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MDMD2021レポート/目指すは「問題解決型」情報提供スキルの体得 ~スキルの可視化でデータに基づくMR育成を実現~

MDMD2021レポート/目指すは「問題解決型」情報提供スキルの体得 ~スキルの可視化でデータに基づくMR育成を実現~

「医薬品業界におけるマーケティングの新潮流・最新トレンドの展望」をテーマに2021年9月に開催したオンラインカンファレンス「Medinew Digital Marketing Day(MDMD)2021」。リープ株式会社の堀貴史氏がモデレーターを務め、サノフィ株式会社の中村隆尋氏を講演者として迎えたセッション「目指すは『問題解決型』情報提供スキルの体得 ~スキルの可視化でデータに基づくMR育成を実現~」の講演内容をまとめます。

製薬業界におけるMRを取り巻く環境の変化

コロナ禍をきっかけとした社会変化は、医療、製薬業界にも大きな影響を与えました。顧客面談の環境変化や、MR活動の多様性の増加によって、MRに求められるスキルというのも、これまでとは大きく変わってきています。

MRに求められる、一歩先に踏み込んだディテーリングスキル

ディテーリングスキル一つ取っても、過去はSOVと呼ばれた「メッセージの伝達」がメインでしたが、現在では「顧客のニーズに合わせた製品メッセージを伝える」といったように、医療パートナーにさらに踏み込んだものが期待されるようになりました。例えば、「臨床や患者さんの課題に対して、どういった解決策を提案していくか」のような、高度な提案スキルが各製薬企業のMRに求められています。

日々、MRに高度なスキルが求められることと同時に、MRの教育に用いるツールが充実してきたことも、MR教育に大きな変化をもたらした要因となっています。eラーニングやオンライン教育はもとより、DX化が進んだことによって、ディテーリング力育成に不可欠な1対1でのコーチングも、オンラインでの対応が可能となりました。
ディテーリングそのものに関しても、動画の録画、テキストデータによる可視化、AI解析もできるようになり、理解を深める一助となっています。

各製薬企業が「問題解決」ができるMRを育成するためには

「そもそも、MRが行うディテールとは何か?」という疑問に、中村氏は「顧客の考えや行動を変容させていくこと」と答えました。顧客の考えや行動を変容させていくためには、MRはその変容のプロセスを理解しておく必要があります。

顧客に行動変容を促すための第一のプロセスとして、「抱えている問題に気づくこと」が挙げられます。問題に気づくことで解決策を模索し、最終的に解決策の実行を促すことにつながります。この場合、MRには、顧客の抱える問題を掘り起こし、一緒に解決策を模索するスキルが求められます。

顧客の問題解決のためにはMRの論的思考力の育成が不可欠

顧客の問題を見つけ一緒に解決していくことで、顧客の行動変容をリードしていくためには、MRには問題を正しく認識、分析して、解決策を立案するための論的思考力が重要となります。しかし、思考力というのは、教育だけで向上させることが大変に困難な分野です。本来は、MR自身の実体験を通じて、時間をかけて鍛えていくべきスキルといえます。

サノフィでは、MRに必要な問題解決型ディテーリングスキルを体得してもらうために、「ディテールの構造的理解」を促しています。
アテンション、ニーズの把握、課題形成、解決策の提示、反応への対応、治療の提案、コミットメントというように、ディテールの流れを細かく要素分解して、「ディテールには何が必要なのか」を明確にします。 MRはディテールの要素を理解することで、「あそこが良かったから、医師は心を動かされた」といったように、ディテールの良し悪しを具体的に考えられるようになります。

医師へのディテーリングには課題形成のための仮説思考力が必要

しかし、課題を探り、解決策を模索して、行動を変容させることがディテーリングの目的ではあるものの、課題自体が心に響かないものだと、解決策を提示しても行動変容にはつながりません。課題形成する際には、一般論としての課題ではなく、「医師個人の抱える課題」として考えてもらうことが重要になります。

課題形成のためのスキル教育について、「質問力と知識、そして仮説思考力が必要だ」と中村氏は話します。医師と対話するための前提となる知識があったとしても、むやみに質問して課題を探っていくのは、非効率です。限られた機会、時間の中で、仮説を立てて、より深い課題にたどり着く力がMRに求められます。

MRのディテーリングスキル育成の実例

ディテールの要素を理解し、理想的なディテールのために必要な力を身につけた後は、実際にディテーリングを行い、評価します。

ディテールの評価手法のひとつとして、リモートでロールプレイを録画し評価する手法が挙げられます。録画したロールプレイを、リープ株式会社が用意する評価表やベンチマークと比較して、自社MRのレベルを可視化していきます。また、テキストに起こしたロールプレイをMR自身が構造化していくことは、課題を明確にし、思考力の底上げにも有効です。

MR教育に欠かせない営業所長のコーチング

MRのディテーリング力向上のためには、営業所長のコーチングも重要な要素です。サノフィでは、営業所長に向けたコーチング教育を取り入れています。営業所長、MR双方がディテーリングの課題点を共通認識として持つことで、的確なフィードバックができるようになります。

