MDMD2020レポート/医師中心の情報提供活動に必要となる意思決定支援エンジン

MDMD2020レポート/医師中心の情報提供活動に必要となる意思決定支援エンジン

2020年9月、医薬品マーケティングの新時代を展望するオンラインカンファレンス「Medinew Digital Marketing Day2020」を開催。第3部「医師中心の情報提供活動に必要となる意思決定支援エンジン」のセミナー内容を紹介します。

2020年9月29日、Medinew内にて「Medinew Digital Marketing Day2020」と題し、最新の医薬品マーケティング事例やデジタルソリューションについてのオンラインカンファレンスが行われました。本記事では、第3部のAKTANA社で日本と中国で製品管理を担当する松永徹人氏による「医師中心の情報提供活動に必要となる意思決定支援エンジン」の講演内容をまとめました。コロナ禍で注目されるAKTANA社のソリューションを紹介します。

AKTANA社が提供する2大サービス

10年に渡りライフサイエンス分野のインテリジェンスに注力してきたAKTANA社。「コマーシャルエンゲージメントのモデルを再定義し、よりインテリジェンスでインパクトのある製品にする」というミッションのもと、20回以上のバージョンアップを繰り返し、充実したサービスを開発提供している会社です。日本だけでなく、アメリカ・ヨーロッパ・中国・南米・オーストラリアと世界中でAKTANA社のサービスが利用されており、250以上のブランドでの製品の支援実績を誇ります。国内ではプライマリーからスペシャリティまで75以上の製品で活用されているAKTANA社のサービスの中から、主要な「推奨とインサイト」を松永氏が紹介します。

どの医師に?どのメッセージを?いつ?どのように?なぜ?といった実施すべき活動情報をMRに提供するのが、推奨というサービスです。

たとえば、ターゲットや優先度などを考慮して、どの医師にアプローチするべきかを、個々のMRにカスタマイズして通知します。ユニークな機能として、MRが訪問予定先を入力していれば、「その近くにあるA施設のDRも訪問しては?」といった推奨も行います。

推奨機能の中で特に大切なものは、「なぜ?」であると松永氏。いくら推奨してもMRに納得してもらえなければ、行動に移してもらえないためです。推奨する理由の設定には、売上やシェアの変動、医師からWEBサイトにアクセスがあったかなどが挙げられます。

インサイトとは、コミュニケーション価値を最大化するための関連情報を通知する機能です。医師に対面やWEBでコンタクトを取る際に、属性や直近の売りなど、知っておくべき付加情報をお知らせします。これらの情報はMR自身が調べることも可能ですが、インサイトを利用することで、事前準備の時間短縮につながります。

左画面:推奨 右画面:インサイト

推奨やインサイトの機能を使うことで、オペレーションの10~20%のコスト削減や、売上3~7%増加といった効果が実際に得られているそうです。

コマーシャルエンゲージメントの次世代モデル

COVID-19により、製薬業界の情報提供活動には、下図に示すようなさまざまな影響が出ています。

訪問回数の大幅減少により、デジタルチャネルの有効活用が検討されており、内容・タイミング・コンテンツなどの改善が急務となっています。ただし「これらの課題は以前からあり、コロナ禍によって顕在化したのではないか」と松永氏。

・既存モデルであるMRによるSOV(シェアオブボイス)からの見直し
・データやエビデンスに基づいた活動
・新たなテクノロジーの活用

これらの課題を克服するためのソリューションを提案する上で、AKTANA社が重要としているのが「Contextual Intelligence」という言葉です。下図に示すように、企業や市場にはいくつものインテリジェンスが存在します。これらのインテリジェンスを有機的に結び付け、今日明日の活動につなげていくことが求められています。

特に重要な要素は、以下の6つ。

・Business Logic:何か施策を実施したい場合、目的や制約を明らかにする

・Machine Learning:自動化するためのマシーンラーニングを実装する
・Explainable AI:AIが作り出すメッセージを納得してもらうため、分かりやすく説明する
・Optimization:AIモデルからの複数の提案から、適切なものを取りだす
・Team Experience:社内チームの経験をAIに学ばせる
・Aktana Expertise:AKTANA社のスペシャリティチームが活動を支援する

