MDMD2021/ペイシェントジャーニーに添った疾患啓発(DTC)におけるデジタル×リアルマーケティング活用の経験談

「医薬品業界におけるマーケティングの新潮流・最新トレンドの展望」をテーマに2021年9月に開催したオンラインカンファレンス「Medinew Digital Marketing Day 2021」。本記事では、1日目のプログラム5「ペイシェントジャーニーに添った疾患啓発(DTC)におけるデジタル×リアルマーケティング活用の経験談」について、旭化成ファーマ株式会社の大黒聡氏、株式会社メディウィル 代表取締役社長の城間波留人氏、ティーペック株式会社の椎名裕一氏による講演の内容をまとめます。

骨粗鬆症疾患啓発プロジェクト「骨検」誕生の背景

はじめに旭化成ファーマの大黒氏が、骨粗鬆症の疫学や特徴から疾患啓発プロジェクト「骨検」誕生の背景について説明をしました。

骨粗鬆症のリスクと患者に与えるインパクト

旭化成ファーマでは「骨粗鬆症による骨折を理由にやりたいことを諦める人をゼロにすること」をビジョンに掲げています。
骨粗鬆症とは骨の質や量が劣化し、骨がもろくなることで骨折しやすくなる、あるいはすでに骨折している状態のことです。
骨は女性ホルモンに大きく影響を受けており、閉経を機に女性ホルモンが減ると、それに合わせて骨密度も下がっていくことが知られています。国内の患者数は推計で1,280万人、特に女性は60代の5人に1人、70代の3人に1人、80代の2人に1人が骨粗鬆症患者1)であり、かなり身近な病気であると言えるでしょう。 骨粗鬆症の最大のリスクは、やはり骨折です。最悪の場合は寝たきりになってしまうリスクがあります。また、骨折や転倒は介護が必要になる原因の一つとして知られており、骨折にかかる医療費・介護費・家族の負担などを合わせると3兆円2-5)を超える膨大な金額になると試算しています。

患者数は増加する一方で認知度が向上しない骨粗鬆症

このようにリスクの大きな疾患であるにも関わらず、骨粗鬆症の危険性についてはあまり知られていないのが現状です。 しかし脚の付け根を骨折する人は現在日本で3分に1件の割合で発生しており、この骨折により3人に1人の割合で元通り歩けなくなるという数字が出ています。さらに4人に1人は介護が必要となり、5年間でかかる介護費用は1,540万円という試算が出ています6)。つまり骨折は患者本人だけでなく、家族も含めたQOLや経済的な負担を強いるものだと言えそうです。 インパクトの強い疾患なので、行政や自治体も対応をしており、製薬各社も治療薬を開発しています。しかし骨粗鬆症に関するさまざまな環境が整備されているにもかかわらず大腿骨近位部骨折の発生数は2012年までの20年間で約2倍に増加7)。もちろん高齢化により母数が増えていることもあるものの、比例して骨折率も高まっていることから、日本においては骨粗鬆症による骨折は増えていることが分かります。

骨粗鬆症の早期診断・治療ができていないことがボトルネックに

旭化成ファーマでは骨粗鬆症による骨折が起こるボトルネックを調べ、以下の5つに絞り込みました。今回は特に1番目のボトルネックである「骨粗鬆症の早期診断~治療開始ができていない」にフォーカスしています。

  • 骨粗鬆症の早期診断~治療開始ができていない
  • 骨粗鬆症や骨折予防に適した生活環境(住環境・日常生活)が整っていない
  • 服薬アドヒアランスが低い
  • 患者が必ずしも最適な治療を享受できていない
  • 二次骨折を防ぐための退院後の食事・運動療法が続いていない

現状では骨粗鬆症患者の多くが、症状が進行した骨折時になってようやく診断され、多くは治療が継続できず、やがて寝たきりになるリスクが高まることが知られています。
早期診断ができていない原因として、危険性の認識率が低い、「自分には関係ない」という意識、どこで検査を受ければいいか分からないといった点が挙げられています。その背景には、骨折が起こるまで気づきにくいというこの疾患の特徴があります。

また、骨折を起こした際に骨粗鬆症と診断された場合、骨折の治療は始まっても骨粗鬆症の治療が始まらない場合があることも大きな課題となっています。さらに大腿骨近位部骨折の1年後の治療率を見ると19%8)と重症な骨折の割には低く、1年間の治療継続率は38%9)と、治療が続かない人が多いこともこの疾患の特徴です。

「当然治療をしなければ状態は良くならないので、二次骨折を起こしたり、最悪の場合は寝たきりになったりと負の連鎖が起こりかねません」と大黒氏は強調します。

DXA検査受診を啓発する「骨検」

このようにさまざまな課題がある骨粗鬆症。大黒氏は「課題解決の第一歩として、まず骨粗鬆症の認知を広め、多くの方に自分の骨の健康状態を医師に調べてもらうことから着手しました」と振り返ります。

骨粗鬆症検診は自治体でも行われていますが、受診率は全国平均で5%10)と低い状況です。また、簡易検査で実施されている場合は詳しい骨の状態までは検査できません。

そこで旭化成ファーマでは、骨密度検査として最も精度の高いDXA検査を受けてもらうことを最終目的とし、このDXA検査を受けられる施設を紹介するWebサイトとコールセンターサービス「骨検」プロジェクトを始動します。

