JMDC group Data Marketing Day 2021開催レポート/希少疾患領域におけるSCUEL(オープンデータ)活用のご紹介

「医薬品業界におけるデータドリブン・マーケティング」をテーマに開催したオンラインカンファレンス「JMDC group Data Marketing Day 2021」。プログラム3「希少疾患領域におけるSCUEL(オープンデータ)活用のご紹介」では、ゲストスピーカーに武田薬品工業株式会社の今井幸伸氏を迎え、SCUELデータベースを提供しているミーカンパニー株式会社の前田健太郎氏が講演しました。本記事では、今井氏が言及した希少疾患領域におけるデータ活用の課題と期待と、前田氏が紹介したSCUELデータベースの活用方法をまとめます。

希少疾患領域におけるデータ活用の課題と今後への期待

武田薬品工業株式会社 レアディジーズビジネスユニットRDBUオフィス ビジネスアナリティクスヘッドの今井幸伸氏がゲストスピーカーとして、希少疾患領域におけるデータ活用の課題と今後への期待について言及しました。

希少疾患領域のデータ収集・活用の難しさ

希少疾患では、患者さんが確定診断を受けるまでに非常に長い時間がかかるといわれています。
また、日本は海外に比べて希少疾患の診断率が低いというデータがあります。患者数が不確かである希少疾患は、それ以外の疾患に比べてデータ活用の際に留意が必要なことが多く、例えば次のような業務にさまざまな苦労が生じているのが現状です。

  • 効率的・効果的な情報提供
  • 使用環境整備による医療アクセス最大化
  • 販売予測・需要予測の精緻化
  • 流通政策による在庫リスクの最小化
  • カスタマーエクスペリエンスの向上

上記で挙げた項目は、患者数が少ない疾患において利用可能なデータソースやデータ量が少なかったり、入手可能なデータ粒度に制約がかかる場合があることや拡大推計をあてはめにくいことがあり、データ同士を組み合わせたり、足りないパーツをロジック立てて推計することが必要になります。

また現在利用中のデータであっても、留意すべき点があります。例えば位置情報を例にとると、疾患によっては診断・診療できる施設が限られることがあり、患者さんの受診医療機関所在地と住まいが同じエリアにないこともあります。加えて、薬剤の特殊性や医療機関在庫、持ち帰りの利便性など様々な理由から治療機関とは離れた薬局で薬剤を受け取るケースもあります。
表面的に見えているデータをそのまま利用してしまうと思わぬGAPが発生することもあるため、データの特徴を押さえ、関連する周辺知識をもとにデータを活用することが求められます。

現状、このようなデータ収集・活用の難しさがある希少疾患領域。今井氏は、「あらゆる企業や組織が連携し、エコシステムを確立することが、希少疾患を取り巻く課題解決に重要である」と話します。

データの観点からは、データが集約・一元化されていなかったり、データとデータを埋めるパーツが見つけにくい状況があるために、活用を難しくしているなどの課題があります。
それらの解決のために一企業だけでなく、各組織・企業が得意とする分野で協力し合うことで、希少疾患患者さんやその家族のためのよりよい治療環境や支援の実現に貢献できると締めくくりました。

希少疾患領域におけるSCUEL活用

今井氏の講演を受け、本セミナーでは希少疾患領域におけるSCUELデータベースの活用について、代表取締役の前田健太郎氏が紹介しました。ミーカンパニーは医療機関・薬局・介護施設・医師に関するオープンデータを基に、SCUELデータベースを開発し企業や個人向けにサービスを提供しています。

SCUELオープンデータについて

SCUELデータベースの基となる情報は、医療機関が公開しているWEBやPDFの情報、公的機関に開示請求を行い得た情報、ネット上に存在する医療機関のニュースや医師の散在情報です。公的医療機関の情報の具体例として、下記に示すものが挙げられます。

  • コード内容別医療機関一覧や届出受理名簿
  • 医療機能情報提供制度(各都道府県が提供する医療情報ネット)
  • 在宅療養支援診療所に係る報告書
  • 保険薬局における施設基準届出状況報告書
  • 地域医療支援病院登録医療機関

紙媒体で提供される資料が多いものの、SCUELデータベースでは統一のフォーマットに取り込みデータベース化しています。

このようにオープンデータはそのままの状態では活用しづらいデータです。そこで真に使えるデータとするために、「収集」「クレンジング」「統合」「検証」の工程を定期的に繰り返すことが重要です。SCUELデータベースではそのメンテナンスを実施し、データを経年蓄積しサービスを提供しています。オープンデータは一般公開や講演会資料、医師とのコミュニケーションへの利用など幅広く扱える資料であることも、メリットといえます。

