コロナ禍に生まれた、医療従事者に感謝を伝えるクリエイティブ6選

依然として新型コロナウイルス感染症が猛威を振るうなか、医療従事者は今なお過酷な現場の最前線で闘い続けています。そんな医療従事者の方々に感謝の気持ちを届ける取り組みが各国で行われてきました。今回は、さまざまな取り組みの中でもクリエイティブな発想を感じる6点を紹介します。

<事例1>アスリートがユニフォームを使ってエール

「#TheRealHeroes」は、全米のプロスポーツ団体による医療従事者を称えるプロジェクトです。本プロジェクトには、NFL(アメリカンフットボール)、NBA(バスケットボール)、NWSL(女子サッカー)、ATP(男子テニス)、WTA(女子テニス)など14のスポーツリーグが参加。アスリートが自分のユニフォームの名前を隠してそこに感謝の気持ちを届けたい医療従事者の名前を載せて、SNSでメッセージとともに発信するという取り組みです。いつもはエールをもらう側であり、かつ、自身も新型コロナウイルス感染症により試合の中止・延期などの多大な影響を受けたアスリートたちが、医療従事者に対して「彼(彼女)たちこそが本当のヒーローである」とメッセージを送るという斬新な企画です。テニスプレーヤーの大坂なおみ選手も参加しました。

<事例2>マスク跡は勇気の証であり美しい

パーソナル ビューティケアブランドのDoveが公開した動画です。医師や看護師などの医療従事者は、感染予防のために防護マスクやゴーグルを長時間着用します。そのため、それらを外した顔には着用の跡がくっきりと残ってしまいます。動画には、痛々しい跡が刻まれた何人もの医療従事者が登場しますが、その表情のうえに「Courage is Beautiful(勇気は、美しい)」というメッセージがあらわれます。過酷な環境で患者さんのために闘い続ける医療従事者を美化することなく生々しく伝え、その勇気ある姿こそが美しいと発信する本動画は、「あなたらしさが美しさ」を伝えることを使命とするDoveならではのクリエイティブといえます。

<事例3>感謝を伝えつつ啓発を促す

Googleも医療従事者を称える動画を公開しました。「Thank You Healthcare Workers」というタイトルの動画で、「Help save lives by staying home(家にいることで命を救う)」というメッセージを発信。医療従事者に感謝を伝えるとともに、それ以外の方には「家にいることが感染を防ぐことになり、結果として、医療従事者の負担を減らすことにもなる」と外出自粛を促します。「がんばって」や「ありがとう」といった一方通行の発信で終わるのではなく、自然なストーリーで「感謝」と「啓発」を連動させた説得力のあるクリエイティブです。

<事例4>賛否を巻き起こした拍手

医療従事者に「拍手」を通して感謝を伝える取り組み「Clap for Carers (医療・介護従事者に拍手を)」は、世界中で話題になりました。ニュースなどで住民たちが自宅の窓や玄関先やバルコニーから一斉に拍手を送る映像を見たことがある人も多いのではないでしょうか。この取り組みは英国からはじまり、アメリカや日本など国境を越え広まりました。医療従事者からは「素晴らしく感激する光景に出会った」「救急車の中からでも歓声と拍手が聞こえた」といった反響があった一方で、「拍手よりもマスクが欲しい」「拍手をもらってもこれ以上頑張るのはつらい」といった声があがるなど、賛否を巻き起こしました。世界中に広がった拡散力の強いクリエイティブだからこその結果ともいえます。

<事例5>中止ではなく、いまにふさわしい内容で実施

印刷会社の業界団体である日本印刷産業連合会のグリーンプリンティング認定事務局は、医療従事者などのエッセンシャルワーカーに感謝のポストカードを届ける「心のバトン」活動を展開しています。オリジナルのポストカード(小山薫堂氏のメッセージと小池アミイゴ氏のイラストを使用)を制作し、2020年9月から希望者に無料配布(先着1,000名)。ポストカードを入手した希望者は、お世話になっているエッセンシャルワーカーにメッセージなどを記入して渡します。同事務局は昨年まで「印刷と私」というテーマでエッセイ・作文コンテストを実施していましたが、今年は新型コロナウイルス感染感染症拡大を受けて本企画に変更しました。さまざまな活動が中止や延期となっていますが、「いまできること・いまにふさわしいこと」で柔軟に実施するのもクリエイティブといえるでしょう。

<事例6>アーティストの支援にもなる取り組み

神奈川県では音楽やダンスなどのパフォーマンスを発表できる場として県庁前の通り(日本大通り)を「マグカル開放区」として提供していますが、新型コロナウイルスの影響により会場をオンラインに移しました。「バーチャル開放区」と名付けたオンライン上の会場を使い、医療従事者をはじめとするエッセンシャルワーカーへの応援や感謝をテーマに、文化芸術オールジャンルの動画を募集する取り組みを実施。2カ月間の募集期間で244件の一般動画の応募があり、再生回数上位20作品の中から入賞4作品を決定しました。本取り組みは、発表の場が奪われているアーティストに機会を提供するとともに、文化芸術の力でエッセンシャルワーカーを応援するという目的を持っています。アーティストへの支援とエッセンシャルワーカーへの応援を組み合わせた、参加モチベーションの高まるユニークなクリエイティブといえます。

※上記動画は、コンテストで1位を受賞した作品です。

善のテーマほどネガティブチェックが大切

賛否を巻き起こした事例も取り上げましたが、テーマが「善(よいこと)」であるほど、作り手・送り手側は「自分たちはいいことをしている」「きっと相手にもよろこんでもらえるはず」といった、ひとりよがりな思考・判断になりがちです。コロナ禍において、医療従事者に感謝を伝える企画を実施することは非常に意義がある取り組みだと思いますが、このような企画ではとくに「受け手はどう思うか」という客観的な視点をつねに忘れずに、「傷つく人はいないか」「不快に思う人はいないか」といったネガティブチェックを徹底することも大切です。

■参考

<事例1>https://predge.jp/103430/
<事例2>https://predge.jp/103275/
<事例5>https://www.jfpi.or.jp/greenprinting/postcard/
<事例6>https://kaihouku.pref.kanagawa.jp/?page_id=1545