【作成例あり】疾患啓発サイト名やイベント名に活かせる!ネーミングの作り方

【作成例あり】疾患啓発サイト名やイベント名に活かせる!ネーミングの作り方

疾患啓発サイトやオウンドメディアを立ち上げたり、イベントやキャンペーンを実施したりする際に、必要になるのが「ネーミング」です。ネーミングでイメージは大きく変わり、認知や集客にも影響があらわれます。今回は、サイト名やイベント名に活かせるネーミングの考え方やポイントを紹介します。

良いネーミングは広告の役割を果たす

ネーミングは、商品やサービスなどの認知やブランディングに大きな影響を与えます。

名前を変えたことでヒット商品になった事例も数多くあります。例えば、伊藤園の「お~いお茶」は1985年に「缶入り煎茶」という商品名で発売されましたが、「煎茶」という字を読めない人もいて馴染みも薄かったため売れない状況が続きました。しかし、1989年に「お~いお茶」に改名すると売り上げが前年の6倍になりました (1 。また、王子ネピアの高級ティッシュ「鼻セレブ」はもともと商品名が「ネピア モイスチャーティッシュ」でしたが、改名したところ売り上げは10倍以上になりました (2 。このように良いネーミングは、名前そのものがユーザーの注意をひきつけ興味を喚起する広告の役割を果たし、成功へと導くのです。

良いネーミングの条件5つ

良いネーミングにはどのような条件があるのか、以下に紹介します。

1. 特徴が伝わる

商品やサービスの自己紹介であるネーミングには、簡潔に特徴を伝えるわかりやすさが必要です。最もアピールしたいポイントや特徴が込められた名前なら、理解促進やPRにもなり広告としての役割も果たします。小林製薬の「熱さまシート」は、商品名を見るだけで「熱を冷やしてくれる商品」「熱を下げたいときに使う商品」といった特徴が伝わるように設計されています。

ただし、特徴の表現の仕方にもポイントがあり、ユーザー側が得られる効果やメリットを示すようにします。例えば、高血圧の方向けの食事療法冊子のタイトルを考える場合には、「毎日の減塩レシピ」といった発信者側の言葉ではなく、「10分で作れる減塩レシピ」「いつものおかずで減塩レシピ」「塩分控えめでも簡単・おいしいレシピ」のなど、ユーザー側のメリットを打ち出すことが大切です。

2. オリジナリティがある

名前にオリジナリティがあれば、興味を持たれやすく、印象に残りやすくなり、競合との差別化も図れます。後発でリリースする商品やサービスなどの場合はとくに、オリジナリティがあることは重要です。ユーザーの印象に強く残れば、インターネットでの指名検索(名称で検索すること)にもつながり、SEO対策も期待できます。

3. 読みやすい・覚えやすい

パッと見ただけで覚えやすいことも重要です。長すぎたり難解な漢字や記号を使っていたりすると、印象に残りづらくなります。そのため、なるべくシンプルで読みやすい名前がおすすめです。ただし、シンプルでも当たり前すぎるのはよくありません。例えば、患者さん向け冊子で「高血圧レシピBOOK」「糖尿病運動療法ガイド」というタイトルでは、一般的すぎて印象には残りません。

4. ターゲットと合っている

医療関連のコンテンツはターゲットが絞り込まれている場合が多いため、名前がターゲットの感覚や好みと合っていることも重要です。例えば言葉の響きでは、有声音(発生時に声帯が振動する音)で破裂音の「b・d・g」が男性向けの響きになり「ガンダム」「ゴジラ」「ドラゴンボール」「アディダス」などが当てはまります。一方、女性では破裂音ではない有声音(l・m・n・rなど)が受け入れすく「メルカリ」「ルナルナ」「シャネル」「アンアン」などが当てはまります 。婦人科系疾患など性別特化のコンテンツには、こういったアプローチを試みてもいいかもしれません。

※あくまで傾向であり当てはまらない場合もあります。

5. 信頼性がある・不快な思いをさせない

「男前豆腐」や「まじヤバくない? 」など、ユーモア・ダジャレ系で話題になったネーミングも多くあります。しかし、信頼が何よりも大切な医療関連のコンテンツではおすすめできません。また、近年では炎上や騒動を避けることも重要です。例えば、ファミリーマートで惣菜類のプライベートブランドに「お母さん食堂」という名前を付けたところ、「お母さん=料理・家事」というイメージがついてしまうという理由から、名前を変えようとする署名運動が行われました (3 。印象に残らないことは問題ですが、マイナスイメージになることも絶対に避けたいです。

※高級食パン専門店

ネーミングを考えるステップ

どのような流れでネーミングを考えるのか、ステップを紹介します。

ステップ1. 情報を整理する

ネーミングを考える際にまずやるべきことは、商品やサービスの情報整理です。5W1H(いつ・どこで・誰が・何を・どのように)に沿って整理するとシンプルです。また、説明文のような形で文章化しておくこともおすすめです。難しい場合は、「これは、○○〇の方に●●●を提供する商品(サービス・サイト)です。ならではの特徴として□□□があります」のように穴埋め式で文章化してください。チーム内での情報や認識の共有はもちろん、ネーミングを外部に依頼する際には説明資料として使えます。

ステップ2. キーワードを出す

情報整理を終えたら、ネーミングの構成要素となるキーワードを挙げていきます。よいネーミングを考えるには、よいキーワードを出すことが必要です。特徴や説明文をもとにキーワードを出すのはもちろん、競合のネーミングを調べるのもおすすめです。さらに競合だけでなく、例えば「高血圧」なら「糖尿病」「認知症」「がん」など高血圧以外の疾患にまで対象を広げて、評判のよい商品やサービスのネーミングを参考にするのもよいでしょう。

