○○○スタチン、○○○○マブ、医薬品一般名を分類するキーワード「ステム」を解説

医薬品の販売名が、響きや語呂などから覚えやすい一方、一般名は単なる長いカタカナで覚えにくいと思う人は少なくないと思います。本記事では、医薬品一般名の分類規則であるステムについて紹介します。ステムを知れば、医薬品一般名の見え方がきっと変わるはずです。

ステムってなに?誰が決める?

ステムは「stem」、もともとは「幹、軸、茎」といった意味で、共通語幹(ある単語群に共通する、単語の中の変化しない部分)と言われます。文字通り、医薬品一般名が命名される際の土台、幹がステムで、これに基づいて、医薬品の有効成分がその化学構造や薬理作用などで分類されます。 ステムは、WHOによって医薬品の国際一般名(INN, International Nonproprietary Name)を命名するための原則として決められます。
日本での医薬品一般名(JAN, Japanese Accepted Name)は、基本的にINNを和訳したものです。実は、インタビューフォームをよくみると、一般名の項にステムが記載されています。

*アドレナリン(JAN) はINNではエピネフリン、アセトアミノフェン(JAN) はINNではパラセタモールのようにまったく異なる名称もあります。

ステムの仕組みと例

医薬品の化学構造、薬理作用や薬効が、あるグループに含まれる場合に、その一般名の一部として付けなければならない特定の文字の組合せがステムです。
いくつか例を見ていきましょう。

●アンジオテンシン受容体拮抗薬のグループには、「-sartan」を接尾語として付けます。
例:Olmesartan(オルメサルタン)、Valsartan(バルサルタン)など

●HMG-CoA還元酵素阻害薬のグループには、「-vastatin」を接尾語として付けます。
例:Pravastatin(プラバスタチン)、Rosuvastatin(ロスバスタチン)など

※よく、「スタチン」系薬剤と言われますが、ステムでは「バスタチン」です。

●糖尿病治療薬では、DPP-4阻害薬のグループには「-gliptin」を、SGLT2阻害薬のグループには「-gliflozin」を接尾語として付けます。
DPP-4阻害薬:Sitagliptin(シタグリプチン)、Alogliptin(アログリプチン)など
SGLT2阻害薬:‎Ipragliflozin(イプラグリフロジン)、Dapagliflozin(ダパグリフロジン)など

ステムは接尾語だけではありません。
●セフェム系抗生物質のグループには、「cef-」を接頭語として付けます。
例:cefaclor(セファクロル)、cefcapene(セフカペン)など

●ヨード含有造影剤のグループには、「io-」を接頭語として付けます。
例:Iodixanol(イオジキサノール)、‎Iotrolan(イオトロラン)など

抗体医薬品のステム

抗体医薬品にも同様にステムがあります。 抗体医薬品の一般名には、共通して「-mab」というステムが接尾語として付けられますが、それに加えて遺伝子の由来や標的を示すサブステムが付けられます。

Trastuzumab(トラスツズマブ)は、Tras(自由な表記の接頭語)tu(抗腫瘍)zu(ヒト化抗体)mab(抗体医薬品の接尾語)、Nivolumab(ニボルマブ)は、Nivo(自由な表記の接頭語)l(免疫調節)u(ヒト抗体)mab(抗体医薬品の接尾語)という構造になっています。

まとめ

以上、ステムについて紹介しました。
医薬品の製造販売承認はその時の適応疾患に縛られますが、ステムからは、薬効成分の持つ本質的な薬理作用や構造などのイメージが湧きます。もっと言えば製品のあるべき立ち位置や、製品のライフサイクルが見えてきます。製品の理解を深めるために、ステムを活用しない手はないでしょう。


本記事は、以下を参考にしています。
竹中祐典, 薬学図書館32(3), 147-155, 1987.
高橋秀依, ファルマシア53(4), 2017.
The use of stems in the selection of International Nonproprietary Names(INN) for pharmaceutical substances 2018(Stem Book 2018), WHO.