医師への連絡や報告書作成に使える!たった2つのポイントで質を上げるコピーライティング文章術

医師への連絡や報告書作成に使える!たった2つのポイントで質を上げるコピーライティング文章術

コピーライティングは狭義では「コピーライターの技術」ですが、文章作成の汎用的な技術でもあり、医師への連絡や社内での報告書・企画書などの文書作成でも活かせます。そこで今回は、たった2つのポイントで文章の質を上げ、成果を上げるコピーライティングをベースにした文章術を紹介します。

コピーライティングはビジネスパーソン共通の文章術

コピーライティングとは一般的に「人間心理を理解し、言葉で読み手の行動を変える技術」「言葉で読み手を行動(主に購買行動)に駆り立てる文章の技術」などと言われます。つまり、単に広告のキャッチコピーを考えるコピーライターのための技術ではなく、「文章で相手を動かす技術」のことであり、医師への講演会の案内や社内向けの報告書・企画書などビジネスにおけるあらゆるテキストコミュニケーションに活かせる非常に汎用性の高い技術なのです。

ビジネスに必要なのは「伝わる言葉」

「伝える」と「伝わる」。1文字しか違いませんが、意味は大きく変わります。
「伝える」は、自分の意見や報告を一方的に相手に発信する行為で、そこには相手の理解や納得といった反応までは考慮されていません。それに対して、「伝わる」は、自分の意見や報告が相手にきちんと通じている状態のことです。キャッチボールでいえば、「伝える」は自分がボールを投げた状態、「伝わる」は相手がボールをキャッチした状態といえます。

例えば、街中にあるポスターに「歩きたばこはやめよう」「歩きたばこは迷惑です」とあったとします。これは伝えたいことを一方的にいっているだけで、「伝わる」には至っていません。これが「たばこを持つ手の高さは子供の顔の高さだった。」「クツ底で火は消えるけど、吸いがらまでは消えない。」といった言葉だったらどうでしょうか。実際にJT(日本たばこ産業)の喫煙マナー向上活動のポスターで使われたキャッチコピーですが、これらを軸とした啓発活動によって「歩きながらたばこを吸う人が少なくなったと思う」と答えた人が34.5%(2006年)から52.1%(2018年)に、「たばこを投げ捨てる人が少なくなったと思う」が25%(2006年)から38.9%(2018年)に増えました ※1 。「伝わる」言葉によって、行動に変化が生まれたのです。

「伝える」と「伝わる」の決定的な違いは、相手が動くかどうかです。相手が動かない言葉では、自分が望む結果を得ることはできません。ビジネスにおいては、伝わる言葉や文章によって相手が動き、成果が上がるのです。

伝わる文章を書くための最重要2大ポイント

それでは、コピーライティングをベースに伝わる文章を書くためのポイントをご紹介します。今回は細かなテクニック論ではなく、本質的で最重要なポイントとして2点に絞ってお伝えします。

1. 読み手をひとり具体的にイメージする

コピーライターは、ターゲットが数千人もいる広告の文章を制作する場合でも「その中でもこの人」というひとりをイメージして言葉を考えます。理由は、読み手を具体的にイメージすることでその人に届く言葉が浮かびやすく(選びやすく)なるからです。

ビジネスにおける文章も同様で、ひとりの読み手を具体的にイメージすることで、その人が理解しやすい言葉を使うようになり、さらには文章の組み立てや言い回しなども他ではなないその人に向けたものになっていくのです。

2. 文章の目的を明確にする

伝わる文章とは、「A」という位置にいる読み手を自分が望む「B」という位置に動かす「矢印のような文章」ともいえます。そのため、読み手をどこに動かしたいのか(=Bの位置)が曖昧では、言葉に矢印の役割を持たせることはできません。動かす位置、すなわち目的を明確にしてから書くことが必須です。

目的を明確にすることで、読み手に対して「何を言うか」がクリアになり、書く必要のあることとないことが区別できるようになり、書く必要のあることの「優先順位」も見えてきます。

例えば、自分が担当する医師にWeb講演会の案内をメールで送るというケースなら、まず読み手である医師を具体的にイメージします。HP/GP、専門医/非専門医、診療科、年齢、性別はもちろん、治療・処方のポリシーや関心事、患者への接し方、性格、忙しさ、ライフスタイル、メールを読むタイミングなどまで思い浮かべることが大切です。

この場合での文章の目的は、Aの位置(=Web講演会のことを知らない)にいる医師を、あなたが望むBの位置(=Web講演会に興味を持ち参加する)に動かすことです。このように読み手や目的を明確にすることで、メールの件名が重要であることが分かります。正しい内容のメールを送っても受信ボックスで埋もれてしまっては意味がありません。メールが開封されるよう、件名には「●●●に関するWeb講演会のご案内」「〇〇先生ご登壇 ●●●に関するWeb講演会のご案内」「交流会あり●●●に関するWeb講演会のご案内」など、対象疾患や講演会テーマ・内容、演者のことなど、読み手である医師が興味を引くワードを冒頭に書く必要があることが見えてきます。

また、本文においては「先生は忙しいのでメールには簡潔な案内だけにしてパンフレットのPDFを添付しておこう」「概要だけでなく先生が興味を持ちそうな講演情報も紹介しよう」「先生はPCに不慣れだからIT用語を使わないでやさしく案内しよう」「視聴登録の方法はメール本文に太字でわかりやすく記載しておこう」などの「伝わる」工夫を盛り込むことができるようになります。

一方、読み手や目的が明確になっていないと、「Web講演会のご案内」といった抽象的な件名にしたり、どの医師に対してもまったく同じ文面にしたりと、矢印の役割を持たない一方的に「伝える」だけの文章を送ってしまうことになります。これでは、期待する成果は上がりません。

2つの当たり前を意識すれば、文章の質は向上する

「伝わる」文章を書くことは、「伝える」文章よりも手間暇がかかります。しかし、読み手や目的を明確にすることで、正しく効率よく「伝わる」ための工夫ができるようになり、文章の質が上がり、成果につながっていきます。今後、文章を作成する際には、「〇〇先生(〇〇さん)に向けて●●という目的のために書く」ということをつねに心がけて書くことをおすすめします。

<出典>※URL最終閲覧 2022.07.19
※1 JT, 喫煙者率調査( https://www.jti.co.jp/coexistence/manners/index.html

<参考>
・六本木未来大学, 日本経済新聞出版社, 2018,『0→1を生み出す発想の極意』
・勝浦雅彦, 光文社, 2022,『つながるための言葉』