入稿? 色校? 印刷? 入稿から納品までの基本的流れ

パソコン上でさまざまなことができるようになった今、印刷業界もITを取り入れ、また新しい印刷技術で進化してきました。そんな印刷の現状を踏まえつつ、これから印刷物に関わって行く人のために、入稿から印刷、納品までの大まかな流れと簡単な用語の説明も交えて解説してみたいと思います。

①印刷データの作成

さて、さまざまな苦労の末、最終審査を経て印刷OKとなった資材は、まず印刷用のデータが作成されます。
印刷を前提として作られる物は、専用のソフトウェアを用いて作られますが、印刷となると最終的な印刷用データの作成が必要になります。これが「入稿用データ作成」と言われる物です。制作データはさまざまなフォーマットデータを使い、かついろいろな場所からデータを集めてくるため、この工程をきちんとしないと、まともに印刷することはできません。印刷時の事故を減らす重要な工程です。

入稿用データ作成は主にこのような作業です。

  • 使用サイズに応じて写真データ等のリサイズ
  • データ内のオブジェクトはきちんと設定されているか確認
  • 多数のデータを1カ所にまとめること
  • 使用されるデータのデータフォーマットを確認
  • 他者が別の環境でドキュメントを開いても、レイアウトが崩れないようにする(アウトライン化や印刷用PDFの作成など)
  • 上記を元に出力指示書の用意
  • 上記データをパッケージ化  など

アウトライン化:フォントを図形化する作業です。制作物に使用しているフォントが印刷会社に無い場合、この作業を行わないとレイアウトやページ構成が崩れてしまう可能性があります。この作業によって書体、文字組、配置も含めてテキストを編集できなくなります。


②入稿

データの準備ができたら印刷会社にデータを渡しますが、事前に見積もり依頼などで印刷の仕様、方法を決めておく必要があります。仕様とは印刷物の色数、サイズ、ページ数、綴じ方法、紙の種類など。印刷方法は、一般的にはオフセット印刷、オンデマンド印刷の2種類です。他にも活版印刷、グラビア印刷、シルクスクリーンなどがありますが、最近では特別な用途・こだわりが無ければあまり使いません。

オフセット印刷

商用印刷では最も一般的な印刷方法です。印刷用版(刷版:インクの付く金属製の版)を作りそこにインクを付けそれを紙に印刷します。CMYKの4色以外にも特色、クリア、白インク、蛍光インクなども使えます。製版・刷版などに初期費用が掛かるため、少部数印刷では割高になり、A4ペラで1000部を超えるあたりから割安になっていきます。
印刷時に色のコントロールができるため、繊細な色を扱う場合はオフセット印刷を使った方が良い。ただし、製版、色校正、刷版、印刷・乾燥、断裁と多数の工程を踏むため納品まで時間が掛かり、そこを急がせると、確認・乾燥など品質維持のための工程を圧縮することになり不具合の発生するリスクが高くなります。最近ではUVインクという紫外線で瞬時に乾く印刷技術も登場し、乾燥工程が不要の印刷機も登場しています。

Stefan Kühn, Fotogalerie https://commons.wikimedia.org/wiki/File:Heidelberg_Speedmaster_102_CD.jpg

製版:刷版を作るためのフィルムを作ること、フルカラーの場合は4枚のフィルムを作成します。
刷版:製版で作られたフィルムを焼き付け、印刷用のアルミ製の刷版を作成します。

オンデマンド印刷

パソコンから印刷データを直接プリントする高品位レーザープリンターを使った印刷。初期費用がいらないため、少部数では圧倒的にコストが安く早く仕上がります。数百部の翌日仕上げも印刷機の空き状況によっては可能です。1000部未満ではオンデマンドが大きく選択肢に入ってきます。
ただし色が安定しない、ムラが出やすい、A3サイズまでしか印刷できない、特色が使用できない、紙の選択に制限があるなどのデメリットもあります。また、色校正の概念が無いため、色校正が必要なときは2〜3部を発注することになります。印刷機、時期、気温、湿度などによって発色が変わるため、繊細な色を求める印刷物には使用しない方がよいでしょう。
最近では機能が進化していて、厚盛印刷、メタル印刷などができる機種もあります。

厚盛印刷:インクを盛り上げて印刷し、紙面に凸凹を作る印刷技術です。特別感を出すためのほか、点字印刷などにも使われます。
メタル印刷:ステンレス調の金属感を出す印刷技術です。