オープンデータの課題

SCUELデータベースの活用

SCUELデータベースは、オープンデータを基に医療機関・薬局・介護施設の他、医師のデータベースを統合したものです。施設のデータでは下図に示したようなものを、医師のデータであれば氏名・所属施設・経歴・専門医・専門性などをデータベース化しています。

SCUEL施設データベース

SCUELデータベースの希少疾患領域における活用シーンは、次の3つが挙げられます。

  1. CRM/suggestions
  2. 施設・医師ターゲティング
  3. コミュニケーションツール

それぞれの活用事例を前田氏が紹介しました。

1. CRM/suggestions

CRM suggestionsに活用する例として、「SCUEL NEWS」が紹介されました。

SCUEL NEWSは、医療機関や医師会、薬剤師会、自治体が発信する情報をAPIで検索できるサービスです。一般的には市民公開講座や医師のスケジュール、医療従事者同士の勉強会といった情報が配信されていますが、最近では新型コロナウイルス情報も含まれているそうです。キーワード検索が可能であったり、地域や担当ごとにニュース配信可能であったりと、利便性の高さが特徴。

希少疾患領域では、ニュース数が少なく情報収集におけるコストが高いものの、SCUEL NEWSを使えば、全国のニュースを網羅的に検索できるようになります。前田氏によると、SCUEL NEWSのCRMへの組み込みは、MRの地域活動の気づきやCRM利用率の向上に寄与している、という評価が得られているそう。

SCUEL NEWSとは

2. 施設・医師ターゲティング

医師ターゲティングは、都道府県単位や市区町村単位で特定医療費(指定難病)受給者証所持者数のデータから、活動エリアの優先度を評価します。
さらにSCUELデータベースが有する500以上の指導医・認定医資格データ、3,000名以上の難病研究班データなどを掛け合わせて、ターゲットを絞り込みます。各製薬企業が有する既存のデータベースとSCUELデータベースをマッチングさせ、新たな属性を付加したり、潜在ターゲットを抽出したりも可能です。
例えば千葉県内でパーキンソン病を診療対応している医師の抽出結果は、4名でした。抽出過程は地域の医療資源利用状況(SCR)、神経学的検査を行っている神経内科、医療機関の診療や検査体制、専門医と絞っていき、さらに難病研究班のデータを掛け合わせます。SCUELデータベースを活用することで、効率良くターゲティングが可能となります。

3. コミュニケーションツール

「データは地域医療の課題を議論する前提を揃えるのに非常に強力なツールである」と前田氏。検査から治療までの医療資源は、疾患ごとに異なります。つまり医療資源から地域の医療状況や患者の状況などを広い視野で見ることが必要です。主に治療の結果データであるレセプトデータと、先行指標として確認できるSCUELのオープンデータを行き来することが、地域医療の変化や処方の動きの予測に役立ちます。

地域医療の課題把握の例として、パーキンソン病を例に紹介しました。
パーキンソン病の推定患者数と医療証受給者数の推移をSCUELデータベースで確認すると、下図に示すような結果が得られます。全国ではパーキンソン病の医療証受給者数は増加しているのに対して、秋田県では減少しています。このデータから、医療費受給が必要な患者が少ない、難病指定医療機関が少ない、推定患者が医療につながっていないなどの推測が立てられます。
「大切なことは、考えられる仮説から地域の医療従事者と会話を重ね、地域医療に貢献するきっかけや情報をつかむこと」と前田氏は指摘します。

地域医療の現状

SCUELが目指す医療データのあり方

セミナーでは、現在開発中のサービスとして「外来勤務表データ」と「外来患者数の推測データ」についても紹介されました。高齢者数がピークを迎えるとされる2040年に向け、直近の医療提供体制と変化を比較することで、将来の医療受給の予測への活用が期待されます。

SCUELが目指していること

ミーカンパニーでは、データ活用により患者・家族・医療従事者をマッチングする世界を作るため、SCUELデータベースを開発提供しています。「SCUELデータベースが目指している姿は、特定の人だけが利用できるクローズのデータベースではなく、医療をよくしようと思う企業や個人など誰でも利用できるオープンなデータベースである。オープンデータで切り開ける医療の世界がある」と前田氏は話します。