資材制作におけるカラーユニバーサルデザインの基本情報

障害者差別解消法の施行や東京オリンピック/パラリンピックを控えていたこともあり、ここ数年、印刷物やウェブコンテンツにおいても、ユニバーサルデザイン(UD)の普及が高まっています。医療業界や製薬業界でも導入を考えた方がいいのか、検討の足がかりとしていただくため、資材制作におけるカラーユニバーサルデザイン(CUD)の基本的な部分をご紹介します。まずはCUDとはどのようなものかをご理解いただければと思います。


近年広がりを見せてきたユニバーサルデザインとは

ユニバーサルデザイン(UD)をご存知でしょうか。国籍、文化、年齢、性別、障害の有無などにかかわらず、できるだけ多くの人々が利用しやすいように製品や環境をデザインする考え方のことです。バリアフリーと似ていますが、バリアフリーは「ハンディキャップのある人が障壁を越えられるように配慮する」という考え方なのに対し、UDは「初めから障壁を作らない」といった違いがあります。

普段あまり意識しないことですが、UDは文房具、エレベーター、自販機、公共バスなど身の回りに多数存在し[ http://design-for-all.jp/ja/menu2.html ]、近年、その普及が進んできました。これは、2013年に成立した「障害者差別解消法」(2016年施行)とそれとともに批准された「障害者の権利に関する条約」、さらに今年予定されていた東京オリンピック/パラリンピックの影響が大きかったようです。

障害者差別解消法では、障害がある人も障害がない人と同様に社会参画したり情報にアクセスできるよう、行政機関や事業者は「合理的配慮」を行うよう定めています(行政機関は法的義務、事業者は努力義務)。このことは行政が発行する冊子やウェブサイトにも及ぶのですが、バリアフリーで個別の対応というのはできないため、より広い概念のUDが取り入れられています。一般事業者は努力義務なのですが、多くの企業や医療機関などで取り組まれています(ここでは紹介しきれませんので[ユニバーサルデザイン 企業、ユニバーサルデザイン 医療 ]などで検索してみてください)。

*合理的配慮とは、障害のある人それぞれの状態に応じて、過剰な負担がない範囲で対応すること。

色使いに配慮するためのUD=CUD

さて、視覚的な情報にアクセスしたとき、どのような場合に不都合が生じるかを考えると、「文字が読みにくい/読めない」「色使いが分かりにくい/分からない」といったことが考えられます。UDを取り入れることによって、こうしたことを改善し、視覚的な問題がある人でもない人と同じ情報を受け取ることができるようなります。ここからは、視覚のうち色覚とUDの関わりについて触れていきます。

人間のさまざまな能力に個人差があるように、色覚にも個人差があります。ですから、色覚に異常がない人がトマトを見て「赤い」と思っても、その「赤」は誰でも同じように感じた「赤」ではありません。色覚に異常がある人では、この差がより激しいということもできるかもしれません。

色覚異常のある人では、次のような色の組み合わせで混同しやすいとされています。印刷物やウェブを制作する際には、こうした点にも注意を払うことが、UDの観点から勧められます。

色覚異常のある人はどのくらいいるのか?

先天性色覚異常は、日本人男性の5%(300万人強)、女性の0.2%(約2万人)認められます(白色人種では男性の8~10%、女性の0.4% 京都眼科医会 先天色覚異常と色覚バリアフリー, http://kyogan.org/sikikaku/colorl-h2606.pdf)。AB型血液の人は約10%ですから、決して少なくないことになります。さらに、色覚異常は白内障の患者さんにも認められることが知られています(岡部正隆ら、 細胞工学. 21: 1080, 2002.)、小原らによる「科学的根拠に基づく白内障診療ガイドラインの策定に関する研究」では、中等度以上の白内障は、70歳代の約半数、80歳以上の70~80%以上(小原喜隆.科学的根拠に基づく白内障診療ガイドラインの策定に関する研究,2002. https://minds.jcqhc.or.jp/medical_guideline/guideline_summary?p_gl_id=G0000028)存在するとしています。
2018年の人口動態統計調査を基にすると1500万人以上の白内障患者さんがいると考えられます。全ての方で色覚に異常を来すとはいえませんが、それでもやはり、色覚に異常のある方は相当数に上ると考えるべきでしょう。従って、資材制作、特に患者さん向け資材では、色使いに配慮したUDが大切だといえるのではないでしょうか。