コーチング自体の課題点を探るために、MRと同行する面談前と、面談後のコーチングをそれぞれ録画して、比較評価します。従来は把握しづらかったコーチング時のコンバーセーションが明確になり、コーチングのどこが良くてどこが悪いのかが、理解しやすくなります。ここでも、リープによる評価表とベンチマークを用いることで、業界の中でのレベル感を確認できます。

MR教育を教育工学の観点から分析し設計する

セッションの最後に、今回中村氏より紹介されたサノフィのMR教育の事例について、リープの荒木恵氏より、教育工学の観点から考えられたインストラクショナルデザイン(教育設計)を用いての解説がありました。

インストラクショナルデザインでは「①出口」「②入口」「③学びの構造化」「④学習方略」「⑤学習環境」の5つの視点が考えられ、それぞれ、製薬企業のMR教育においては、以下のような内容で実施する必要があります。

インストラクショナルデザイン5つの視点とその関係図

1. 出口をまずは設計する

研修プログラム、もしくは教育を通じてMRが何をできるようにしていくのか、という出口の設定は重要です。「学習者が何ができるようになったら研修は成功か」というゴールを定めることで、研修の具体性が出てくるようになります。

2. 学習者(MR)の現状を認識する

出口が設定できたら、②入口に該当する、学習者の現状のスキルレベルの把握を行います。学習者の特徴を把握するほか、入口は、研修内容がそれに沿ったものになっているかを確認するための軸となります。

3. 入口と出口から学びを構造化し学習設計を行う

学習者の現状スキルレベル(入口)を、研修成功レベル(出口)まで高めるために、学びの道筋をつけます(③学びの構造化)。この段階で道筋の構造を考えるほか、「どのように学ばせると効果が得られるのか」という「④学習方略」を打っていき、それを支える「⑤学習環境」を構築していきます。

多くの製薬企業は、MR教育を検討する際の最初のアプローチとして、「④学習方略」や「⑤学習環境」を探しはじめます。しかし、「①出口」「②入口」の設定が不十分であると、必要なスキルがMRに身に付かなかったり、MRの現時点でのスキルレベルにそぐわなかったりと適切な教育設計が難しくなると荒木氏は指摘します。インストラクショナルデザインに則った教育方法や学習内容の検討が、MR教育の成功には欠かせません。

問題解決型MRを育成するためのフレームワーク

さらに、先述の理論を実践へと落とし込んでいくためには、研修手法や使用するシナリオ以上に、目指している姿の共通言語化が大切です。

「MRのディテーリングスキルの育成」は、多くの製薬企業が取り組んでいます。しかし、そもそも「ディテーリングとは何か」ということを定義しているケースは多くありません。
ディテーリングスキルの定義はいくつかありますが、リープでは、「患者や家族、医療者の課題を特定し、その課題解決に向けた製品やソリューションを提案して、合意を得るための対話」と定義しています。

ディテーリングの説明

MRによる問題解決型ディテーリングの構造化

問題解決型のディテーリングができるようになることが出口だとすると、「そもそも問題解決型のディテーリングとはどういう構造をしているのか」の理解が必要になります。問題解決型ディテーリングは、主に「事実・事実情報」「理由・妥当性」「主張・結論」の3軸の関係で構造化ができます。

問題解決型DTLの構造化

問題解決型ディテーリングにおける最大の難所は、課題形成の部分であるとされています。
課題形成のための力をさらに分解すると、「仮説思考」と「質問力」に分けることができます。仮説がなければ適切な質問は生まれないため、土台となる仮説思考力を鍛えることが非常に重要です。

問題解決型ディテーリングを身につけるための道筋、考え方の構造化ができても、それを身につけるのは一朝一夕ではできません。やはり、最後に必要になってくるのは、適宜評価によるMRへのフィードバックです。
インストラクショナルデザインに基づいた戦略的育成を実現するためには、MRへコーチングを行う営業所長や、MR自身が①出口と②入口のギャップを把握し、評価を行う必要があります。

リープは、教育プログラムサービス「Skill Palette(スキルパレット)」を用い、製薬・ヘルスケア企業に対し、これまで25社、80以上のプロジェクトに教育プログラムを提供してきた実績を持ちます。パフォーマンス評価や学習課題の分析、OJTコーチング・トレーニングなどの教育プログラムを設計し、MR教育の「評価・分析→教育設計→介入策の実施→成果検証」のPDCAサイクルを回しています。

MR研修のPDCAサイクル

MRの育成は、1回学んでスキルが身に付くものではなく、教育設計を構造的に分解し、適宜評価を行う必要があります。荒木氏は「組織の現状を可視化するだけでなく、各組織のチームの特性を可視化し、教育の支援ができれば」と締めくくりました。

本講演で紹介しました、リープ株式会社が提供する「スキルパレット」について、ご質問やご相談がございましたら、お気軽に以下フォームよりお問い合わせください。資料をご希望される場合には、その旨フォームにご記載ください。