MDMD2022Springレポート/組織を変える!MRが変わる!!エビデンスに基づく人材育成

Medinewは、2022年5月にオンラインカンファレンス「Medinew Digital Marketing Day 2022 Spring」を開催。本セッションでは、モデレーターにリープ株式会社の堀貴史氏、講演者にサノフィ株式会社の中村隆尋氏と松本良正氏を迎え、講演いただきました。MR育成の変化や本社マネジメント層との連携、現場を巻き込んだ営業組織改革の事例について講演内容をまとめます。

「学ぶ組織」に必要なインストラクショナルデザイン

MR育成を行う上で、何が重要なのか。まずは教育工学理論である「インストラクショナルデザイン」についてリープの堀氏が紹介しました。

インストラクショナルデザイン5つの視点とその関係図
2022.05.26 リープ(株)「組織を変える!MRが変わる!! エビデンスに基づく人材育成」資料より抜粋

インストラクショナルデザインとは、人材育成を組織に取り入れるために戦略的な方法論、科学的な教育設計の理論のことです。「出口(学習目標)」「入口(現状)」「学びの構造化(どのようなスキルが構造化されているか)」「学習方略」「学習環境」の5つの視点で教育設計を捉え、人材のスキル育成がなされるべきだと考えられています。

本講演では、教育学習方法を用いるだけでなく、組織全体でMR育成に取り組んでいるサノフィの事例が紹介されました。

面談機会が減ったMRには、顧客攻略における二つの課題がある

講演でサノフィの中村氏と松本氏は、製薬業界での人材育成の中でもMRの情報提供スキルに関する課題と、それに対する同社内での取り組みについて事例を交えて解説しました。

MRによる医師への面談は、製薬企業にとって処方獲得のための重要なチャネルの一つです。医療機関への訪問規制によりMRと医師との面談機会が減少する今、中村氏は、MRが顧客攻略をする上での課題は大きく二つあると話します。

  • 医師とどのようにしてコンタクトをとって面談機会を獲得するか
  • 獲得した面談のチャンスを生かして医師の行動変容を起こすことができるか

講演内では、二つ目の「獲得した面談のチャンスを生かして医師の行動変容を起こすことができるか」について、医師へのディテーリングスキルをどうやって身につけるか、どのように成果に結びつけるかが解説されました。

MRによる医師へのディテーリングスキルの体得フロー

以下のディテーリングスキルの体得フローを実施することで、MRは情報提供スキルを体得します。

  1. 医師へのディテール(ディテーリング)を構造的に理解する
  2. 課題形成向上のためのスキル習得/MRのディテールを評価し課題抽出
  3. 顧客に実行し、コーチングを受ける

最適なディテールには医師の行動変容プロセスの把握が大切

ディテーリングスキル体得フローの中でベースとなるのが、「ディテールを構造的に理解する」ことです。ディテールの構造は医師の行動変容プロセスと合致しているため、医師の行動変容プロセスを理解することが、ディテールの構造理解につながります。

医師の行動変容プロセスは、医師自身が「抱えている問題に気付く」ことから始まり、「問題の解決策を模索」し「解決策を実行」します。この、医師の行動変容プロセスをMRがリードすることこそが、MRが体得すべき「問題解決型」情報提供スキルです。
具体的には、行動変容プロセスに合わせて、MRは面談を通して医師や患者が抱えている課題を把握します。そして、医師に対して解決策を提示し、実行へのネクストステップを提案することが求められます。

医師は、抱えている問題を把握しない限り行動を起こしません。よって、課題を気付かせること、つまり「課題形成」が最も重要なファクターだと中村氏は話します。
課題形成は、MRが医師との面談を通して、医師や患者のニーズなどを把握することから始まります。そして医師に問題提起をし、医師自身が「解決すべき問題」として合意することです。

リープのスキル評価サービスにより改善点と対策が明確に

MRのディテーリングスキルの評価は、前述の「課題形成」のようなディテール構造を分解した項目で実施します。リープが提供するサービス「Skill Palette®(スキルパレット)」の利用により、項目別の客観的評価ができます。ディテールの改善点、目標値が明確になり、各項目のスキルを分析することで、具体的な対策もMRに提示できます。

MRをアップデートする「SkillPalette」
2022.05.26 リープ(株)「組織を変える!MRが変わる!! エビデンスに基づく人材育成」資料より抜粋

課題形成スキルアップのための研修例

サノフィのMRを評価したところ、最もスコアが低かったのは「課題形成」の項目でした。MRの課題形成スキルを向上させていくために必要な力は、以下の三つです。

  • 疾患知識、患者のライフステージ、医師の治療方針に関する「知識力」
  • 仮説をたて情報収集し、問題を抽出する「仮説思考力」
  • 医師・患者の問題を把握し、相手に気づかせる「質問力」