③色校正

入稿が完了すると、次は色校正に進みます。オンデマンド印刷で色校正が必要な場合は、少部数の発注でサンプルを作成します。入稿から2〜4日後にできあがってくるので、問題なければそのまま本発注します。サンプルを見て色の調整が必要な場合は、制作担当のデザイナーが元データを変更・修正し再び入校します。この作業は印刷会社では行ってくれません。
そしてオフセット印刷の色校正には、大きく分けて3種類方法があります。

簡易校正

デジタルプルーフ、コンセンサス、DDCPなどとも言われます。正確にはそれぞれ異なる種類の簡易校正になりますが、どれも低コスト・時間短縮のために使われる物で、総じて簡易校正と呼んでいます。かつては簡易校正専用紙のみの出力でしたが、最近は本紙(実際に使う紙)で出力できるタイプもあります。色はあくまで参考程度で、繊細な色の確認はできません。印刷会社によって、実施可能な簡易校正の種類が違うため確認が必要です。翌日、早ければ即日色校正が入手可能です。

本紙校正

平台校正とも呼ばれる校正専用機で、実際のインクと紙を使った色校正です。この校正では製版を行います。色の再現性が高く、数値で印刷本機と環境を合わせられるため、低コストと高クオリティを両立できます。正確な色校正を求める場合では最も一般的な方法になります。しかし、印刷本機と校正機は別物のため、どうしても色の差異は生まれてしまいます。だいたい翌々日、早ければ翌日色校正がでます。

本機校正

本番の印刷機、インク、紙を使用し、実際の印刷環境で色校正を刷る最も高価な方法です。実際に印刷したときの仕上がりを厳密に確認したい場合に、こちらの方式を選択することになります。製版・刷版工程が本印刷と同じく掛かり、しかも他の印刷物の合間に行うため、大量印刷の予定が前後に入っていれば、スケジュールが決めにくいのが難点です。一般に、入稿から色校正の確認ができるまで3〜5日かかります。最近はCTPで製版を省略する方法もあるため、期間が短縮され、価格も少し安くなり、本機校正がやりやすくなっている印刷会社もありますが、その数はまだまだ少数です。

CTP:Computer To Plateの略。通常は、フィルム出力⇨金属版に焼き付けで作る刷版ですが、CTPはコンピュータから直接刷版を作成できます。

色校正を確認し問題がなければ「校了」です。「校了」とは修正が全て終了し「これ以上変更が無い」ことを意味するので、印刷会社に校了を伝えた後で「ちょっと修正」は本質的にはできません。ですので最終確認は時間を十分取ってしっかり見ましょう。また、「校了」と似た言葉で「責了」というのがあります。これは「軽微な修正があるけど印刷会社の責任のもと修正し校了してください」の意味です。責了の場合、修正の確認は基本的にしませんが、依頼すれば「念校」として確認することは可能です。「念校」とは現在の印刷状況を確認するための見本のことで、修正指示はできません。


④印刷

色校正を確認し、問題なければ本印刷となります。オンデマンド印刷では数日後に納品されるでしょう。

オフセット印刷ではここから下版(げはん)作業となります。「下版」とは実際の印刷用の刷版を作ること。そして片面ずつ印刷を行い、その後乾燥、製本、梱包などの工程を経て納品となります。印刷部数にもよりますが、4000部A4、1枚物の印刷物で校了後5〜8営業日、数十ページだと14〜20日程度かかります。最近では表面、裏面を同時にフルカラー印刷できる印刷機を導入し、時間短縮を売りにしている印刷会社もあります。


⑤そして納品へ

納品は、ただ印刷物を指定の場所まで届けることだけではありません。梱包の仕方一つでトラブルが起きやすくなるのです。例えば、納品を急ぐ余りインクが乾ききらないうちに梱包してしまい、色が移ってしまうという事故を耳にすることがあります。それを防ぐため高品位な印刷物には、追加料金を払いUV印刷、ニス塗りを選択するほどです。また、しっかり梱包しすぎてしまい、端の制作物が傷が付いてしまうこともよく聞きます。これを避けるために印刷会社は力を加減して梱包、端の部分に予備印刷物を追加するなど手立てをしてくれますが、これに気づく人は余りいません。梱包・配送時の事故も多いため独自のノウハウを持った、企業向けの梱包発送専門会社もあるほどです。


まとめ

印刷は方法によって大きくスケジュールが変わります。資材の目的、用途、求めるクオリティそして部数を考慮し、最適な印刷方法を選択しましょう。