【コラム】JMDC COOに聞く! 活動量のデータを使ってみた

(株)JMDCのCOO杉田氏が、製薬企業におけるリアルワールドデータ(RWD)などデータ活用のヒントをお伝えする本コラム。
JMDCはFitbitのデータを、実は結構なボリュームで持っています。いわゆる活動量計のデータもリアルワールドデータの一つで、JMDCはデータのボリュームだけでなく、種類もどんどんと増やしています。今回、活動量計のデータをレセプトと掛け合わせて何ができるのか少し試してみましたので、その辺りの結果も踏まえて可能性を考察してみたいと思います。

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杉田:JMDCのCOOの杉田と申します。今月は「活動量計のデータを分析してみた」というテーマでお話したいと思います。JMDCは健保のレセプトのデータという印象が強いと思いますが、レセプトでも病院のデータや薬局のデータも保有しており、それ以外のリアルワールドデータも実はかなり持っています。その一つが活動量計のデータでして、そのデータが何に役立つのかあまり知られていないので、少し何ができるのかフォーカスを当ててみたいと思います。

穴吹:製薬本部マネージャーの穴吹と申します。本記事では私がインタビュワーとなって、進めていきたいと思います。よろしくお願いいたします。それでは早速ですがそもそも活動量計のデータとはなんぞやから教えていただけますでしょうか。

杉田:活動量計は、製品名でいうとFitbitとかapple watchとかガーミンとか皆さんも聞いたことがあると思います。iPhoneでも歩数などは測れますので、携帯電話も活動量計であると言えますね。それらで取られているデータ項目なのですが、主には、活動レベル、睡眠の深さ、歩数、脈拍があります。

活動レベルや睡眠の深さはやや曖昧でしっかりした定義はないのですが、活動レベルは座っているのか、歩いているのか、走っているのかぐらいの分類、睡眠の深さは、レム睡眠なのかノンレム睡眠なのかぐらいに分類されているイメージを持っていただければ良いと思います。

データの特徴としては、これらの項目が分単位で蓄積されているというところにあります。健康診断のデータだと年に1回ですし、電子カルテのデータでも基本的には1日に1回になるところが、活動量計のデータですと分単位で得られるので、1日の中でどういうことが起きているのかや日内変動が詳細にわかります。

Fitbit分次データの一例

分単位データはボリュームとして非常に大きくなりますので、数千人分を期間を限定して分析しても上記の図のように、数百万レコードになります。ただその分データとしては非常に綺麗で、1日の心拍数の変化をグラフにすると、上記のように、寝ている間は60ぐらいで安定しており、6時ぐらいに目覚めてからは活動に合わせて心拍数が100程度まで上昇することが見られているというように、その人の1日の状態を想像することができます。

―活動量計のデータ、非常にユニークですね。ただ、どうしても活動量計はユーザーの方の自己管理のためのものとして見てしまうのですが、では製薬企業ではこれらのデータをどう活用すると良いのでしょうか。

杉田:大きな方向性としてはいくつかあると思います。例えば以下が考えられます。

  • 未診断の患者数を推定する
  • 治療の有効性や患者のQOLを推しはかる
  • 活動量計から罹患リスクを推測する

1点目に関してもう少し説明しますと、心拍や睡眠のデータだけでも、不整脈や不眠などの疾患はある程度判断ができますので、活動量計のデータからどのぐらいの割合の方が不整脈や不眠症になっているかが推測できます。JMDCでは個人同意のもとでFitbitのデータとレセプトのデータが紐づいていますので、レセプトのデータから、その中でどの程度の方が診断病名がついていて、どの程度の方が未診断なのかがわかります。そうすると製薬企業としては、患者のアウトカムを改善するために、未診断患者にまず医療機関を受診してもらうとか、医療機関で確実に診断してもらう、といった患者啓発や医師の啓発にどの程度力を入れるべきかがわかります。

実際に未診断患者が多いと言われている心房細動に関して、未診断患者をFitbitデータを用いて算出してみましたが、多めに見積もると人口の2.5%ぐらいは未診断ではないかという結論が出ました。

