Sponsored by ミーカンパニー株式会社

MDMD2022Springレポート/オープンデータで見る2022年度診療報酬改定

MDMD2022Springレポート/オープンデータで見る2022年度診療報酬改定

2022年5月に開催したオンラインカンファレンス「Medinew Digital Marketing Day(MDMD)2022 Spring」。セッション「オープンデータで見る2022年度診療報酬改定」では、ミーカンパニー株式会社の中村澪奈氏が講演しました。オープンデータを重ねて地域医療を読み解く方法について、具体例を交えて解説した内容をまとめます。

製薬企業は、なぜ診療報酬改定に注目すべきか

医療政策の大筋は中央機関で決められますが、具体的な計画は地域単位で行われます。これは日本全体では人口減少・少子高齢化が進んでいるといっても、地域ごとに人口動態は異なるためです。各地域に求められる医療の質と量に応じ、医療機関の役割が分化します。さらに各医療施設の機能を整えるだけでなく、治療段階に応じて医療機関の間をシームレスに患者が動ける制度や仕組みなどの整備も重要です。

製薬企業が診療報酬改定に注目すべき理由として、「日本の医療の課題がどこにあり、今後どのように変えていこうとしているかを診療報酬改定から考察することができる」と中村氏は話します。

数年~十数年先を予測し制度が整えられ、それに合わせ医療機関が動く。診療報酬改定を読み解くことは、製薬企業にとって医療機関の動きを敏感にキャッチし、自社製品の情報をどの医療機関が今後必要としてくるか、という把握に役立ちます。

医療機関の動向把握にオープンデータが有用な理由

ミーカンパニーが取り扱うオープンデータは、自治体や医療機関が公開している情報、公的機関に開示請求を行い得た情報などを集めたものです。これらのオープンデータが、医療機関の動きをキャッチする手段として、なぜ有用なのでしょうか。

オープンデータの強みは、「施設単位の情報・重ねて・経年推移・先行指標」を見られることです。

オープンデータでできること
2022.05.26 ミーカンパニー(株)「オープンデータで見る2022年度診療報酬改定 」資料より抜粋

「政策の流れを踏まえた上で、オープンデータの強みを生かし分析しながら、地域の中での施設の診療戦略や役割を知っていく。このように、オープンデータを医療機関のターゲティングやコミュニケーションに活用していけるのではないでしょうか」と中村氏は話します。

オープンデータ活用事例:最新の医療機関の動きを追う

中村氏は、診療報酬改定を見るためのオープンデータの活用方法を、ミーカンパニーの「SCUELデータサービス」を用い、具体例を示しながら解説しました。

一つ目は「最新の変化と動きを追う」という観点での、診療報酬改定を見るためのオープンデータの活用です。2022年度診療報酬改定では、新設された施設基準は医療機関用だけでも約90あり、さらに要件が変更になった項目を含めると、改定箇所は膨大な数になります。診療報酬改定に応じて、各医療機関は体制を整え届出を提出します。製薬企業は、届出をもとにしたオープンデータから早々に体制を整えている医療機関を把握でき、その領域に関心の高い施設を推測できます。

診療報酬改定項目をいくつか取り上げ、オープンデータ活用の具体例を紹介します。

オンライン診療への動きからICT化に柔軟な医療機関を見つける

医療現場で加速しているICT(Information and Communication Technology)に前向きな姿勢を示す医療機関かどうかを把握するためには、例えばオンライン診療に関するオープンデータが活用できます。

2022年度の診療報酬改定では、初診からのオンライン診療が可能となりました。中村氏がSCUELを用い、5月時点ですでにオンライン診療の届出を出している医療機関を示しました。

情報通信機器を用いた診療
2022.05.26 ミーカンパニー(株)「オープンデータで見る2022年度診療報酬改定 」資料より抜粋

これらの施設ではオンライン診療が可能であるという事実と共に、オンライン診療に対する体制(初診での本人確認や保険証確認、医療費の決済手段など)や、オンライン診療により対面診療が必要となった場合の体制などが整えられていると考えられます。つまり、これらの施設は、ITに強みを持っている、もしくはICT導入に抵抗が少ない医療機関といえるのではないでしょうか。

地域連携の動きから精神領域に興味がある一般診療医療機関を見つける

今回の診療報酬改定では、自殺という社会問題に対応するため、精神科領域における地域連携が手厚くなりました。一般診療の医療機関がこころの病に関心を持っているかどうかを把握するには、こころの連携指導料の届出情報が役立ちます。中医協総会のデータによると、2020年の自殺者数は前年より約4.5%増え、21,081人でした。自殺が増加している社会背景を踏まえ、診療報酬改定では自殺対策が盛り込まれ、こころの連携指導料ⅠとⅡが改定されました。

精神疾患における地域連携
2022.05.26 ミーカンパニー(株)「オープンデータで見る2022年度診療報酬改定 」資料より抜粋

こころの連携指導料Ⅰ(以下、こ連指Ⅰ)は、紹介元となるかかりつけ医などの医療機関が算定対象、こころの連携指導料Ⅱ(以下、こ連指Ⅱ)は、専門医療機関が算定対象です。

