製薬企業におけるコンテンツマーケティングの考え方 

近年、さまざまな業界でWEBを活用したコンテンツマーケティングを実施する企業が増えています。マーケティングの在り方に関してさまざまなパラダイムシフトが起こっている製薬業界でも、コンテンツマーケティングはいまや必要不可欠な要素になってきました。本記事では、コンテンツマーケティングの概要やメリット、実施にあたって把握しておきたい点について解説します。

製薬企業のマーケティング戦略でもパラダイムシフトが起こっている

製薬業界では、開発費の増加、薬価改定やジェネリック医薬品の拡大による収益の減少、プライマリケアからオンコロジー、スペシャリティ領域への成長市場の移行など、さまざまなパラダイムシフトが起こっています。それに伴い、製薬企業が業績を上げるためにマーケティング施策が担う重要性も年々高まってきました。

一方、医師はネット上で情報収集することが当たり前となり、患者さんも自身の治療法や処方薬について調べるようになりました。WEBでの情報提供は、製薬業界に限らずマーケティング戦略では今や必須となっています。

そのような状況の中、近年ではマーケティング施策として「コンテンツマーケティング」という考え方が注目されています。

コンテンツマーケティングの定義とは?

コンテンツマーケティングとは、ターゲットユーザーにとって価値のあるコンテンツを制作し、継続的に発信していくマーケティング手法です。オウンドメディア・ウェビナー・メールマガジンなどを活用したマーケティング計画を実施し、ターゲットユーザーの獲得やブランディングにつなげます。

コンテンツマーケティングが重要になった背景として、スマートフォンや電子タブレットの普及により、インターネットにおけるユーザーの自発的な検索行動の増加が挙げられます。ユーザー自身が「自分にとって必要な情報」を取捨選択しやすくなったことにより、従来のプッシュ型広告などは受け入れられづらくなりました。

そのため、企業側としてもユーザーと接点を持ち、自社を「選んでもらう」ための手段として、良質なコンテンツを作成するコンテンツマーケティングがより大切になったのです。

マーケティング戦略で活用するコンテンツの種類

コンテンツマーケティングで活用されるコンテンツには、どのようなものが挙げられるでしょうか。製薬企業でも活用されているコンテンツ例を紹介します。

  1. オウンドメディア(WEBサイト)
  2. ウェビナー
  3. メールマガジン
  4. プレスリリース
  5. SNS
  6. 動画コンテンツ

1. オウンドメディア(WEBサイト)

オウンドメディアとは、企業が保有・運営し、ユーザーに直接情報を発信しているメディアのことを指します。主に自社製品や、見込み顧客のニーズを満たすための情報発信を行なうものです。医薬品マーケティングでオウンドメディアを運営する場合、主に医薬品の製品情報・安全性情報の発信する医療従事者向けサイト、疾患情報や治療法の解説を発信する患者さん向けサイトがあります。

医療従事者向けサイトでは、自社製品の情報に限らず、日々の業務に役立つ情報や、医療制度・他職種連携などの最新トピック、スライド作成に使えるイラスト素材を掲載するなど、多くの製薬企業がコンテンツの充実を図っています。

2. ウェビナー

WEBを使って行われるセミナーを指した言葉がウェビナーです。新型コロナウイルスの感染拡大により、ますますウェビナーを行う製薬企業が増えています。ウェビナーには、「リアルタイム配信型」と「録画配信型」があります。忙しい医師にとっては、空いた時間にいつでも見ることができる録画型が人気のようです。

3. メールマガジン

定期的に配信するメールマガジンは、ターゲットユーザーが開封したくなるような情報を届けることで、オウンドメディアのコンテンツやセミナーなどへと誘導することができます。また、定期的な配信を行うことで、見込み顧客が定期的に自社の存在を思い出す機会を作ることもメリットの一つです。

4. プレスリリース

プレスリリースとは、マスコミに向けて発信する公式情報のことです。製薬企業では主に新薬の発売や臨床試験の結果をプレスリリースとして発信しており、自社の認知促進を促すコンテンツの一つです。業界誌やニュースサイトで取り上げられれば、オウンドメディアでの情報発信に比べ、より多くの人に情報を届けることができます。最近では、一般の方にも正確な情報を届けるため、プレスリリースに工夫をする製薬企業も見られるようになりました。

5. SNS

SNSを使ったコンテンツマーケティングは、製薬企業にとっても、今後の時代を見据えて積極的に導入するべき施策です。Twitterは匿名性が高く拡散力がある、Facebookは30代・40代のユーザーが多いなど、それぞれ特色があります。医師向けなのか患者さん向けなのか、また発信する情報の内容によって最適なSNSを選ぶ必要があります。