ステップ3. パターンごとにネーミングを考える

キーワードを出したら、説明文やキーワードなどを参考にネーミングを考えます。キーワードをシンプルに使ったり、語尾を変えたり、言葉を足したり、組み合わせたり、省略したり、文章化したり、擬人化したり、言葉遊びしたりすることで、さまざまな切り口のネーミングを数多く考えることができます。ネーミング作成のパターンとして代表的な3つを紹介します。

<パターン1>シンプル・ストレート
商品・サービスの特徴をシンプルに伝えるパターン。「おいしい牛乳」「南アルプスの天然水」「ポット洗浄中」など。


<パターン2>足す・合成する
2つ以上の単語を組み合わせるパターン。「カロリーメイト(カロリー+メイト)」「ヒートテック(ヒート+テクノロジー)」「い・ろ・は・す(いろは+ロハス)」など。


<パターン3>文章化・キャッチコピー化
単語ではなく文章や話し言葉にするパターン。「甘栗むいちゃいました」「ごはんですよ」「辛そうで辛くない少し辛いラー油」など。

架空の便秘サイトでネーミング作成

それでは、架空のコンテンツでネーミングを考えてみます。ある製薬企業が患者さん向けの便秘サイトを立ち上げるという想定で、ターゲットは「便秘と診断された方、排便回数が少なくて悩んでいる方、主に女性の方」、サイトの概要・特徴は「便秘の基本的な知識や、日常生活での注意点やお役立ち情報を正しくわかりやすく提供する。便秘改善におすすめの管理栄養士監修によるレシピを頻繁に公開する」とします。

まずは、これらの情報から、ステップ1の穴埋め式を使ってサイトの説明文を作ります。

『このサイトは、便秘と診断された患者さん、または、排便回数が少なくて悩んでいる女性の方に、便秘の基本的な知識や、日常生活での注意点やお役立ち情報を正しくわかりやすく提供するサイトです。ならではの特徴として、日常生活での便秘改善に力を入れており、管理栄養士監修のレシピを高い更新頻度で公開する点があります。』

続いて、説明文から想起できるキーワードを書き出します。

便秘/排便/お通じ/トイレ/患者/女性/女性向け/正しい/正確/信頼/わかりやすい/よくわかる/やさしい/基本/知恵/知っておきたい/サイト/ガイド/ナビ/トリセツ/お役立ち/使える/頼れる/実践的/活用する/取り入れる/日常生活/毎日/いつも/食事/食べる/レシピ/メニュー/献立/頻繁/たくさん/管理栄養士/専門家/おいしい/簡単/改善/解消/回復/克服/打ち勝つ/もう悩まない/スッキリ/卒業

そして、説明文やキーワードをもとに、ネーミングをパターンごとに作成します。

<シンプル・ストレート>
・便秘のトリセツ
・便秘の知恵
・便秘とレシピ
・便秘と献立


<足す・合成する>
・ベンカツ(便秘+活動+活用+勝つ)
・ベンピーナ(便秘+~ナ※女性的な響き)
・便秘小町(便秘+小町)
・bendel(便+出る)


<文章化・キャッチコピー化>
・よくわかる女性の便秘
・スッキリしたい私の便秘サイト
・さよなら便秘
・便秘、何食べよう

訴求したい内容で名前に含められない場合は、タグライン(商品やサービスを簡潔に説明する文章)を用意して、名前とセットで使用します。以下にタグラインの例を示します。

  • 便秘の基本・知恵・レシピ/便秘のトリセツ
  • 便秘女子をレシピで応援/ベンピーナ
  • スッキリレシピが満載/よくわかる女性の便秘

ある程度の数を作成したら、「特徴が伝わる」「オリジナリティがある」「読みやすい・覚えやすい」「ターゲットと合っている」「信頼性がある・不快な思いをさせない」といった条件と照らし合わせ、案を絞り込んだり、ブラッシュアップしたりします。

ありきたりではない個性的で強いネーミングを

「名は体を表す」という言葉があるように、ネーミングは商品やサービスの個性を見える化し、ブランディングにも大きな影響を与えます。ユニークな名称であれば、医師とのコミュニケーションのきっかけにもなります。ぜひ、今回の記事を参考に、特徴を捉えた個性的で強いネーミングを開発してください。


<出典> ※URL最終閲覧2022.08.17
1. ニュースイッチ, 日刊工業新聞社, 2019.03.15, 売り上げ急上昇にはワケがある。シンプルだけど示唆に富む「お〜いお茶」の物語と今後( https://newswitch.jp/p/16876
2. 日本ネーミング大賞, 日本ネーミング協会, ( https://j-naming-award.jp/award2020/%E9%BC%BB%E3%82%BB%E3%83%AC%E3%83%96/
3. Change.org, ファミリーマートの「お母さん食堂」の名前を変えたい!!!( https://www.change.org/p/%E6%A0%AA%E5%BC%8F%E4%BC%9A%E7%A4%BE%E3%83%95%E3%82%A1%E3%83%9F%E3%83%AA%E3%83%BC%E3%83%9E%E3%83%BC%E3%83%88-%E9%A3%9F%E5%A0%82%E3%83%97%E3%83%AD%E3%82%B8%E3%82%A7%E3%82%AF%E3%83%88

<参考>
・弓削徹, 明日香出版社, 2022, 『ネーミングの極意』