「この6つの要素が組み合わさって、有効なContextual Intelligenceを実装できる」と松永氏は話します。Contextual Intelligenceを実装することで、「妥当性・整合性・学習」の確保が得られ、DRとの信頼構築・生産性向上・ROIの改善といった効果につながるそうです。

AKTANA社が考えるContextual Intelligenceを実装した次世代モデルを下図に示しました。

各社の製品戦略・市場データ・学習モデル・活動履歴などのコンテキストデータを、AKTANA社のソリューションに取り込みます。それをAKTANA社のエンジンで処理をしたのち、さまざまなチャネルを通じて、医療関係者に最適な情報提供を行います。さらに医療関係者へ届けたメッセージのフィードバックを次の処理につなげていく、というのがAKTANA社の提案する次世代モデルです。

AKTANA社のエンジンに備わっている機能を3つ紹介します。

Message Sequencing

Message Sequencingは、どのようなメッセージを提供すべきかアドバイスしてくれる機能です。従来は、セグメントごとにマーケティングチームが作成したメッセージを届けていました。そこから、メッセージを届ける順番もマーケティングチームが提案してくれるようになってきています。AKTANA社が提案するソリューションは、AIを活用することで、医療関係者の個々の興味やニーズに応じた最適なメッセージを選択し順番に提案します。

Sales Change Detection

Sales Change Detectionは、売上などの異常な変動を検知する機能です。従来は売上のデータをMRが自ら確認していましたが、売上の変動幅を固定設定し、〇%変動したらアラートを出すといった機能が備わってきています。しかし施設によっては、日頃より月ごとに売上の大幅な変動が出ることがあります。AIを活用したAKTANA社のソリューションでは、施設ごとに固有の変動幅を設けることで、施設ごとに応じた変動幅の精緻なアラートが出せるようになります。

Marketing Automation Integration

近年デジタルチャネルへのアプローチとして、MA(マーケティングオートメーション)ツールを導入する企業が増える一方で、デジタルチャネルとMRの活動が分断されていることが懸念されています。この2つのチャネルを有機的につなげるソリューションが、Marketing Automation Integrationです。MAツールでジャーニーなどを組む際に、AKTANA社のサジェスチョン機能を埋め込み、デジタルジャーニーの中にMRに何らかの気づきや活動を促すシステムを盛り込みます。

活用事例

これらのAKTANA社の機能を使った活用事例を、松永氏が紹介しました。

事例1:定期的に施策を評価し、ブラッシュアップしていく

マーケティング施策を四半期ごとなどに実行しているケースでは、施策を検証し、実行に移し、効果を検証するという一連の流れがあります。そこにAKTANA社の機能を活用すると、施策を現場のMRに即座に通知でき、さらに効果を定量的に評価できるようになります。ITツールを提供するだけでなく、分析サービスもAKTANA社では行っており、ツールを使ったことでどのような効果があったのか分析し、次の施策につなげることが可能です。

事例2:環境変化に応じて、試行と検証を繰り返す

COVID-19の影響で外部環境が大きく変化していますが、正解がない中で、迅速に試行と検証を繰り返すアプローチが重要となってきています。AKTANA社のシステムでは、仮説をもとに複数のグループに分け、どのグループの効果が高いか試行・検証するサイクルを迅速に行えるようになります。さらに、環境の変化に応じて再実施したり、経験とデータを組み合わせたりすることも可能です。

今後のロードマップ

AKTANA社ではさらなる機能の拡張を検討しており、その取り組みを2つ松永氏が紹介しました。 一つ目は、さらなるオムニチャネルでのマーケティング施策の実施です。

チャネルごとに特性は異なり、また医師の好みも異なります。伝えたいメッセージ、伝えるべきターゲットに対して、それぞれジャーニーを描き、それに従ったメッセージを伝えていけるように取り組んでいるそうです。もちろんすでに実現している部分もありますが、「できる限りAIなどで自動化を実現したい」と松永氏は話します。

もう一つが、自然言語処理を用いたテキストデータの活用です。

「ガイドラインの適用により、日報のデータなどの利用が可能になっており、そのデータをより有効に活用できるようにしたい」と松永氏。MRが入力した日報内容から、医師の関心や課題を収集し、次の情報提供へのインプットや医師のセグメント情報への活用に適用できるように取り組んでいるそうです。