これらの力を向上させるため、サノフィで実施している「個人学習&テスト」「POS研修」「mSPIN研修」についてトレーナーの松本氏が解説しました。

知識力向上のための個人学習&テスト

サノフィでは、「疾患知識」「患者のライフステージ」「医師の治療方針」に関する知識力向上のために、個人学習とテストを毎月実施しています。

知識力向上のポイントは、営業所長と協力してMR一人一人の知識が定着するまで指導することだと松本氏は話します。営業所長に各MRの学習状況をタイムリーに共有し、各MRの知識の課題を把握した上で学習指導するよう徹底しています。

仮設思考力向上のためのPOS研修

限られた情報から医師、患者さんの課題を抽出するために必要となるのが「仮説思考力」です。仮説思考力向上のための研修としては「POS研修」実施しています。POSとは「Problem Oriented System」の略で、身体的・心理的・社会的な側面を含む、患者問題に着目しながら物事を捉えて思考するシステムです。

POS研修では仮想症例を用いて患者問題を作成するワークを行います。結果、検査値や症状などの身体的側面だけでなく治療への不安や仕事への影響、家族との関係など、医療従事者から得られた情報から仮説を立てることで、MRは患者一人一人の問題を抽出できるようになります。

質問力向上のためのmSPIN研修

質問力向上のためには、「mSPIN研修」を実施。「mSPIN」とは、一般的に顧客へのヒアリングのために営業で用いられる「SPIN(Situation:状況質問、Problem:問題質問、Implications:示唆質問、Need-Payoff:解決質問)話法」を、リープがMR向けに整えた話法です。
医師との面談の際にmSPINを実践することで、医師の行動変容を促すことができます。

mSPIN研修ではディテール例をもとに、mSPINのそれぞれの質問を改善するワークを行います。ワークを通してMRから得られた良い質問例を収集し、ナレッジシェアを行うことでMRの質問力の向上を図ります。

研修後のディテール評価では課題形成スキルが向上

研修によって2020年時の評価と比べ2021年は課題形成スキルが向上した、と松本氏。さらに、ディテーリングスキルの向上により、自社製品の売上にも貢献できることが分かったと話します。

成功要因のカギとなったのは「コーチング」と「社内の協働」

さらに松本氏は、「MRへの営業所長によるコーチング」や「営業マネージャーとマーケティング部門の協働」も、MRのディテール実践力の向上などの成功要因として挙げました。

「MRへ質の高いコーチングを行うことは、現場へのスキル定着のために欠かせないもの」と中村氏。サノフィでは営業所長に向けてコーチング教育をし、コーチング力の向上を図っています。

社内協働における三つのポイント

中村氏は、「営業マネージャーとマーケティング部門の協働」におけるキーポイントとして、以下の三つを挙げました。

  • スキルギャップの合意
  • 現状課題の共通認識
  • 対策を一緒に検討し、協力して実践

一つ目の「スキルギャップの合意」とは、医師への情報提供における課題と、その要因となる不足しているスキルのすり合わせを指します。例えば「一方的な製品メッセージを伝えている」という状況におけるスキルギャップは「医師のニーズに合った情報提供ができていない」ことであるといえます。具体的な研修計画を立てる前に、各部門がスキルギャップの合意をすることで、研修・営業・マーケティングすべての部門の目線が合い、研修への協力体制を整えられます。

二つ目は「現状の課題の共通認識」を持つことです。ディテールの評価説明会に営業マネージャーやマーケティング部門も同席することで、各部門でディテーリングスキルに関しての理解が深まり、現状の課題とゴールの共通認識を図ることができます。

三つ目は「対策を一緒に検討し、協力して実践」することです。トレーニンググループが検討した現状の課題への対策を営業マネージャーとマーケティング部門に提案し、フィードバックを受け検討・合意します。ともに課題とその対策を検討することで各部門のディテーリングスキルに関する知識が深まり、医師へのディテールに使用しやすい資材を制作できるようになります。

インストラクショナルデザインを実現しMRのスキルを高める

サノフィが実施する研修は、冒頭に紹介したインストラクショナルデザインの観点に基づいていると堀氏は解説します。

インストラクショナルデザインの方法
2022.05.26 リープ(株)「組織を変える!MRが変わる!! エビデンスに基づく人材育成」資料より抜粋

例えば、評価するということは「あるべき姿」と「現状」といった出入口を分析することであり、サノフィでは、出口と入口のギャップに対する学習法略を「知識力」「仮説思考力」「質問力」として構造的に整理しているといえるでしょう。

製薬マーケティングの在り方が大きく変わる今、MRの在り方も問われています。リープが提供する学習プラットフォーム「Skill Palette®(スキルパレット)」などを用い、MRの課題抽出やスキル習得を組織全体でサポートすることで、製薬マーケティングにおけるMRの重要性をさらに高められるでしょう。