―未診断の患者のデータが得られて、その患者の検討ができるのは、診断がついた後のデータであるレセプトとの大きな違いですね。それでは、2番目に挙げていただいた、治療の有効性やQOLを推し量ることができるというのはどういうことでしょうか。

杉田:例えば、不眠症であれば、抗うつ薬や睡眠薬などが処方されると思いますが、活動量計のデータを見れば結果としてそれでしっかり寝られているかどうかということがわかります。また、臨床的には、何らかの症状があったときに「寝られないほど辛いか」というのは一つ大きな観点で、咳であっても、痒みや痛みであっても寝られないほど辛いとなると、治療法の変更を検討する大きな要因の一つになります。

ですので、例えば、気管支喘息やアトピー性皮膚炎、がんなどで何らか治療を受けている方々の睡眠パターンを見ていくことによって、治療によってしっかり症状が抑えられているのか、それとも抑えられていないのかを推測することができます。もしそれが抑えられていない方、夜何度も起きてしまっている方が一定数いたときに、製薬会社としては、医師への治療ガイドラインの啓発が必要なのか、患者側がしっかり辛さを伝えられていないのが問題なのか、もしくはさらに症状を抑えられるような薬剤の開発のポテンシャルはないのか、など様々なことが検討できます。

実際に臨床でがんの末期の患者さんを診察していて、がんによる疼痛であまり寝られていなかったとしても患者さんご本人は麻薬に頼るのが嫌だったり量を増やすのが嫌だったりで、痛みはぜんぜんないです、とおっしゃる場合も度々あります。そういった主観的な症状が客観的にみえる化できると、患者さんと治療方針の相談がよりしやすくなるなと思っています。

―それでは最後の罹患リスクの予測とはどういったものでしょうか。

杉田:こちらは具体的にJMDC社内でチャレンジした研究を取り上げたいと思います。

Fitbitのバイタルデータを用いた研究

実際に何をしたかというと、上記イメージに書いてあるように、Fitbitデータと健康診断の結果から、将来の精神疾患の発症を予測するモデルを組み立ててみました。その結果非常に興味深いことがわかり、精神疾患患者において、不眠や早期覚醒など睡眠の異常が出ることはよく知られていると思いますが、診断前にも睡眠の質の低下が一定数起きていることがわかりました。さらに具体的にいうと、疾患を発症した方では、覚醒してから朝布団の中でゴロゴロしている時間が長くなったり、昼間など不規則な時間の睡眠が増えたりしていて、そういうものが先行指標となる可能性があることがわかりました。

こういったモデルをベースに患者にどう介入するか、という論点はもちろん残っていますが、将来的に非常に面白い研究であると思いますし、精神疾患だけでなく、もしかすると狭心症などのイベントや、片頭痛などの発作においても活動量データによる予測が役立つ可能性もあるなと思います。

―ありがとうございます。活動量計データとレセプトを掛け合わせることで、これまでできなかったことが色々とできるようになるということがわかりました。それでは最後に一言いかがでしょうか。

杉田:リアルワールドデータはレセプトや活動量計のデータ以外にもたくさんあります。薬剤や病名との連携ができるという意味でレセプトデータを活用することは必須かと思いますが、そこに他のデータソースを掛け合わせることでどんどん価値が大きくなっていくと思っています。

JMDCとしてはこれからも様々な新しいデータにチャレンジをして、そこから生み出せる新しい価値を検討していきたいと思っておりますので、「こんなデータはないのか?」とか、「こういう数字が欲しいんだけど試算できないか?」などございましたら、遠慮なくご連絡いただければと思います。JMDCはレセプトデータを提供するだけの会社ではなく、より会社のミッションを実現できるように、広い意味でリアルワールドデータによって患者さんや企業をサポートできる会社に進化していきたいと思っています。

―ありがとうございます。それでは今回もこのあたりで終了とさせていただければと思います。次回もよろしくお願いいたします。

▷記事提供元はこちら(JMDC REAL WORLD)