6. 動画コンテンツ

動画コンテンツは、テキストや画像だけでは伝わりにくい複雑な内容などの情報提供に適した方法です。専門性が高い内容も視覚的に理解しやすいので、医薬品のコンテンツマーケティングでもよく使われています。例えば、新薬の作用機序、手術・手技、病態や診断についてなどは、動画コンテンツが向いているといえます。

コンテンツマーケティングの3つのメリット

コンテンツマーケティングの導入は、製薬企業にとってもさまざまなメリットがあります。ここでは、3つのメリットをご紹介します。

  1. コンテンツがストック型の資産となる
  2. 顧客ロイヤリティを高められる
  3. ブランディングに繋がり競合との差別化が図れる

メリット1. コンテンツがストック型の資産となる

マーケティングのために制作したコンテンツは、キャンペーン期間が終了すれば表示されなくなるWEB広告などとは異なり、その後も残り続けます。そのため、一度コストをかけて良質なコンテンツを作成すれば、どんどんコンテンツがストックされていき、自社の資産となる点がコンテンツマーケティングの大きなメリットの一つです。

メリット2. 顧客ロイヤリティを高められる

ターゲットユーザーにとって有益で高品質なコンテンツを提供し続ければ、自社の見込み顧客のロイヤリティを高められます。顧客ロイヤリティとは、ユーザー側が自社に対し抱く「愛着」「信頼感」などのことで、購買行動のリピート率の向上などに必要な要素です。

製薬企業が作成することになるコンテンツの領域は規制が多く、専門性が求められるのが特徴となります。逆に言えば、それだけ良質なコンテンツを作成できれば顧客ロイヤリティの形成に大きく貢献するといえます。医師のロイヤリティを高められれば安心して自社製品を処方してもらえます。また、患者さんのロイヤリティを高めることで、処方された薬を安心して服用してもらえるので、アドヒアランスの向上にもつながるでしょう。

メリット3. ブランディングにつながり競合との差別化を図れる

専門性のある情報を発信し続け、業界内で自社の立ち位置を獲得できれば、オピニオン的な立ち位置をブランディングできます。製薬企業が作成するコンテンツのカテゴリ数はある程度限られており、他社との差別化にも苦労しやすいため「どのポジションを取るのか」という目標設定は非常に大切な要素です。

製薬企業におけるコンテンツマーケティングの考え方

コンテンツマーケティングでは、ユーザーにとって有益な情報を提供するために、まず「誰に」「どのような」情報を届けるのかを考えることが大切です。製薬企業がコンテンツマーケティングを実施する際には、どのようなことを考えれば良いでしょうか。

ターゲティングで情報を届けたい相手を明確にする

コンテンツマーケティングを実施する際には、ターゲットユーザー像は絞り込むほど効果的な施策を打てます。従来のターゲティング広告で行っていたような診療科、年齢、地域といった属性だけでなく、より詳細なペルソナ像を設定すると、ユーザーのニーズに応えるコンテンツを制作できるでしょう。ペルソナが「何に困っているのか」「どんなことを知りたいのか」を徹底的に考え、その情報を分かりやすくまとめたコンテンツを制作することが、成果へとつながります。

シーズナリティを意識してコンテンツを作成する

コンテンツマーケティングでは、継続的にかつ適切なタイミングで良質なコンテンツを届けることが成果につながります。そこで、コンテンツ作りの切り口として取り入れたいのがシーズナリティです。シーズナリティとは、季節に応じたマーケティング施策の実施することです。季節ごとのイベントに応じたプロモーションを行い、見込み顧客に対し、より効果的にアプローチができます。

医薬品マーケティングにおけるシーズナリティとしては「季節のイベント」以外にも医療に関連したさまざまな「●●の日」を活用した施策も検討できるでしょう。

製薬業界におけるインフルエンサーマーケティング

インフルエンサーマーケティングとは、影響力を持った有名人などを起用したプロモーション施策です。

医薬品マーケティングでは、患者さん向けのコンテンツに芸能人などを起用することがあります。医療従事者向けであれば、販売促進に影響を持った医師をKOLとして起用したコンテンツがこれにあたります。製薬業界は規制が多いので難しい面もありますが、やり方次第ではとても効果がある方法です。

製薬企業も積極的なコンテンツマーケティングを実施しよう

コンテンツマーケティングを行う際には、ターゲティングを明確に行い、顧客ロイヤリティの向上やポジショニングなどといった長期的な目標を持って臨まなければなりませんが、制作されたコンテンツは資産となって大きな成果につながります。
医薬品業界におけるさまざまな環境の変化に加え、IoT化や新型コロナウイルス感染症対策などの観点からも、製薬企業にとってもコンテンツマーケティングは今後ますます重要になるでしょう。