「骨検」が果たす役割とは

骨険プロジェクトにおける受診者の流れ

「骨検」のWebサイトとコールセンターは、骨粗鬆症の認知施策(マスメディアや病院内での広告、メディアでのイベントを含むPR、SNS・Web検索、Web広告など)の受け皿としての役割を持っています。
ユーザーは「骨検」WebサイトやコールセンターでDXA検査を受けられる病院を検索し、実際に検査を受ける。そして骨粗鬆症ではなかった人には「骨検」を口コミで広めてもらい、骨粗鬆症と診断された人はしっかりと治療を受けてもらうという導線になっています。

KPIとして「サイト訪問者数」と「病院検索遷移率」を設定し、最終的なKGIとして「病院検索の利用者数」を設定しています。なお、プロジェクト開始時に設定したKGIについては8月末に達成済みとのことです。

みんなが当たり前に骨の検査を受ける世の中に

今後の課題としてはユーザーの質と量を高める施策を打っていくこと、例えばデジタル広告を使って骨の健康にあまり興味のない層にもプッシュする、小冊子やパンフレット、動画広告を活用して「骨検」の認知を広めるといった施策を考えていると大黒氏は説明しました。

骨検が目指す姿

最後に大黒氏は「「骨検」ではみんなが当たり前のように骨の検査をする世の中を目指しています。骨粗鬆症の検査を受ける機会がないのであれば、毎年何月には検査を受けるべきだとBehavior Change(行動変容)を促したいですし、自分たちには関係ない、高齢者の疾患だというマインドに対しては自分たちの将来を充実させるためには早い段階からチェックが必要ということを発信することでPerception Change(意識変容)を促したいと思っています」と締めくくりました。

インターネット時代の疾患啓発をワンストップで

続いて「骨検」プロジェクトに参加しているメディウィル代表取締役社長の城間氏が、自社の疾患啓発プロジェクトについて紹介しました。
製薬・医療機器業界特有の法律やコンプライアンスを踏まえたデジタルマーケティング支援をワンストップで提供するメディウィル。「骨検」プロジェクトにおいては、WebサイトからDXA検査を受けることができる病院の検索サービスとして「いしゃまち病院検索」を提供しています。

「いしゃまち病院検索」はそれぞれの疾患にフォーカスした病院検索ソリューションです。GPSを使って簡単に近くの病院を探せるといった使いやすさはもちろんのこと、病院ホームページの閲覧や直接電話ができる機能も備えています。これらの機能を使うことで「骨検」ユーザーはスムーズにDXA検査を受診することが可能です。

インターネットの発展により、健康医療情報の75%は検索する時代と言われています。潜在患者に疾患啓発サイトで情報収集してもらい、病院検索サービスを使って、最終的には病院に連絡して受診してもらうという流れが一般的になるでしょう。

疾患啓発を通じた患者向けデジタルマーケティング

城間氏は「メディウィルではこの一連のペイシェントジャーニーに沿ったデジタルソリューションをワンストップで提供し、疾患の早期発見、そして適切な治療につなげていくことに注力しています」と締めくくりました。

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実績豊富なコンタクトセンターによる疾患啓発

最後に「骨検」プロジェクトにメディカルコンタクトセンターとして参加しているティーペックの椎名氏が、自社の特徴と製薬企業に支援できることについて講演しました。

ティーペックでは電話による健康相談をはじめとする医療関連サービス事業に携わっており、特にメディカルに特化したコンタクトセンターを長年運営しています。

同社のメディカルコンタクトセンターは臨床経験5年以上の経験豊富な看護師や保健師といった有資格者が健康相談を受けており、累計相談件数2,200万件を超える豊富な実績が特徴。また、企業や自治体だけでなく、保険会社や会員サービスなど、さまざまなマーケットに導入されている点も大きな強みです。

ティーペックの支援内容

実際にティーペックに寄せられた健康相談のうち、潜在患者からの疾患啓発対象となる相談や、治療や服薬に関する患者支援の相談が半数を占めており、同社ではこの領域での豊富な実績を武器に、製薬企業向けの疾患啓発サービスや患者サポートサービスとして提供しています。

「骨検」プロジェクトにおいては、ユーザーがサイトに記載されているティーペックのメディカルコンタクトセンターに架電することで、疾患アドバイスやDXA検査を受診可能な医療機関情報の提供を行っています。

最後に椎名氏は「患者様とダイレクトにつながり、タッチポイントを創出できることが当社の強みです。今後も患者様に『寄り添い』、次へ『つなぐ』ことに力をいれていきます」と締めくくりました。

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<参考>
1) 骨粗鬆症の予防と治療ガイドライン作成委員会 編「骨粗鬆症の予防と治療ガイドライン 2015年版」ライフサイエンス社 2015, 4, p4
2) 厚生労働省 国民医療費 統計表 (2017年度)
3) 厚生労働省「平成28年度介護保険事業状況報告(年報)」
4) 厚生労働省「国民生活基礎調査(平成28年)」※熊本県は除外
5) ミリマン・インク 「日本における骨折による介護負担とその推移‐官庁統計を用いた分析」
6) 大腿骨頸部/転子部骨折診療ガイドライン(第2版)、国立がん研究センター(2019年)
7) Orimo H, et al. Osteoporos Int. 27: 1777-1784, 2016.
8) Calcif Tissue Int. 90: 14-21, 2012.
9) The Journal of Osteoporosis Society. 5(2): 277-284, 2019.
10) The Journal of Osteoporosis Society. vol.4, No.4, 513-522.


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