「カラーユニバーサルデザイン推奨配色セット ガイドブック」の利用によるCUD

では、どのようにすれば色覚に異常のある人でも、異常のない人と同じように、カラー印刷物の情報を正しく受け取ることができるでしょうか。そうした問題を解決するため、色使いに配慮したデザイン手法がありカラーユニバーサルデザイン(CUD)と呼ばれています。NPO法人 カラーユニバーサルデザイン機構(CUDO)がCUDの推進を図っていて、普及の一環として、色使いのガイドブックである「カラーユニバーサルデザイン推奨配色セット ガイドブック(以下、推奨配色セット ガイドブック)」を提供しています。では、どのようにすれば色覚に異常のある人でも、異常のない人と同じように、カラー印刷物の情報を正しく受け取ることができるでしょうか。そうした問題を解決するため、色使いに配慮したデザイン手法がありカラーユニバーサルデザイン(CUD)と呼ばれています。

NPO法人 カラーユニバーサルデザイン機構(CUDO)がCUDの推進を図っていて、普及の一環として、色使いのガイドブックである「カラーユニバーサルデザイン推奨配色セット ガイドブック(以下、推奨配色セット ガイドブック)」を提供しています。では、どのようにすれば色覚に異常のある人でも、異常のない人と同じように、カラー印刷物の情報を正しく受け取ることができるでしょうか。そうした問題を解決するため、色使いに配慮したデザイン手法がありカラーユニバーサルデザイン(CUD)と呼ばれています。NPO法人 カラーユニバーサルデザイン機構(CUDO)がCUDの推進を図っていて、普及の一環として、色使いのガイドブックである「カラーユニバーサルデザイン推奨配色セット ガイドブック(以下、推奨配色セット ガイドブック)」を提供しています。

https://jfly.uni-koeln.de/colorset/CUD_color_set_GuideBook_2018.pdf

推奨配色セット ガイドブックとは次のような内容になっています。
まず、推奨配色セットで用いられる色は全20色と決められていて、アクセントカラー、ベースカラー、無彩色の3グループに分けられています。

  • アクセントカラー:文字・サイン・線など、小さいものを塗りわけるため高彩度の色です。
  • ベースカラー:地図や帯グラフなど、広い面積を塗りわけるのに使う色です。
  • 無彩色:色覚異常のある人は、緑・紫・ピンクなどをグレーと混同することがあるため、最も無彩色と感じられたやや青みのあるグレーが選択されました。
カラーユニバーサルデザイン推奨配色セット 第2版 概要版より
CUD_color_set_GuideBook_2018_for_print_cs4.pdf

配色の組み合わせは、塗装用、印刷用、画面用の3種用意されています。20色の配色の中には見分けにくいものも含まれているため、「比較的見分けやすい組み合わせ」「見分けにくい組み合わせ」が例示されています。推奨配色セットを参考にデザインすることで、何もなしで組み合わせを考えるよりも時間がかかりませんから、コスト削減にもつながることでしょう。

色覚シミュレータの利用によるCUD

CUDの配色を考えるための他の方法として、色覚シミュレーション用アプリケーションを利用することもできます。これらを利用すれば、色覚の問題を理解し、CUDを配慮した制作物に生かすことが可能です。ただし、あくまでもシミュレータなので、実際に見えている色を再現しているわけではない点を十分理解して利用する必要があります。

    • UDing
      東洋インキグループが提供するCUD支援ツールです。配色を確認するための「UDingCFUD」、色覚タイプ別の見え方をシミュレートする「UDingシミュレーター」、ディザリングを活用し色変更せずにCUDを実現する「UDingディザ」の3つがあります。 https://www.toyoink1050plus.com/tools/uding/
  • スマートデバイス用
    • 色のシミュレータ 2.0
      スマートデバイス向けの色覚シミュレータです。
      対応端末:iPhone、iPad、iPod、Android http://asada.tukusi.ne.jp/

まとめに代えて

行政機関が提供するウェブサイトや印刷物は、多くの一般市民にとって必要な情報を掲載し、理解してもらうことを目的に制作されていることがほとんどでしょう。ですから、創造的なデザイン性を犠牲にしてでも、より読みやすく、より理解しやすくするよう、UDに配慮することが求められています。こうしたこともあり、ここ数年、UDの推進気運は盛んになっていますが、だからといって、全てUDと考えるのは問題があるかもしれません。創造的・独創的なデザインが多くの人を魅了することがあるりますし、それは社会にとって欠かすことができないものではないでしょうか。
UDを取り入れて資材等を制作することは社会貢献として望ましいことではありますが、導入に当たって、単に「社会貢献として」「世の中の流れだから」「他の企業もやっているから」といったことで行うのではなく、「なぜUDに配慮する必要があるのか」「どういった対象に向けての情報に必要なのか」など、目的を明確にし実行することが望まれるのではないでしょうか。