こ連指Ⅰを届け出ている施設は、精神疾患領域に関心が高い医療機関であると考えられます。SCUELデータベースを活用すれば、届出済施設を簡単に調べることができます。

専門医療機関にオープンデータを重ね、具体的な診療患者対象を深掘る

こ連指Ⅱを届け出ている専門医療機関に関しては、オープンデータを重ねて見ることで、さらに情報を深掘りできます。

下図は、こ連指Ⅱを届出済の医療機関に、その他の施設基準、すなわち厚生局に届け出ている診療内容を重ねて見ています。認知療法・認知行動療法や抗精神病特定薬剤指導管理料、依存症入院管理加算など厚生局に届け出ている内容から、精神科領域の中でもどのような患者を受け入れているか判断することができます。

精神疾患における医療機関の届出データ
2022.05.26 ミーカンパニー(株)「オープンデータで見る2022年度診療報酬改定 」資料より抜粋

厚生局に届け出ている診療内容を見てみると同じこ連指Ⅱを届け出ている施設でも、認知症やアルコール依存症、統合失調症の診療を行っているところ、認知行動療法を行っているところなどさまざまです。オープンデータを重ねて見ることで、各施設が注力する診療内容を知ることができます。

オープンデータ活用事例:疾患で見る地域医療の実態

SCUELデータベースでは、疾患を軸としたデータを用いて地域医療の実態も把握できます。セミナー内で中村氏は、糖尿病と腎不全の例を示しました。

疾患の人口推移から情報提供に注力すべき疾患を見つける

SCUELデータベースでは、人口動態や患者数の経年推移・将来の推測値を調べることができます。赤は減少・青は増加を示し、可視化できます(下図)。

エリア別将来需要の腎不全の例
2022.05.26 ミーカンパニー(株)「オープンデータで見る2022年度診療報酬改定 」資料より抜粋

千葉県松戸市を例に2020年から2040年の人口動態を見ると、今後20年間で人口は減るものの、糖尿病患者数と腎不全患者数は増えると予測されています。透析患者の原因疾患は、糖尿病性腎症が4割と最も多く、糖尿病患者の適切な治療によって腎不全患者数を減らすことができるかもしれません。

製薬企業や医療機器メーカーが糖尿病や腎不全の治療に力を入れている医療機関に情報提供を行うことで、将来の患者数増加を防ぐ手助けができるかもしれない、と考えられます。

糖尿病透析予防指導管理料から疾患治療に注力する施設を探す

糖尿病や腎不全の治療に力を入れている施設を探す一つの方法として、透析予防に注力している医療機関を、施設基準や算定実績を軸としたデータから絞り込みます。

この場合、糖尿病透析予防指導管理料を届出ている医療機関かどうか、が一つの指標となります。糖尿病透析予防指導管理料は2型糖尿病患者のうち早期の糖尿病性腎症の患者に対し、医師が糖尿病透析予防に関する指導を行った場合に算定できます。つまり、届出をしている医療機関は、比較的重症度が高い糖尿病患者に対応できる施設であるといえます。
糖尿病透析予防指導管理料の届出施設での患者数の推移を調べれば、今後さらに患者が増えると予想される医療機関も把握できます。

糖尿病透析予防指導を行う医療機関
2022.05.26 ミーカンパニー(株)「オープンデータで見る2022年度診療報酬改定 」資料より抜粋

オープンデータを重ねて、製薬企業が支援すべき医療機関を見つける

複数のオープンデータを重ねることで、新たに見えてくる指標もあります。
例えば、糖尿病透析予防指導管理料を届出ている医療機関のデータから、治療効果を測ることができます。対象医療機関の該当患者数のデータと、患者のヘモグロビンA1c数値の改善率のデータを重ねたグラフを示します(下図)。

糖尿病透析予防指導の患者数と改善率
2022.05.26 ミーカンパニー(株)「オープンデータで見る2022年度診療報酬改定 」資料より抜粋

各医療機関の数値を確認すると、患者数が増加している医療機関の中でも、改善率が維持できている施設や下がっている施設など、医療機関ごとに状況が異なることが分かります。患者数が増加しているにもかかわらず改善率が下がっている医療機関では、糖尿病透析予防指導を行う体制構築がうまくできていないなどの課題が潜んでいるのかもしれません。

製薬企業や医療機器メーカーにとっては、単に患者数が多い医療機関をターゲットとするだけでなく、どのように医療機関をサポートしていくかを考える意味でも興味深いデータといえるのではないでしょうか。

オープンデータによる分析で、どこでどのように医療が提供されているかという現状と、医療の需要と供給は今後どう変わっていくと予想されるかを押さえ、自社製品と地域特性に合わせたマーケティング戦略立案が可能になると考えられます。

オープンデータから医療機関・地域ごとの動向を知り最適な製薬マーケティングを

診療報酬など医療制度の変化を理解することは、日本の医療の課題がどこにあり、どのように変えようとしているか日本の医療動向を把握できます。さらにオープンデータから分析を行うことで、地域や医療機関単位での動向へとブレークダウンさせることができます。複数のオープンデータを重ねて活用すれば、経年推移も把握でき、各地域の流れのより詳細な理解へとつながります。

ミーカンパニーが提供するSCUELサービスでは、本セミナーで紹介したデータベースの提供だけでなく、自社に適したデータの組み合わせも提案します。「みなさまの営業活動効率化や医療機関向けのコミュニケーションにSCUELをご活用いただくことで、よりよい医療を患者さんへ届けるお手伝いができれば何よりです」と中村氏は締めくくりました。