績を出せないこともあります。今回は、成功事例を参考にする際に大切なポイントを考えてみましょう。

プロマネがマーケティングの成功事例を知りたい背景

プロマネとのビジネスディスカッションの際、「他社での成功事例はありますか?」という質問を受けることがよくあります。プロマネは、担当製品の売上アップを会社から求められることから、その役割と責任を考えれば当然のことです。

新薬なら「上市後ただちに売上を最大化すること」が求められ、特許切れが近い製品なら「特許が切れて後発医薬品が登場するまでに売れるだけ売りきること」が求められます。競合品も多数ある場合ならシェア争いが一層激しくなりますが、その中でもしっかり売上を伸ばすことが求められます。
 
会社からのプレッシャーは、従来のマーケティングプランや手法では達成不可能と思われるような目標金額として、プロマネに課されることもあります。その場合、プロマネは売れるマーケティングの手法やデジタルツール、新たなチャネルを外部に求めるのではないでしょうか。他社のマーケティング成功事例を取り入れることは、プランを一から考えるより時間が短くて済みます。上司から承認を得る際にも、「成功事例があります」と伝えた方が、承認を得やすくなるでしょう。

他社の成功事例を転用しても結果が出ない理由

しかしながら現実には、他社の成功事例をそのまま真似したにもかかわらず、思ったような結果が出ないことが散見されます。なぜでしょうか?

他社のマーケティングの成功事例を自分のプランにも取り入れる際に見落としてはならないのは、「自社でも取り組み可能なのか、転用可能なのかをしっかり吟味する」ことです。この吟味が不十分な場合、プロマネが期待するような結果が出ないことがあります。

このような事態を防ぐためには、その成功事例がなぜ成功できたのかを徹底して分析することが必要です。

成功事例は、なぜ成功できたのか?

マーケティングの成功事例は、顧客のニーズを的確に把握し、そのニーズに対して最適な製品やサービスを提供できたために結果が出せたものです。この時、顧客が置かれている状況を正確に情報収集し、顧客のインサイトを分析し、SWOT分析から得られた自社の強みと機会を最大限に発揮するように顧客のニーズに合致させています。
その上で、自社製品が顧客に提供できる価値を分かりやすくメッセージ化し、顧客に応じて最適なチャネルやデジタルツールなどを駆使して情報提供をします。それにより顧客が自社製品を知り、興味を持ち納得することで、ようやく自社製品の購入につながります。
このように、成功事例は「その製品が成功するように設計されている」から、結果を出せるのです。

成功事例収集の前に大切なこと

成功事例を取り入れても結果を出せない場合、上記のプロセスの中の「チャネルやデジタルツール」に注目していることが多くみられます。すなわち、「何を使ったら、この製品が売れるようになるか?」が主な興味だということです。
本来、チャネルやデジタルツールは、あくまでもマーケティング上のただの手段にしかすぎません。結果が出るようにマーケティングプランを設計してはじめて、チャネルもデジタルツールもその真価を発揮します。

また、自社と他社で同じところ、違うところを明確に分析することも必要です。自社と他社、自社製品と競合品では、MR数、所長数、投入できる予算金額、治験や臨床試験の結果、パブリッシュされた論文の内容や数、ガイドラインでの採用状況、薬剤に対する医師の評価、マーケットシェアなど、使えるリソースやデータ、営業体制、評価軸などが異なっているはずです。使えるリソースが違えば、実行できる戦術も変わってきます。

成功事例は、置かれている環境の中でベストの戦略・戦術を実行したということです。
マーケティングプラン立案時に成功事例の戦略・戦術だけを真似しても、そのプランが自社製品の課題解決に適さなければ、他社では成功した事例であっても結果を出すことは難しいでしょう。逆に、結果が出ない原因・課題が明確で、それを適切に解決できれば結果は出るのです。

成功事例を横展開するならば、やり方だけを真似るのではなく、そもそもの良い結果を出せる考え方や分析の深さ、医師のインサイトを徹底して理解することなども真似る必要があります。そこまでしっかり取り組んだ上での横展開ならば、良い結果が出るかもしれません。

「失敗事例」はマーケティングのノウハウの宝庫

プロマネ経験が豊富な人ほど、マーケティングの成功事例だけでなく失敗事例もたくさん経験しています。失敗事例は、結果が出ていないので誰も参考にしようとしません。しかし、マーケティングの失敗事例を数多く学んでいる方が、以下の理由からマーケティングの成功確度を高めやすいことがあります。

  • 顧客の分析時に見落としがちなポイントに、注意深くなる
  • 施策を選定する際に、効果が期待できないものをいち早く見つけて、プランから除外できる
  • プランをスムーズに実行に移すための「現場との適切な関わり方」を心得ている

成功事例しか知らない場合、マーケティングプランが途中で頓挫しそうなときにどこを修正すればよいのかが分からず、改善の代替案が出せません。失敗事例をたくさん知っていることで、進行中のマーケティングプランを迅速かつ適切に修正し、実行し直すこともやりやすくなります
プランのリカバリーに優れているプロマネは、過去の失敗事例も分析しているのです。

効率化だけでなく、深く分析して本質を見極めよう

プロマネにとって成功事例は大変心強い武器ですが、失敗事例の分析から得られることも数多くあります。成功事例も失敗事例も次に活かせるかどうかは、どれくらい深く考え物事の本質をとらえられているかによるからです。
ロールプレイングゲームで経験値を稼いでスキルを高めていくように、マーケティングプランの質を高めていくのは、プロマネの取り組みの質と量次第だといえます。成功事例だけを集めて、マーケティングのプランニングの効率化を追い求めるのは、時に良い結果につながらないこともあるのです。